【導入事例】心斎橋ミツヤ 様 / カフェレストラン/ 大阪

Japan/Osaka Jul.2020

大阪一の繁華街、ミナミの道頓堀川にかかる戎橋は、大阪を代表する観光スポットのひとつです。その戎橋のすぐ近くに位置する「心斎橋ミツヤ」は、大阪では知らぬ人のない創業77年の老舗レストラン。元祖あんみつ、伝説のミツヤライスなどのメニューが人気を博しており、お子様からお年寄りまで幅広い世代から愛されています。

ビルの建て替えに伴い2020年7月にリニューアルオープンした心斎橋ミツヤですが、リニューアルに際してヤマハの調音パネル「ACP-2」、シーリングスピーカー「VXC4」が導入されました。その導入の経緯などについて、株式会社 心斎橋ミツヤ 代表取締役社長 小儀俊光氏、そして内装を担当したグラチネ インテリアデザイン 楠 聡氏にお話をうかがいました。

(中央)株式会社 心斎橋ミツヤ 代表取締役社長 小儀俊光氏
(右)取締役部長 小儀洋二氏
(左)グラチネ インテリアデザイン 楠 聡氏

伝統を引き継ぎつつリニューアルした心斎橋ミツヤ本店

「心斎橋ミツヤ」について教えていただけますでしょうか。

小儀氏:
ミツヤはもともと明治30年に創業した「小儀凍氷店」という氷屋が原点で、私の父が、昭和18年に福島区に開店したのが甘党喫茶「ミツヤ」です。続いて昭和21年にミツヤの2号店が梅田新道に開店し、さらに翌昭和22年に3号店として開店したのが、心斎橋の喫茶・レストラン「ミツヤ」です。ですから心斎橋店は今年で開店して73年となります。「赤い灯、青い灯、道頓堀の〜」という歌にもありますが、昔からから道頓堀を散策する方々が待ち合わせする洒落たレストランとして、多くの方にご愛顧いただいてまいりました。

株式会社 心斎橋ミツヤ 代表取締役社長 小儀俊光氏

このたびは、心斎橋ミツヤ本店が新築リニューアルされましたが、どのようなコンセプトでリニューアルされたのでしょうか。

小儀氏:
心斎橋ミツヤ本店は約37年前に一度リニューアルしましたが、みなさまのお陰をもちまして、このたび新ビルに建替えを行いました。建て替えは2020年3月末に完成し、その後内装工事を終え、この7月に新しい心斎橋ミツヤ本店喫茶レストランとしてリニューアルオープンいたしました。
70年以上前からあるレストランですから、若いお嬢さまたちにとってはお母さまの時代のデートスポットみたいなところはあるかもしれませんが。このたびのリニューアルでは、昔からのお客さまに懐かしんでいただける要素を残しながらも、今の若いカップルやファミリーの方々にも記憶に残るような、楽しい憩いの場所となるように、と考えました。

内装を担当されたインテリアデザイナーの楠さんにおうかがいします。リニューアルに際して目指したイメージはありますか。

楠氏:
私はヨーロッパにあるような、こじんまりしたホテル、たとえば大通りから一筋入った所にあるような小さなホテルをイメージしました。たとえば入り口から奥へと向かう細い部分はエントランスに行くまでの回廊、そして奥の拡がりを持った空間がエントランスホールという位置づけです。そして階段を上がった2階はホテルの客室、といったようなイメージの空間を目指しています。

グラチネ インテリアデザイン 楠 聡氏
入口壁面には道頓堀川の風景がペン画で描かれている。

小儀氏:
楠さんのおっしゃるとおりヨーロッパ的でもありますが、ある意味、 古き良き昭和の時代を思い起こさせるクラシックな雰囲気とも言えると思います。

心斎橋ミツヤ 1階中央ホール

真新しい店内ですが、たしかにどこかに懐かしさがあって、老舗の伝統が引き継がれているように感じます。

楠氏:
最近の店は作っては潰す「スクラップ・アンド・ビルド」、つまり古いモノはどんどん壊して新しい物を作っていくという手法が主流です。でも心斎橋ミツヤは多くの方に愛された老舗のレストランですから、昔からある大切なものを捨てて新しく生まれ変わるのではなく、可能なかぎり伝統を継承していきたいという思いがありました。そこでこのリニューアルに際しては以前の店で使っていたステンドグラスや、木の柱を再利用したり、アプローチに使っていたタイルの残りが倉庫に眠っていたのを使ったりしています。

小儀氏:
入り口の人形も色を塗り直してすっかりきれいになりましたが、前のお店で使っていたものです。

店舗の入り口のブランコに乗った人形は心斎橋ミツヤ本店のシンボル。回転するしくみとなっている。

心斎橋ミツヤ本店は昔から通われているお客さんも多いでしょうから、前の店舗にあったステンドグラスなどが新店舗でも使われているのは嬉しいのではないでしょうか。

小儀氏:
そうですね。生まれ変わった新しさの中に、引き継がれてきた伝統の懐かしさもありますから、昔からのお客さまにも、新しいお客さまにもお喜びいただけると思います。

