【導入事例】base lab.名古屋テレビ塔店 様 / カフェ / 愛知

Japan/Aichi Apr.2021

名古屋のランドマーク、名古屋テレビ塔。2020年9月にリニューアルオープンした名古屋テレビ塔の3階に、コーヒーを味わいながら立体音響が体験できるサラウンドカフェ「base lab.名古屋テレビ塔店」がオープンしました。base lab.名古屋テレビ塔店にはヤマハのスピーカーシステム「VXS1ML」、サブウーファー「VXS3S」、パワーアンプ「PA2120」「PA2030a」が導入されました。

選定理由や使い勝手などについて、同店を経営するパスファインダー株式会社 代表取締役 有吉剛志氏、のコンセプトとサラウンド音源制作に携わった株式会社ニートネスト 石井和之氏、音響システムの構築に携わったオンズ株式会社 井上聡氏にお話しをうかがいました。

(中央)パスファインダー株式会社 代表取締役 有吉剛志氏
(右)株式会社ニートネスト 石井和之氏
(左)オンズ株式会社 井上聡氏

名古屋テレビ塔で、サラウンドが体験できるカフェを

最初にbase lab.名古屋テレビ塔店について教えていただけますか。

有吉氏:
base lab.名古屋テレビ塔店は高品質のコーヒーとテレビ塔からの開放感あふれる風景、そしてサラウンド音響をテーマとしたカフェです。名古屋のシンボルでもあるテレビ塔にありますから、これまでのカフェの固定観念を変えるようなインパクトのあるお店にしたいと思い、最高の音響空間を用意しました。

パスファインダー株式会社 代表取締役 有吉剛志氏

カフェのテーマが「音響空間」というのは面白いですね。

有吉氏:
当初はコーヒーと空間がテーマで、音響には重きを置いていなかったのですが、石井さんと出会って音響に興味を持ち、サラウンド音響をテーマにしたいと考えるようになりました。

石井氏:
私は映画やテレビドラマの音響プロデュースを仕事としているのですが、以前からいつかサラウンドカフェをやりたいと思っていたんです。ちょうどそこに音響に興味を持っている方が名古屋にいるということをお聞きして、有吉さんを紹介いただきました。カフェの計画は進んでいたのですが、音で付加価値をつけたいということでしたので、私からサラウンドはどうですか、と提案しました。

株式会社ニートネスト 石井和之氏

なぜ「カフェでサラウンド」なのですか。

石井氏:
サラウンドには興味を持っていて、できるだけ広めたいと思っているのですが、サラウンドって体験しないとわからないんですよね。それでカフェのような誰でも入れるスペースでサラウンドを多くの人に体験してもらいたい、という思いを持っていました。

有吉氏:
石井さんのスタジオを見せていただいて、スタジオのこだわりとか、空間へのこだわりとか、あとやっぱり石井さんのサラウンドカフェへの熱い想い、将来サラウンドカフェがやりたいんだとお話でき、自分事になったというか、名古屋テレビ塔のカフェでサラウンドをやってみたいと思うようになりました。店名も当初は違う名前だったんですけど、石井さんのスタジオ「base」からいただきました。

base lab.名古屋テレビ塔店からの眺望

base lab.の「ラボ」は「実験室」という意味ですか。

石井氏:
カフェでサラウンドを実験する、そしてそれを体験していただくという意味です。いずれはここでライブをやるといった実験もしてみたいと思っています。

小型スピーカー「VXS1ML」18台、サブウーファー「VXS3S」6台を天井に設置

base lab.名古屋テレビ塔店の音響システムについて教えてください。

井上氏:
カフェ、窓際のスペース、物販スペースの3つのゾーンを18台のスピーカーと6台のサブウーファーでカバーしています。これらは全てシーリングに設置しています。スピーカーにはコンパクトな「VXS1ML」を、サブウーファーには「VXS3S」を採用しました。18台のスピーカーからはそれぞれ個別にサラウンドミキシングされた音源が再生されています。

オンズ株式会社 井上聡氏

18台のスピーカーからそれぞれ違う音が再生されているのですか! 通常のBGMとはずいぶん違いますね。

井上氏:
全く違いますね。通常の店舗BGMであればお客さまがどこにいても同じように聴こえるようにスピーカーを設置することが大切です。音源も当然モノラルです。一方、base lab.名古屋テレビ塔店の音響は18チャンネルでサラウンドミキシングされていますし、音源としても48kHz / 24bitのハイレゾ音源という高品質なサウンドです。

スピーカーシステム「VXS1ML」、サブウーファー「VXS3S」を選定いただいた理由を教えてください。

井上氏:
「VXS1ML」「VXS3S」を選定した理由はサイズと施工性です。「サラウンドカフェ」というコンセプトから、いかにもスピーカーがたくさん吊ってあります、という設備ではなく、どこにスピーカーがあるのかわからないぐらいコンパクトなサイズ感が非常に面白いと思いました。ヤマハ様にご相談し、石井様と一緒にVXSシリーズの音を確認して十分いける判断した上、実際にどういう配置をするかを音響設計に落とし込んでいきました。

コンパクトなサイズと控えめなデザインでスピーカーの存在を感じさせない

サブウーファー「VXS3S」を6台も使っていただいたのは音量的な問題ですか。

井上氏:
サブウーファー「VXS3S」で中低域を補うと音質・音量ともにかなりしっかりしてくるので導入しました。通常は施設として適切な音量に設定していますが、イベントやライブでも使えるぐらいの音量を出すことができます。

石井さんは音質についてどう感じましたか。

石井氏:
良かったです。想像以上によく鳴ってくれました。ヤマハさんで試聴して、その時もいい音だと思いましたが、ここで18台取りつけて実際に鳴らしてみたら、試聴よりさらに良かった。正直言ってここまで鳴るとは思わなかったです。

