【導入事例】株式会社TYOテクニカルランチ様 / ポストプロダクション / 東京都

Japan / Tokyo, Jul 2018

テレビCM制作、映像ポストプロダクション業務、映像撮影関連業務、CGI制作などを手掛ける株式会社TYOテクニカルランチ。このたび改装に伴ったMAスタジオの増設にあたり、スタジオモニターマネジメントシステム「MMP1」が2台導入されました。その機種選定理由や使用用途、そして使い勝手などについて株式会社TYOテクニカルランチ(PPC) 技術統括部 執行役員の大場将吾氏、MAミキサー 吉崎雅章氏にお話をうかがいました。

まずMAスタジオ増設の経緯について教えていただけますか。

まずMAスタジオ増設の経緯について教えていただけますか。

大場氏:

別棟にあったMAスタジオの移動に伴ってMAスタジオのフロアを改装することになり、それを機にスタジオを小型化して部屋数を増やすことにしました。その背景としては、弊社はこれまでほとんどの仕事がテレビコマーシャルでしたが、コマーシャルがテレビ媒体からウェブやサイネージに拡張しており、従来のように「大きなMAスタジオにクライアントや広告代理店の方々が集まる」という制作スタイル以外の需要の増加が挙げられます。そうした制作状況を踏まえ、スタジオの機能はそのまま維持しながら、部屋のサイズを小さくして、数を増やしました。

新しいMAスタジオはどのような機材構成になっているのでしょうか。

大場氏:

私たちは「基本的にデジタルでできるものはすべてデジタルでいく」という方針を持っています。このスタジオもメインのシステムはWindowsの上でSteinberg Nuendoが稼働しています。ナレーション録音に関しては、声のダイナミックレンジを考えるとアナログドメインで処理しなくてはならない部分がありますので、そのためにマイクプリアンプにPortico5012、コンプ/ リミッターにNeve 33609を用意してあります。

このMAスタジオにはミキシングコンソールは設置されていませんね。

このMAスタジオにはミキシングコンソールは設置されていませんね。

大場氏:

はい。Nuageの導入も検討しましたが「スタジオをできるだけ小さくする」という今回のコンセプトからすると、Nuageはスペース的に入りませんでした。それに若い世代はもはやミキシングコンソールのフェーダーをいじらない傾向もあるので、DAW用のフィジカルコントローラーを入れています。

2つのMAスタジオの間にアナウンスブースが挟まれているのがユニークですね。

大場氏:

アナブースはMAの人間にとって非常に重要なものですが、スタジオを使っている時間の中での実際のアナブース稼働率を考えてMAスタジオ2部屋でアナブースをシェアすることにしています。

2つのMAスタジオの間にアナウンスブースが挟まれているのがユニークですね。

MMP1の導入はどんな経緯だったのでしょうか。

大場氏:

以前のMAスタジオではアナログでカフを含めたワンオフのモニターコントローラーを製作してもらっていたので、それも検討しましたがコストがそこそこ高かったんです。

吉崎氏:

ですからコスト面から考えて他社のデジタルのモニターコントローラーを検討していました。もしMMP1が発売されなければ、おそらくそれを選んでいたと思います。

MMP1はどの時点で候補になったのでしょうか。

大場氏:

ヤマハのご担当からMMP1が出る、という話を伺い、まだ詳細はわかりませんでしたが、最低限必要な機能を持っているということで購入を即決しました(笑)

MMP1を選んだ理由を教えてください。

大場氏:

まずコスト面で他より有利でした。従来のワンオフ機器の半額ぐらいでした。それでいて我々が求めていたモニターコントローラーの機能を満たしていました。実際はそれ以上の機能があったのですが、それは導入を決めたときにはよくわかっていませんでした。

このスタジオで求められるモニターコントローラーの機能とはどんなものですか。

このスタジオで求められるモニターコントローラーの機能とはどんなものですか。

吉崎氏:

まずモニター出力側のセレクター機能とソース側のセレクター機能が必要です。あとはアナブースへの返し、さらにマシンルームのVTRに対するI/Oが必要になります。また、MMP1にはディレクターとアナブースとのコミュニケーション機能もありますが、今回はカフユニットを含め手持ちのアナログ機材で構成しています。これらは制御用のGPIも必要ですが、すべてMMP1だけでカバーできています。

ということは、MMP1の導入決定は、コスト面で有利だったことが大きかったのでしょうか。

ということは、MMP1の導入決定は、コスト面で有利だったことが大きかったのでしょうか。

大場氏:

はい。このスタジオでモニターへ出力しているのは、ブースが1つ、さらにメインスピーカー、あとは前と後ろのテレビなので、ブースを数えなければ、実際のモニター出力は3系統です。このように私たちが要求するモニターコントローラーの規模は大きいものではありません。ただ、その程度のものでも、メーター回線を含めアナログで全部作るとけっこうな金額になります。それを1台のMMP1でカバーできました。実はそれ以上に、MMP1でなければ使えなかったチャンネルストリップ機能やDanteによるデジタル伝送のメリットも大きかったです。

