【導入事例】デルタ音響株式会社様 / SRカンパニー / 神奈川
Japan/Kanagawa Oct.2019
1984年創業のデルタ音響株式会社は、音楽のライブ/コンサートを専門とする老舗のPAカンパニーです。
このたびRIVAGE PM7を導入し、今年の4月から8月にかけて行われたSEKAI NO OWARIの全国ツアー、『The Colors』のモニター卓としてフル活用されました。
そのツアーでモニターオペレーターを務めた同社所属のエンジニア 石田佳史氏に、RIVAGE PM7を導入した理由とその使用感についてお話を伺いました。
昨年末に満を持して導入したRIVAGE PM7
はじめに、デルタ音響様について簡単にご紹介いただけますか。
石田氏:
弊社が創業したのは1984年9月。現在のスタッフ数は約30名で、そのうち現場のオペレーターは約20名、手がけている仕事の9割以上は音楽のコンサートです。鶯谷の東京キネマ倶楽部や二子玉川のアレーナホールといった施設の音響管理も手がけています。
他のPAカンパニーと比較したデルタ音響様の特色というと?
石田氏:
どんな仕事にもフレキシブルに対応できる、機動性の高さは弊社の特徴なのではないかと思っています。
オペレーターの個性を尊重してくれるので、いろいろなタイプの人材が揃っているのではないかと思います。
デルタ音響様には昨年末、RIVAGE PM7を導入していただきました。導入まで、石田さんの目にRIVAGEという卓はどのように映っていましたか。
石田氏:
弊社ではヤマハの卓をたくさん使っていますが、操作性や機能、安定性に関しては、一番だと思っているんです。瞬間的な操作を求められる場面でも、ヤマハの卓ならば迷わず直感的にオペレーションできる。
安定性に関して、最近は外国産の卓でもいきなりフリーズしてしまうようなことは無くなっているんですが、長いツアーのことを考えるとヤマハの卓が一番安心できる。去年回った野外ツアーなんて、40℃近い日もあれば、台風でもの凄い大雨の日もありましたからね。
万が一何かトラブルが起こった場合でも、ヤマハのサポートはしっかり対応してくれますから。
数年前RIVAGE PM10が発表になったとき、何よりも気になったのはその音質でした。操作性や機能、安定性に関してはまったく問題ないことは分かっていたので、新しいフラッグシップ卓でどれほどの音質を実現しているのかなと。これは絶対に使ってみたいなと思いましたね。
このタイミングで導入するに至ったのは?
石田氏:
CLシリーズやQLシリーズにはとても満足しているんですが、大きな現場のFOHやモニターで使えるヤマハの卓が欲しいとずっと思っていたんです。それは私だけでなく、社内でもそういう声が多かった。
年明けにSEKAI NO OWARIの大規模なツアーも控えていたので、そろそろ導入してもいいんじゃないかと。
私はかれこれ6年くらいSEKAI NO OWARIのモニターを担当しているんですが、もの凄くチャンネル数を必要とするバンドなんです。4人のメンバーに加えてドラムとベースがいて、なおかつシーケンスも回っていますし、アトラクションが多いバンドなので、あっという間に100ch近く必要になってしまう。
去年のツアーではCL5にDanteカードを装着して、スロットインにステレオフェーダーを立ち上げ、無理やり80chくらい使用したんですが、今回のツアーはステージの数も多いですし、もっと効率の良いシステムで回りたいなと。そのこともRIVAGE導入の大きな理由でしたね。
DSPエンジンを内蔵したRIVAGE PM7を選定されたのはなぜですか。
石田氏:
単純に一番新しいモデルで、DSPエンジン内蔵型の方がフレキシブルに使えるのではないかと思ったからです。ほとんど迷わずに決めた感じですね。
デルタ音響様で導入されたRIVAGE PM7のシステム構成をおしえてください。
石田氏:
コンソールはCSD-R7で、一緒にアナログ64ch入出力のRPio622を導入しました。
弊社ではRioをたくさん持っているので、I/Oラックを新規で導入する必要はないんじゃないかという話もあったんですが、どうせRIVAGE PM7を導入するのであればRPioも入れた方がいいのではないかと。
CSD-R7に装着してあるカードは、TWINLANe用のHY256-TLとDante用のHY144-Dだけです。
今回のSEKAI NO OWARIのツアーではどのようなシステムで使用していますか?