1階奥の大型のステンドグラスも旧店舗から引き継がれた

店内でのBGM再生用にシーリングスピーカーVXC4を36台導入

ヤマハのシーリングスピーカー「VXC4W」と調音パネル「ACP-2」を導入いただきました。ヤマハを選定していただいた理由はなんでしょうか。

小儀氏:
私どもミツヤとヤマハさんとの付き合いは古いんです。昭和27年の頃にクラシックブームというものがありまして、ミナミでも音楽喫茶に人気が集まりました。その時ミツヤ心斎橋本店でも音楽ファンに素晴らしい音を提供したいということで、ヤマハの大型のスピーカーを購入したんです。その時は店の中央にスピーカー用のステージを作り、レコード係を置いて、レコードを1日中かけていました。その後の37年前のリニューアルではホールの中央南西角に鉄骨の台を作り、その台の上にスピーカーを置いて音楽を流しました。

先代は音楽好きで、特にクラシックやルンバやブルースといった音楽が好きでした。大型スピーカーの後も、ヤマハのスタジオモニター「NS-10M」を天井に設置して使っていました。そのようなご縁もあり、音質面でも信頼していましたので、今回の改装にあたって店内のスピーカーはすべてヤマハのものを選びました。

(左)改装前の店内の様子。天井の右側の鉄骨の台上にヤマハ製のスピーカーが納められている
(右)昭和27年のクラシックブームの当時はヤマハのスピーカーをカスタマイズして使用していた

シーリングスピーカー「VXC4W」は何台使われているのでしょうか。選定理由は何でしょうか。

楠氏:
「VXC4W」は1階と2階で合わせて18ペア、36台使っています。選定の理由は、音質面が第一ですね。それからデザイン性です。色目が暖かくてここのインテリアによくあいまたし、目立ちすぎず上品なデザインなので、よくフィットしていると思います。

天井には1階と2階合わせて計36台のシーリングスピーカーVXC4Wが設置された(写真は2階ホール)

楽器演奏が楽しめる調音個室にヤマハ調音パネル「ACP-2」を18枚導入

ヤマハの調音パネル「ACP-2」を導入いただいたのはどういった用途なのでしょうか。

小儀氏:
2階フロアの奥に、食事ができて音楽も楽しめる「調音個室」を新たに設けました。ヤマハ電子ピアノ「クラビノーバ CLP-675」 を設置し、音楽が好きな方々に個室を予約してもらい、自由に演奏を楽しんでいただけるようにしようと考えております。ここは音質に配慮した、できるだけ響きのいい空間にしたいと思ってヤマハさんにご相談したところ、調音パネル「ACP-2」をご紹介いただきました。

楠氏:
調音個室は、階段室などの都合で部屋の形状がやや特殊なので、低音域がこもってモワっとする可能性がありました。調音パネル「ACP-2」は単に部屋の響きを整えるだけでなく余分な低音域も程よくカットしてくれるので、この空間における音質の改善効果は高いと思います。

2階調音個室の壁面には調音パネル「ACP-2」が装着されている
調音パネルはサランネットで隠蔽されている

調音パネルは何枚導入されたのでしょうか。また、個室の内装面で注意した点はありますか。

楠氏:
調音パネルは計で18枚使用しています。この部屋は形状に凹凸がある上に、演奏時にはドアを締め切ることを想定しているので、ある程度自然な音場を実現するために、調音個室のほぼすべての壁面に装着しました。
意匠的な問題としては、調音パネルを他の部屋の雰囲気とどう調和させるかが課題でした。調音パネルをそのまま露出で装着すると、他の席の壁面とは雰囲気が変わってしまいます。そこでオーディオのスピーカーなどでよく使用されるサランネットを調音パネルに被せることで、調音パネルの効果を生かしながら、他の空間との統一感を保つように工夫しました。

調音個室ではどんな演奏を想定しているのでしょうか。

小儀氏:
ピアノとバイオリンや、歌など、小編成の音楽がいいのではないでしょうか。スペース的に個室の収容人数は限られていますが、ご要望があれば2階の他の席でも演奏を聴くということも想定していますので、PAシステムの導入も検討しています。
心斎橋周辺には大きなホールはありますが、趣味で好きな人が集まって楽器が演奏できるような場所は意外に少ないのです。ですから同好の方が使いやすい大きさの部屋で、同時に飲食もして、ちょっと演奏できる場所、としてご利用いただきたいと思います。

音響面にかなり気を使われていることがよくわかりました。レストランにおいて音響は大切なものなのでしょうか。

楠氏:
レストランはただ食事をしていただくだけの場所ではないと思います。この心斎橋ミツヤに来たという価値観を、どこで表現するかというとこで、今回の改装で音響の良さというのを、一つの魅力として追求しました。

小儀氏:
先代も音響にはものすごく気を使っておりました。お客さまはわざわざミナミに出てきて、心斎橋ミツヤに入ってくださるわけです。そこでお食事と共に、いい音、いい音楽をご提供し、それがお客さまの思い出になれば嬉しいと思います。

本日はお忙しいところ有難うございました。

心斎橋ミツヤ
http://www.mitsuya.co.jp

製品情報
調音パネル ACP-2
スピーカーシステム VXC4