チャンネルストリップはどんな風に使われているのでしょうか。

チャンネルストリップはどんな風に使われているのでしょうか。

吉崎氏:

MMP1のチャンネルストリップをリアルタイムに操作できるということだったので、それならナレーション録り中にNuendoや他のDAWのモニターレベルをMMP1でいじれれば作業効率が向上すると考え、セッティングしました。

大場氏:

ナレーション録り時に私たちがしたかったのは、Nuendoのナレーショントラックの出力が立ち上がることと、他のDAWからの出力がステレオで立ち上がること、そしてNuendoのナレーション以外をまとめた出力が立ち上がり仮バランスをとりながらサミングすることです。それをMMP1で行っています。

吉崎氏:

今はアナブースの音声、Nuendoの出力、他のDAWの出力がそれぞれチャンネルストリップに立ち上がっていて、iPadに入れたアプリ(MMP1 Controller)で上げ下げできます。あとは、アナブースへの返しやNuendoから出力している仮のナレーション音声のミュートもiPadで操作できます。さらに、ここでEQをかけることもできます。これだけできると、チャンネルストリップのおかげで、ミキサー卓があるようなイメージで作業を進めることができます。

ナレーション録音時にモニターミックスを簡単に作成できるということですか。

ナレーション録音時にモニターミックスを簡単に作成できるということですか。

吉崎氏:

はい。ナレーション録音の時、ナレーターやディレクターが必要とするモニターバランスをとるためにNuendo内のSEやBGMといったDAW内の出力とアナブースの音声をそれぞれ上げ下げするとしたら、Nuendo内でグループチャンネルを組んでマスターを操作するか、Nuendoのトータル出力を下げるという話になります。でもMMP1があればチャンネルストリップ機能を使ってインライン型コンソールのモニターセクションのように、モニターミックス用のステムをフェーダーに立ち上げることができます。

MMP1のチャンネルストリップがなかったら、サブミキサーが必要だったと言うことですか。

大場氏:

モニター用にミキサーが欲しいと言う人は多いのですが、ではどんなミキサーをどう結線するの? というところまでいくと、ちょっとこのスタジオではナンセンスだという話になります。

吉崎氏:

今回のスタジオのサイズを考えると、おそらくミキサーの導入はないと思います。ですからその場合はNuendoでグループを作って作業していたと思います。ナレーション録りのための準備作業は今より一手間かかっていたでしょうね。

MMP1のDanteに関する機能はいかがでしょうか。

大場氏:

私たちのスタジオは基本的にデジタル段をAES/EBUで組んでいて、マシンルームにあるDAWとの接続のためにパッチ盤を経由して使っていました。でもMMP1のAES/EBUの16chだと、モニター、メーター周りを含めると場合によってはちょっと足りないかもしれない、という不安がありました。そこでマシンルームの行き帰りにDanteを使っています。Danteを採用してみたら、結局マシンルームのRsio64-Dに40chのAES/EBUのIOが持て、DAWやVTRなどはRsio64-DとMMP1それぞれのマトリクスを効果的に使用でき、結局パッチ盤はほとんど使わなくなってしまいました。

実際にDanteを導入してみて、いかがでしょうか。

吉崎氏:

Danteにした時点で世界が広がりました。ケーブル一本でこれだけのチャンネルのやり取りができる、ということは、こういうこともできる、さらにこんなこともできるという感じで、だんだんと便利さに気づいていったという印象です。

実際にDanteを導入してみて、いかがでしょうか。

大場氏:

引っ越しで閉めたスタジオでDM2000を使っていて、DM2000に差していたAES/EBUのI/Oカードがたくさんあったので、それならRSio64-Dにカードを挿してAES/EBUからDanteに変換すればいいのでは、ということになりました。実際、それによりスタジオとマシンルーム間の回線を大幅に減らすことができました。

最後にMMP1を使ってみての感想をお聞かせください。

最後にMMP1を使ってみての感想をお聞かせください。

吉崎氏:

このスタジオを作るときのポイントは、もともとの大きなMAスタジオにどこまで近づけるか、どのくらい同じように作業ができるか、でした。その点、MMP1のおかげもあって、今のところは以前の大きなスタジオと同じように、遜色なく仕事ができています。モニターセレクトに関しても、以前のアナログ機器と比べても足りない機能はありませんし、スムーズに移行できたので成功だったと思っています。

大場氏:

MMP1を導入したのは機能ありきではなく、単に「モニターセレクトが必要」という理由でしたので、ここまでMMP1を使いこなすつもりはありませんでした(笑)。いろんな機能があることは聞いていましたが、仕事の場面でそれらの機能を生かせるかは別の話ですよね。でも、MMP1は思っていたことは何でもできて、しかも実際に仕事に使えるので、結局とても便利に使っています。

本日はご多忙のところお時間をいただきありがとうございました。

本日はご多忙のところお時間をいただきありがとうございました。

株式会社TYOテクニカルランチ