石田氏:
I/Oラックは計3台使用していて、ドラムとベースが演奏する下手のステージ袖にRio3224-D2、メンバー4人が演奏するセンターステージにRio3224-D、そしてCSD-R7の脇にRPio622を設置しています。
メンバーに加えてドラム、ベース、クワイアが4人いて、VTRなどFOHからの送りやその他エフェクトのリターンを入れるとインプットは120chフルで使用しています。
こういった大規模なツアーでRIVAGE PM7が素晴らしいのは、RPioだけでなく手持ちのRioが使用できる点です。今回のようなステージがたくさんある現場ですと、すべてRPioを用意するというのはコスト的に難しい。しかしCLシリーズを持っている会社であればRioがあるわけですから、それを使い回せるというのは大きな魅力ですよね。
メインステージではRio3224-D2、センターステージではRio3224-Dが使用されていた。
SEKAI NO OWARIの大規模ツアーでモニター卓として活躍
RIVAGE PM7と共に大規模なツアーを回られて、その使用感はいかがでしたか?
石田氏:
期待していた音質に関しては、CLシリーズやQLシリーズと方向性が違うので、最初は戸惑いました。
RIVAGEを導入したからには96kHz/32bitのフルスペックでやろうと思っていたんですが、リハーサルではじめて音を出した時には驚きましたよ(笑)。まるでDVDがBlu-rayになったかのような解像度の高さで、すべてがくっきり見えてしまうんです。
音の分離も良く、いくら突っ込んでも各楽器の粒立ちがハッキリしている。なので最初は音が散らばっている感じがして、上手くまとまってくれなかったんです。ローミッドもCLシリーズと比べると少し薄い印象だったので、これは自分が今までやってきた音作りを一度フラットにして、ゼロベースで向き合わないとダメだなと思いました。
でもRIVAGE PM7の音に慣れた今では、本当に素晴らしいサウンドだなとライブの度に感動しっぱなしです。
最初はRPio622のヘッドアンプやADコンバーターが優秀なのも要因の一つなのかなと思ったんですが、Rio3224-D2やRio3224-Dを組み合わせてもCLシリーズとの違いが如実に分かるので、RIVAGE PM7自体のサウンドが素晴らしいんだと思います。きっとサンプリングレートが96kHzというのも大きいんでしょうね。
操作性に関してはどうですか?
石田氏:
CLシリーズから何のストレスもなく移行できたので、さすがヤマハの卓だなと感心しています。
CLシリーズも使いやすい卓ですが、慣れるとRIVAGE PM7の方がいいですね。パラメーターをダイレクトに操作できるSelected Channelは使いやすいですし、左側に大型の液晶パネルが2面備わっているのもいい。
どんなオペレーションにも対応できる卓だなと日々感動しているところです。
RIVAGE PM7の大きな特徴であるSILKプロセッシングに関してはいかがですか。
石田氏:
よくかかるのはBLUEの方ですが、モニターオペレーター的にはREDの方が気に入っています。何か音を変えたいんだけれども、EQはちょっと違うなというときに重宝していますね。いい感じで質感を変えてくれるんです。BLUEも悪くはないんですが、ローに利いてしまうので、モニターではほとんど使いません。
SILKプロセッシングに関しては、ピンポイントで、本当に際立たせたい音だけに使うという感じですね。
特に気に入っている機能があればおしえてください。
石田氏:
どうしてもモニター目線になってしまうんですが、モニター出力にエフェクトをインサートできるのが最高です。モニター出力に8chのパラメトリックEQをインサートできるので、完全にチューニングされた状態でアウトCUEを聴いているイヤフォンでそのままインプットCUEを確認できるようになった。これはモニターオペレーター的にはとても大きいですね。
それとシーンメモリーとリコール/リコールセーフ。SEKAI NO OWARIのようにチャンネル数が膨大なバンドでは、シーンメモリーは不可欠な機能で、1曲の中で複数のシーンを切り替えているんです。曲中でほんの数十秒だけ登場する楽器なんかは、出てくるときだけ上げればいいわけですからね。
その点RIVAGE PM7では、イベントリストを使用することで、そういった上げ下げをオートメーションできる。一瞬だけ登場する楽器のボリュームコントロールはオートメーションさせて、私はボーカルなどの集中すべき音に集中することができるんです。
また、ミックスごとにリコールセーフが使えるというのもいいですね。
他にはチャンネルにエフェクトを8つまでインサートできるのも便利です。これによってセンターステージだけで使いたいEQとか、シーンに合わせてエフェクトをセレクトできるようになった。チャンネルによってインサートポイントも変えられるので、これまで以上に柔軟にミックスできるようになったと思います。
総じてRIVAGE PM7には満足されていますか。
石田氏:
凄く満足しています。とにかく直感的に操作できるので、スピードが命のモニター卓としては安心して使うことができますね。
RIVAGE PM7は比較的高級な卓なので、FOH用というイメージがあると思うんですが、モニターでもこういう質の高い卓を使うことによって、アーティストやプレーヤーのパフォーマンスが良くなるんじゃないかと思っています。
PM5DのようにRIVAGEもモニター卓のスタンダードになってくれたらいいですね。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。
デルタ音響株式会社
http://www.delta-sound.jp/