【導入事例】有限会社カムストック 様 / SRカンパニー / 神奈川

Japan/Kanagawa Jan.2021

ミュージカルや舞台などの音響を得意とする有限会社カムストックに、このたびヤマハデジタルミキシングシステム「RIVAGE PM3」が導入されました。導入の経緯や選定理由などについて、有限会社カムストックの代表取締役 松山 典弘氏と中島 聡氏にお話をうかがいました。


2.5次元ミュージカルなど多数のワイヤレスマイクを使用する音響シーンで活躍

最初に貴社について教えていただけますか。

松山氏:
弊社は主に舞台を中心としたステージの音響に携わっています。主にミュージカル、最近では特に2.5次元ミュージカルを手掛けることが多いです。特徴としては多チャンネルのワイヤレスマイクを使う現場が結構多いですね。その他イベントなどにも携わっています。

有限会社カムストック 代表取締役 松山 典弘氏

ミュージカルでは、かなりの本数のマイクが使われるのでしょうか。

中島氏:
演目によりますが、先日の現場はピンマイクだけで36本のインプットチャンネルがありました。
マイクの話で言うと、ミュージカルでは既存のヘッドセットマイクだけでなく、普通のピンマイクを使って手作りでヘッドセットを作るということも行っています。ピアノ線のワイヤーで耳の形をとって作るんです。というのも2.5次元ミュージカルなどの場合ウィッグを被ることが多く、その都度作ったほうが頭にフィットさせられるので本番中にマイクがずれたりする事故が防げます。ですから毎回まず演者さんの頭のサイズ取りから始めるんですよ。

有限会社カムストック 中島 聡氏

貴社では今まではどんなミキサーを使われていたのですか。

松山氏:
「PM5D」からずっとヤマハのミキサーを使っています。

中島氏:
「CL5」、「QL5」、「QL1」、さらに遡ると「M7CL-48」なども使っていました。

ずっとヤマハのミキサーを使っていただいてきた理由はなんでしょうか。

松山氏:
まずヤマハの機材は壊れない。信頼度は世界一だと思うんですよね。

操作性に関してはどうですか。

中島氏:
正直に言うとずっとヤマハしか使っていないので、他のミキサーと比較したことはないのですが、まったく問題ないと思います。

ヤマハを使い続ける理由として、統一性があってすぐ使えるというのはありますか。

中島氏:
それはあります。「M7CL-48」、「CLシリーズ」、「QLシリーズ」と、かなり同じ感覚で使えました。「RIVAGE PM3」になってちょっと変わった部分があって、慣れるまで若干時間はかかりましたが、少し触っていれば違和感なく操作できるようになります。

「RIVAGE PM3」+「Rio3224-D2」の組み合わせはS/Nがよく、芝居の無音のシーンでもノイズが少ない

「RIVAGE PM3」を導入されたきっかけはなんでしょうか。

松山氏:
今回「RIVAGE PM3」が発売されたタイミングが現在所有している「CL5」の機材更新時期と合致したことが大きな要素だと思います。会社として常に新しい機材を取り入れていく事が業界へのある種のアピールでもあるとも考えていますので。

「RIVAGE PM3」を導入してみて良かったと思ったのはどんな点でしょうか。

松山氏:
まず思ったのは、やっぱり音は全然違うということです。96kHzで駆動できることもあり、やはりフラッグシップの「RIVAGE PMシリーズ」の音質はさすがだと思います。
また、組み合わせて使っているI/Oラックの「Rio3224-D2」はS/Nが良いですね。
コンサートとは違って、お芝居やミュージカルだと、静かなシーンがかなりあるんですね。その中でどれだけノイズを落とせるかがポイントで、無言の時に「シャー」っていうのは困るわけです。

中島氏:
私も全く同意見ですね。それと、現場で使ってみてベイと呼ばれる12本ずつのフェーダーが、任意のタイミングで個別にレイヤー切り替えできる機能がすごく便利でした。
あと「RIVAGE PM3」はインもアウトも豊富にあるので、以前なら急に回線出してくれと言われると「どこか削んなきゃ」って渋々やってたのが、今は全然平気です。「いくつ要りますか?」って(笑)。本当にそこは便利になりました。SEスピーカーを増やすのも問題なくできます。