施工性についてはどんな点をご評価いただいたのでしょうか。

井上氏:
通常のサイズと重量のスピーカーであれば、直接建築物の躯体にアンカーを打つ工法になりますが、そうなると工事音が出ますので、施工の時間が制限され、結果的に工期が長引いてコストが増えたり、躯体の構造上で吊りたい場所に吊れないという制限が出てきます。その点VXS1MLはライティングレールに設置できるので簡単に取りつけられますし、ライティングレールの取りつけ用に純正アダプターが用意されているのも良いです。アダプターがなければ作りますが、それには時間もコストもかかってしまいます。

レールマウントアダプター「RMA1MB」で天井に設置されたスピーカーシステム「VXS1MLW」
シーリング設置が可能なサブウーファー「VXS3SW」

井上氏:
サブウーファーについてはもともと天井に取りつけられる製品は少ないですが、「VXS3S」はサイズ・重量ともに天井取り付けが容易な製品です。それから「VXS1ML」「VXS3S」ともにホワイトモデルとブラックモデルがあるのも良かったです。ここではインテリアにあわせてカフェエリアではホワイト、物販エリアではブラックを使っています。もし色が合わなければこちらで塗るところでしたが、両方ともそのまま取りつけることができました。

物販エリアでは天井色に合わせてスピーカーシステムブラックモデルが採用された

アンプにヤマハのパワーアンプ「PA2030a」、「PA2120」を導入いただきました。選定理由はなんですか。

井上氏:
アンプに関しては保守性です。システムを構築する立場からすると、スピーカーとアンプといった関連性の高い製品はメーカーを揃えた方がトラブルが起きにくいです。またヤマハであれば、万一トラブルがあっても、国内メーカーで拠点も多いのですぐに対応できます。

「PA2030a」と「PA2120」が収納された音響ラック

オリジナルで制作された18チャンネルのサラウンド音源を再生

18チャンネルのサラウンド音源を再生しているということですが、音源はどうしているのですか。

石井氏:
サラウンド音源はオリジナルです、音楽に関しては、音楽家の野崎良太氏(Jazztronik)にご協力頂き、野崎氏が立ち上げた「Musilogue(ムジログ)」という音楽カルチャープロジェクトの音源を提供してもらっています。ジャズとアンビエント、さらに和のニュアンスが融合したMusilogueの音楽は、base lab.の元々あったコンセプト「和とコーヒー」と合致しました、そこにサラウンドの環境音などを組み合わせたものを、開店から閉店までの10時間ノンストップで鳴らす音源をオリジナル制作しています。

base lab.名古屋テレビ塔店では「Musilogue」のCDやアナログレコードが展示販売されている

音楽と潮騒の音やジェット機の飛ぶ音がミックスされた非常に面白いサウンドですね。

石井氏:
この音源には開店から閉店までのストーリー性を持たせています。まず10時に開店の合図があり、11時ぐらいになると海に潜ります。そして12時で音楽もアップテンポになって、お昼が終わる時にジェット機が通過します。午後からは森の音になって、そこから夕方に雨の音、そのうち雷も鳴ります。そして5時にチャイムを琴で鳴らして、夜は虫の音を鳴らして落ち着いた曲になって最後は波に戻ります。

心地良いサラウンドサウンドに包まれて、本当に自然の中にいるみたいです。

石井氏:
環境音に関しては録音された18トラックのアンビエント音は世の中にはありませんので、自分たちで海や山にレコーダーを持っていって18chのアンビエント用の音源をフィールドレコーディングして使っています。

base lab.名古屋テレビ塔店で、サラウンドを体験してほしい

お客さまからの反応はいかがですか。

有吉氏:
お店で雷の音を聴いて、本当に雷が鳴ったと思って驚かれるお客さんもいらっしゃいますし、Instagramなどを見ると、このカフェは、音がいい、居心地がいいといった感想を発信してくださるお客さまが増えていて嬉しく思います。今後もサラウンドの音響が体験できる場として、より多く方に遊びにきていただきたいと考えています。また場を提供する側の方には、サラウンドを使った空間の作り方の可能性も感じていただければと思います。

石井さん、今後base lab.名古屋テレビ塔店でどんなことをやりたいですか。

石井氏:
このカフェで、森の音の中で生演奏をするといったようなライブをやってみたいですね。都会にいながら森の中で生演奏を聴くのも面白い体験だと思います。また今後、base lab.名古屋テレビ塔店がサラウンドカフェのショーケースのような存在になって、こういうお店をやりたいという人が増えていけばいいなと思います。ここまで大きなスペースでなくても、小さなお店で5ch、6chぐらいでもサラウンドは十分表現できると思います。そんな風にサラウンドがもっと一般化するといいなと思っています。

このようなサラウンドを使ったカフェが増えると面白いですね。

井上氏:
私自身、大学院までずっとサラウンドの研究をして、いまでも追求している分野なので、サラウンドがより多くの人に身近になるといいなと思っています。ぜひbase lab.名古屋テレビ塔店で、クオリティの高いサラウンドを体験していただき、その楽しさ、そして空間における音の重要性を認識していただけたら、私たち音響の作り手としては非常に嬉しく思います。

本日はご多忙の中、ありがとうございました。

base lab.名古屋テレビ塔店
https://baselab.jp

株式会社ニートネスト: base by neatnest
http://neat-nest.net

オンズ株式会社
http://www.onzu.co.jp

製品情報

スピーカーシステム VXS1ML
サブウーファー VXS3S
パワーアンプリファイアー MA/PAシリーズ