【導入事例】京都産業会館ホール様 / 京都
Japan/Kyoto Sep.2019
きものの一大集散地、京都室町。2019年3月、その京都室町問屋街の象徴的な拠点であった京都産業会館の跡地にグランドオープンした「京都経済センター」。
このたび、その京都経済センター2階の「京都産業会館ホール」に、ヤマハのシグナルプロセッサー「MRX7-D」、マトリクスプロセッサー「MTX5-D」、パワーアンプリファイアー「XMV8140-D」、スピーカーシステム「IF2108W」、デジタルコントロールパネル「DCP4V4S-US」、「DCP4S-US」などが採用されました。
音響システムの設計や機種選定の理由、使い勝手などについて、一般社団法人 京都産業会館 企画課長 松島景司氏、株式会社タケナカ 京都営業所長 福永哲也氏、株式会社ソルサウンドサービス 取締役 高田文尋氏にお話をうかがいました。
最大1318平米の大きなスペースを様々に分割統合して使用できるホール
「京都産業会館ホール」とはどんなホールなのかご紹介いただけますでしょうか。
松島氏:
かつての京都産業会館ビルにあったホールは、主に着物を広げたり帯を広げたりする呉服の見本市の会場として建設されていました。当時のホールは面積としては大きなフロアではありましたが、2つのフロアに別れていたことや、室内に太い柱が何本もあったため、レイアウトに制限が生じ、利用者拡大にたいへん苦労した経験から、新しいホールは柱のない広いスペースとしました。
新しい京都産業会館ホールは最大1318平米の広さがあります。これを南室・中室・北室と3つに分割・組み合わせが可能で、用途に応じてフレキシブルに使えるようになっています。
北室は445平米で可動式の客席と大型スクリーンを完備しています。座席固定で238席、補助椅子が68席、あわせて306名が収容可能となっています。そして中室が378平米、南室が450平米となっています。
分割・統合はシグナルプロセッサーMRX7-Dで制御し、
各室の音響はマトリクスプロセッサーMTX5-Dで調整
音響面を担当された高田さんにおうかがいします。京都産業会館ホールの分割パターンとしては、どのような種類があるのでしょうか。
高田氏:
部屋の利用パターンは「全室統合」「各室個別」「中室+北室」「中室+南室」の組み合わせがあります。さらに音響面に関しては、各室ごとに天井に埋め込んだシーリングスピーカーを使う場合と、天井からの吊りスピーカーを使う場合を分けています。シーリングスピーカーは展示会などのBGMやアナウンスで使い、部屋全体にまんべんなく音を再生します。一方発表者や司会者、登壇者がいる場合、あるいはスクリーンを使用する場合は、音に方向性があったほうがよいので天吊りスピーカーを使用します。
シーリングスピーカーはVXC6を採用していて、これは1室に14~17基、ホワイエも含めると合計59基あります。吊り下げスピーカーは合計11基で、IF2108Wを採用しています。
かなり複雑な設定ですね。これらの切り替えはどう制御するのでしょうか。
高田氏:
音声信号伝送の基幹部分は全てDanteによるデジタルオーディオネットワークを採用しています。各室の音声はそれぞれのマトリックスミキサーMTX5-Dでミキシングし、Dante経由ですべての出力をシグナルプロセッサーMRX7-Dに集約、使用パターンに応じて各室のパワーアンプリファイアーXMV8140-Dなどに再分配、増幅してスピーカーに送ります。
部屋の分割・統合のパターンはMRX7-Dにプリセットしてあり、スタッフが専用スイッチを押すだけで切り替えられるようにしています。マイクなど入力個別の音量調整もヤマハの専用のデジタルコントロールパネル「DCP4S-US」「DCP4V4S-US」で簡単に操作できるようにしています。
ヤマハならスピーカー、アンプ、プロセッサー、コントローラーまで1社でカバーできる
機材の選定やプランニングについては、主にホールの音響・映像・照明の基本設計に携わった株式会社タケナカの福永さんが担当されたそうですが、ヤマハの機器を選定いただいた理由を教えていただけますか。
福永氏:
ヤマハを選んだ最大の理由はスピーカーから、パワーアンプ、マトリクスプロセッサーまで含めて全部ひとつのメーカーで揃えることができるからです。
今回全面的に採用したDanteのようなデジタルオーディオネットワークを使った場合、安定的に運用するために重要なのがバージョンによる互換性や動作確認などです。1社であれば互換性の対応やサポート面でも安心できます。
もうひとつの理由は、ヤマハの実績です。今まで私は同様のケースで2カ所ほどヤマハを導入しましたが、いずれもノートラブルで運用できています。その安心感も大きいですね。
高田氏:
さらにもうひとつヤマハを選んだ理由があって、それは多数のマイクを使用する際に便利なDan Duganオートマチックミキサー機能が使えることです。
Dan Duganオートマチックミキサーはヤマハのデジタルミキサーやプロセッサーに入っているプログラムですが、会議やシンポジウムのように複数の話者がいる場合、多くのマイクを同時に使用してもハウリングを起こさないよう、随時自動的にゲインを分配できます。オペレーターなしでこのレベルのことができるのは、すごいと思います。
目指したのは、エアコンの操作のように、誰にでも扱える簡便さ
実際の使い勝手はいかがでしょうか。
松島氏:
非常に楽ですね。私たちは部屋の分割・統合のパターンを切り替えるぐらいで、あとはお客さまに操作してもらっていますが、スイッチを入れてワイヤレスマイクをお客さまにお渡しすれば、すぐに使える状態になるので、問題なく運用できています。
お客さまが自分で操作されるんですね。
松島氏:
もともとこのホールを作る時に目指したのは、できるだけエンジニアの方の力を借りずに、お客さまが自分で操作できるシステムにしたい、ということでした。
たとえばホテルに泊まった時、手軽にエアコンの操作ができますよね。あの感覚です。それくらい直感的に操作できるシステムを、福永さんや高田さんに何度も相談して考えてもらいました。
無理を言ったと思いますが、その結果、とても扱いやすいシステムになったと思っています。
ヤマハの機材によって、お客さまが何も気にせずに簡単に使える、でも実はすごく複雑なことが行われている、というのが、京都産業会館ホールのシステムのポイントですね。
本日は、ご多忙の中ありがとうございました。
京都経済センター
https://kyoto-kc.jp
京都産業会館ホール
http://www.ksk.or.jp
株式会社タケナカ
http://www.takenaka-co.co.jp/
株式会社ソルサウンドサービス
http://www.sol-sound.co.jp/