【導入事例】デジタルガレージ Dragon Gate 様 / カンファレンスホール / 東京
Japan/Tokyo Sep.2020
大規模な建て直しを終え2019年11月にリニューアルオープンした渋谷カルチャーの代名詞的存在「渋谷PARCO」。そのオフィスフロアの15~18階に入居しているのが、日本を代表するIT企業、株式会社デジタルガレージをはじめとするデジタルガレージグループです。オフィスフロアの最上階18階に多目的に使用できるカンファレンスホール「Dragon Gate」が設けられました。
このたびDragon Gateの音響システムとしてヤマハラインアレイスピーカー「VXLシリーズ」、および「VXLシリーズPモデル」、デジタルミキシングコンソール「QL5」、シグナルプロセッサー「MRX7-D」などが導入されました。その導入の経緯について、音響設計に携わった株式会社ブリッジリンク 取締役執行役員 技術責任者 上田 道崇氏、そしてタックシステム株式会社 営業1課マネージャー柳澤 望氏にお話をうかがいました。
PARCOの最上階に設けられた新しい形態のカンファレンスホール「Dragon Gate」
まずカンファレンスホール「Dragon Gate」について教えていただけますか。
上田氏:
「Dragon Gate」は最上階である18階のフロア全体を使ったカンファレンスホールです。さまざまな用途で使用されることを想定した多目的なホールで、スペースは4分割でき、自由に分割・統合して柔軟に使えるようになっています。窓側に4面ある大型のLEDパネルはスライド式で、分割のパターンにあわせて自由に移動できます。
具体的にはどんな分割パターンがあるのでしょうか。
上田氏:
4つのブロックをすべて開放したり、すべて区切ったり、さらに2分割、3分割など自由に分割・統合が行えます。
そうするとスペースの使い方に対応して音響的にもそれらの分割・統合に対応しなくてはいけないわけですね。
上田氏:
そうなんです。それでタックシステム株式会社の柳澤さんに相談して音響システムを構築していきました。
柳澤氏:
以前からデジタルガレージのイベントなどに携わっているブリッジリンクの上田さんからお声がけいただいたわけですが、ホールの企画が立ちあがった当初は用途や規模だけでなく、場所もまだ具体的ではありませんでした。何度もミーティングを重ねていくうちに、場所も決まって、用途としても役員会議もやりたい、講演やレクチャーもやりたい、イベントもやりたい、カフェもやりたい、機材持ち込みでライブもやるかもしれない、などと多様なニーズが出てきて、これはよくある多目的ホールでは収まらないということが分かってきました。
Dante/PoE給電対応のラインアレイスピーカー「VXL1B-16P」を36台、パッシブモデルの「VXL1B-24」を12台導入
Dragon Gateでは、合計48台のVXLシリーズを使っていただきましたが、実際に設置・使用してみての感想はいかがでしょうか。
柳澤氏:
まず設置ですが、PoEに対応した「VXL1B-16P」は、EthernetのLANケーブル1本で電源も供給できるので施工は本当に楽でした。LANケーブルは天井に設置されているヤマハのPoEスイッチである「SWR2311P-10G」につなぎます。「VXL1B-16P」を36台設置したので施工時間の短縮効果は非常に大きかったですね。
ただ導入前に音質の心配はあったので、ヤマハさんに「VXL1B-16P」を8台借りて大きな倉庫で鳴らしてみたんです。そうしたら思ったよりずっと音量もあり、意外に低音も出て、スピーチやBGM用であれば全く問題ありませんでした。
Dragon Gateの天井は黒いスケルトン仕様なので、黒いバー状のVXLシリーズは、ほとんど存在がわからないのではないでしょうか。
柳澤氏:
はい。実に目立たない(笑)。どこから音がしているかたぶんわからないと思います。デザインの方向性として、あえてスピーカーを見せていく方向もあると思いますが、Dragon Gateのテイストとしてスピーカーが見えないのに、音はすごくいい、という音響システムのほうがスタイリッシュだと思って提案しました。
パッシブモデルの「VXL1B-24」はどんな理由で採用されたのでしょうか。
柳澤氏:
「VXL1B-24」はLEDディスプレイがある窓際に縦向きで合計12台設置してあります。ここはそれぞれのスペースの「正面」になるので、「VXL1B-16P」よりパワーが出せるものを導入しました。アンプは「XMV8280-D」と「XMV4280-D」を使っています。
上田氏:
あとは音量の均一性もラインアレイならではだと思います。どこにでも均等に音圧があって、しかもセパレーションもしっかりしているので他のゾーンでは音が聴こえにくい。ですからVXLシリーズはDragon Gateには最適な選択だったと思います。
柳澤氏:
実際に稼動して実感しましたが、セパレーションはほんとうに良いですね。ゾーニングすると隣のブースの音がほとんど気になりません。これはポイントソースのスピーカーではちょっとあり得ないです。
具体的にはどのようにして音響システムを構築していったのですか。
柳澤氏:
スペースの分割・統合に関しても、ガッチリしたパーティションで仕切るのではなく、カーテンのような簡易的なパーティションでも音がセパレートできるようにしたいという要望がありました。そうなると、点音源のスピーカーから音をドンと出すのではなく、状況に応じて制御していくことが必要だろうなと考えました。
そんな前提で各社のスピーカーを検討しましたが、VXLシリーズは小型のラインアレイということで、条件にピッタリでした。しかも「VXL1B-16P」はDante/PoE給電対応のパワードスピーカーですからEthernetケーブル1本で接続できて、電源の引き回しも不要ですし、駆動するためのアンプの設置場所がいりません。36台のスピーカーを駆動するアンプがないのでスペース効率は非常に高くなります。
距離補正や音質調整にシグナルプロセッサー「MRX7-D」を、ミキシングコンソールには「QL5」を導入
シグナルプロセッサー「MRX7-D」はどのような用途でお使いでしょうか。
上田氏:
「MRX7-D」はすべてのスピーカーのEQや距離補正用のディレイを担っています。
柳澤氏:
Dragon Gateの音響としては天井のVXLから音が降ってくるイメージではなく、正面から音が聴こえるようしたい。スピーカーはすべて壁際の「VXL1B-24」を起点として距離補正をしています。「MRX7-D」はそのためのプロセッシングや、さらにハウリングキャンセラーなどの機能を使っています。
デジタルミキシングコンソールの「QL5」を導入したのはどんな理由ですか。
柳澤氏:
Dragon Gateでは多人数のイベントも行われますのでミキサーは必要だと判断しました。設置はフロアに仮設で置くのではなく常設する必要があり、設置場所の制限からなるべくコンパクトで高性能・高機能なものでなくてはなりませんでしたし、Danteでマトリクスを組む必要もあります。それらを総合的に検討した結果、「QL5」を選びました。
上田氏:
「QL5」は音響調整室にあるのですが、iPadからWi-Fiで「QL5」をリモート操作できる「QL StageMix」をよく使っています。音響調整室で操作するだけなく、実際に会場を回りながら音を聴いて操作できるのでとても便利です。
最後に、今後Dragon Gateでどんなことをやっていきたいと思いますか。
上田氏:
私たちはデジタルガレージさんの要望に応える側なので、こちらからなにか、ということはありませんが、弊社は以前からデジタルガレージさんとお仕事をさせていただいているので、「こんなことをやりたい」という急なオーダーに対して「大丈夫です」と言えるようにしておきたいと思っています。デジタルガレージさんはIT会社らしく、斬新な発想をされる会社なので、想定外の依頼もよくあります。その時に「できません」と言うのは悔しいんです。だからいろんな準備はしています。
それと最近ですとコロナ禍で、当初想定していなかったリモート会議の依頼が急激に増えています。リモートでの登壇者がいるようなカンファレンスは音声的には結構大変なのですが、そのあたりはシグナルプロセッサー「MRX7-D」の機能が使えて助かっています。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。
株式会社デジタルガレージ
https://www.garage.co.jp/ja/
株式会社ブリッジリンク
http://bridgelink.tv
タックシステム株式会社
https://www.tacsystem.com
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