【導入事例】有限会社パブリックアドレス 様 / SRカンパニー / 東京

Japan/Tokyo Dec.2020

東京江東区新木場を拠点とする有限会社パブリックアドレスは2004年に設立されたPAカンパニー。

CLシリーズ、QLシリーズをはじめとしたヤマハ製のミキシングコンソールを多数使用している同社が、RIVAGE PMシリーズの最新モデルであるRIVAGE PM5を導入。同社にとって初のRIVAGE PMシリーズ導入となった経緯や理由について、取締役社長の武井一雄氏、サウンドエンジニアの茂野允氏、小林洋一郎氏にお話を伺いました。

有限会社パブリックアドレス サウンドエンジニア 茂野氏(左)、取締役社長 武井氏(右)

パブリックアドレスさんの沿革、御社ならではの特長・強みなどを教えてください。

武井氏:
科学的な見地・技術を重視したシステム構築、ワークフローの合理性を追求するSRカンパニーとして2004年に設立しました、当時はまだ珍しかったマルチチャンネルのデジタル伝送に着目し、ヤマハのデジタルコンソールM7CLとオーディオネットワーク伝送規格であるEtherSoundを用いたデジタル伝送システムをいち早くコンサートPAシステムに導入しました。その後、CLシリーズが登場する以前から、Dante規格を用いたオーディオネットワーク伝送にも早い段階で取り組みました。会社の設立当初から常に最先端の技術を取り入れ続け、マイクプリからスピーカーのパワーアンプまでを完全にデジタルで伝送するPAシステムを構築し続けています。

大会場のコンサートPAを得意とするイメージもありますよね。

武井氏:
会社を設立した頃は、日本においてラインアレイのシステムの需用が伸びた時期でもありました。そういったシステムをいち早く取り入れ、ノウハウを構築していったことが、私たちがのちに大規模なコンサートPAの現場を得意とする一因になったのだと思います。既成の音響機材を組み合わせながらも、オリジナルのアイディアを取り入れながら独自のシステムを構築することを心がけています。

Danteの採用もパブリックアドレスさんはいち早く取り組んでいました。

武井氏:
現在、Danteはオーディオネットワーク伝送のデファクト・スタンダードとして確固たる地位を築いています。Danteの登場以来、新たなオーディオネットワーク規格が登場していますが、Danteは業界の要求にしっかりと応えてくれていますので、その意味でも別の規格へ移行するという雰囲気は業界全体をみてもまだ少ないと思います。

パブリックアドレスさんがミキシングコンソールを選定するうえで重要視するのはどういった部分ですか?

武井氏:
私たちがコンソールを選ぶ時に重視するのは操作性の良さです。PA現場という限られた時間のなかで結果を出すには、短時間で適切な操作ができるかがもっとも重要です。あとは習得するために時間が掛からないコンソールであること。なぜなら現場によってエンジニアは初見のコンソールで仕事することも多々ありますから、習得に時間がかかるというのは、私たちにとっては時間の無駄であると思います。ですから、コンソールは機能性そのもの以上に、明快で合理的なユーザーインターフェース・デザインであることが、良いコンソールだと思っています。

操作性という意味では、ヤマハのデジタルコンソールはソフトウェアと操作子は各シリーズで統一されている印象もあります。

武井氏:
ヤマハはM7CLの登場時から当時としては先進的だったタッチパネルを用いたユーザーインターフェースを備えていました。ヤマハのデジタルコンソールは分かりやすくてロジカルなユーザーインターフェースを常に開発し続けていて、知識がなくても理論的に推測して操作できるのが特徴だと思いますね。ですから、ヤマハのデジタルコンソールには大きな信頼を置いています。合理的に操作できれば、エンジニアが求めるサウンドに短時間で辿りつける。つまり、操作性は音質にも関係していると考えています。それもあってヤマハさんのほとんどのデジタルコンソールは発売とほぼ同時に購入しています。

RIVAGE PMシリーズの選定理由を教えてください。

武井氏:
この数年間、我が社ではヤマハCL、QLシリーズの稼働率が高いというアドバンテージがありました。そのなかでCL、QLシリーズよりも高度なコンソール・システムであるRIVAGE PMシリーズは、私たちにとってCLシリーズをリプレイスする存在として注目していました。