ラック類はいかがですか。

中島氏:
よく使うものは、歌もあるので、リバーブはもちろんですけど、MBC4、いわゆるマルチバンドコンプはめちゃくちゃ多用しています。個々のチャンネルにもかけますし、ワイヤレスマイクでグループを組んだところにもう一段かけたりもしています。というのも、無指向のマイクを使っているのもあって、たくさんマイクを生かすと新たなピークが出てきちゃったりするんですね。そこを抑えるためによく使っています。

左から中島聡氏、吉田綾香氏。吉田氏はフリーランスで今回初めて「RIVAGE PM3」をオペレートする。

より自然な舞台音響が実現できるイマーシブサウンドにも対応

その他に「RIVAGE PM3」で良かった点はありますか。

松山氏:
私が「RIVAGE PM3」を選んで良かったと思うのは、L-ISAコントロール用DeskLinkが搭載されて、イマーシブサウンドに対応できるようになった点です。将来的にはイマーシブサウンドをやっていきたいと考えているので。

今後、芝居やミュージカルの音響がイマーシブサウンド再生になっていくのでしょうか。

松山氏:
まだ日本のミュージカルでははじまっていませんが、今後はそうなるのではないかと思っています。
今でも後方にスピーカーを設置するなど疑似サラウンド的なアプローチはしているんです。でもイマーシブサウンドになると、LRのステレオ音場ではなくて本当に自然な音像になります。特に、お芝居などはLR再生よりもイマーシブサウンドが絶対いいと思っています。

中島氏:
お芝居やミュージカルって、客席から登場する演出がよくあるんですが、現在のLR再生だと音声はどうしても前から鳴っているようにしか聴かせることができません。ですから前のほうに座っているお客さまは、後ろから演者が登場しても「どこで歌ってるんだろう?」ってまわりを見回したりして、しばらくは後ろにいることに気づかない。それがイマーシブサウンドになれば、演者のマイク音声も本人と同じように音場を移動できるので、本当にその人がそこでしゃべっているように聴かせられます。

ステージ袖に設置された「RIVAGE PM3」のDSPエンジン「DSP-RX」とDante対応I/Oラック「Rio3224-D2」
デジタルコンソール「QL1」がマイク専用卓として使用されている

近い将来、日本のミュージカルでもイマーシブサウンドが主流になる

今後、貴社として挑戦したいことはありますか。

中島氏:
「RIVAGE PM3」で言えば、僕はシアターモードに興味があります。チャンネルにEQやダイナミクスに4つバンクがあるので、このコロナ禍ではマスクやフェイスシールドを付けた時と外した時などで設定をしておけば急な変更があってもすぐ対応できます。これから使っていきたいと思います。
今後やってみたいことで言うと、メインのLRのスピーカーだけでなくスピーカーの数を増やして、舞台の中などに何カ所かスピーカーを仕込んで、音に奥行き感を出せたりすると面白いのかなと思っています、例えば電話の音は電話のところから鳴るというようにするとか。これは昔からある手法ではあるんですけど、予算の面や設営時間などで断念していることが多いので挑戦してみたいですね。

松山氏:
いま中島が言ったような音響的自然さを考えると、今後はやはりイマーシブサウンドになってくると思います。
すでに海外のコンサートではレディー・ガガなどがコンサートでイマーシブサウンドを導入しています。ミュージカルや舞台の業界も世界的にはLR再生からイマーシブサウンドに移行しはじめていて、将来的にはイマーシブサウンドが主流になるのではないでしょうか。とはいえ日本の舞台ではまだイマーシブサウンドはこれからですし、もちろん費用もかかるので、プロダクションといろいろ話はしなければいけませんが、「RIVAGE PM3」がバージョンアップでイマーシブサウンドに対応しましたから、ぜひやってみたいと思っています。

本日はお忙しい中ありがとうございました。

有限会社 カムストック
http://r.goope.jp/comestock

製品情報

デジタルミキシングシステム RIVAGE PMシリーズ