では、RIVAGE PMシリーズのなかでもRIVAGE PM5を選定した理由について教えてください。

武井氏:
RIVAGE PM10とRIVAGE PM7はPM1DやPM5Dのユーザーの移行を想定しているように感じていました。その点、RIVAGE PMシリーズのなかでもRIVAGE PM5は、私たちが重視する操作性においてもっとも優れていると判断し、導入を決めました。デジタルコンソールの操作は、カーソルや操作子のツマミをひねって画面で目視するのではなく、表示されている画面を直接触ってコントロールするほうが合理的です。現時点ではスマートフォンなどのマルチタッチスクリーンのUIを取り入れた操作が理想的ですし、それと同様の操作子を3面分取り入れたコントロールサーフェスのCS-R5は、まさに私たちが“待ち望んだRIVAGE”でした。

パブリックアドレスさんが導入されたRIVAGE PM5のシステム構成を教えてください。

武井氏:
コントロールサーフェスがCS-R5、DSPエンジンがDSP-RX、I/OラックがRPio622です。RIVAGE PMシリーズに採用されているオーディオネットワークTWINLANeはリングトポロジー型になるのですが、既存のDanteネットワークとどのように併用していくのか検討しているところです。

導入後の感想をお伺いしたいのですが、まず操作面に関してはいかがですか?

茂野氏:
ツマミが少なく、画面ですべてをナビゲーションできるので、迷わずに操作できる印象がありました。CLシリーズを使っていたエンジニアなら、ある程度の操作の予想がつくというのも、このコンソールのポイントだと思います。これはスペックの話ですが、PA現場はこの5年でワイヤレスモニターの使用数が増え、より多くの入出力数が求められる現場が増えています。それによってはこれまで私たちが使用していたCLシリーズでは対応できない場合も出てきました。その意味でもRIVAGE PMシリーズの入出力数は今のニーズに応えた仕様になっていると思います。あとはRIVAGE PMシステムの拡張性の高さは今後、私達にとってもいろんな運用の仕方が考えられると思います。そのなかでもCL、QLシリーズと同時に導入したI/OラックRio3224-D2やRio1608-D2をRIVAGE PMシリーズにおいても流用できるのは、CL、QLシリーズどちらも所有している私達にとっては大きなメリットですね。

音質の面ではいかがですか?

武井氏:
先ほどお話ししたように、私達は操作性の良さが最終的に音質に結びつくと考えるので、単純に音質面だけでコンソールを評価することはありません。どんなデジタルコンソールでも正しく扱えば良いサウンドが得られますから。RIVAGE PM5もロジカルで使いやすい操作性を持ち合わせているので、良いサウンドが導けると期待しています。それに加えて内蔵されているさまざまなプラグインに関しては、今後もっと使い方を研究していきたいと思っています。

他にもRIVAGE PM5で気に入っている部分があれば教えてください。

武井氏:
コントロールサーフェスが軽量化されたのは嬉しいですね。それと奥行きを抑えた設計なので、操作するエンジニアの体格を選ばないというのはとても好感が持てます。それと、個人的には抵抗感が少なくてスムーズなフィーリングのフェーダーがとても気に入っています。

RIVAGE PM5をお使いいただいてのご要望があれば教えてください。

武井氏:
今後はRIVAGE PMシリーズのコンソールに展開されているプラグインなどを、コンソールだけでなく各種DAWのプラグインとしても適応してもらいたいですね。そうすることでコンソールを所有しないフリーランスのエンジニアさんも、さらに音作りを追求できるようになるので、可能性が広がると思います。

RIVAGE PMシリーズの機能のなかでも、今後の可能性を感じる部分はどんなところですか?

武井氏:
RIVAGE PMシリーズに搭載されたSILKプロセッシングは、ノンリニアなサウンドを容易に生み出してくれますが、そこに可能性があると期待しています。PAスピーカーシステム全般の進化で音の解像度が向上したおかげで、リニア/ノンリニアの違いが表現できるようになっています。それによって、トランスペアレントなだけではなく、ひずみ成分のニュアンスを含んだサウンドというのは今のPA現場のトレンドと言っても良いでしょう。録音スタジオで作られるようなサウンドがコンサートPAにも求められるようになった現在、SILKプロセッシングの需用は高まっていくと思っています。

本日はお忙しい中ありがとうございました。

有限会社パブリックアドレス
http://www.publicaddress.co.jp/

製品情報

デジタルミキシングシステム RIVAGE PM Series