【導入事例】日比谷音楽祭2021 Hibiya Dream Session / コンサート / 東京
Japan/Tokyo May.2021
2019年より毎年春に日比谷公園で開催される野外音楽フェスティバル「日比谷音楽祭」。2021年は5月29~30日の2日間、無観客・オンライン生配信での開催となりました。
このたび日比谷音楽祭2021の「Hibiya Dream Session」のPA機器ミキサーとして、デジタルミキシングシステム「RIVAGE PM10」「RIVAGE PM5」「RIVAGE PM3」が採用されました。採用の理由や用途などについてHibiya Dream SessionのPAを担当した株式会社スターテック 代表取締役 サウンドエンジニア 志村 明 氏、同 サウンドエンジニア 高田 義博 氏にお話をうかがいました。
日本を代表するアーティストが参加した日比谷音楽祭2021
日本を代表するプロデューサー 亀田誠治氏が実行委員長を務め、野外音楽の殿堂でもある野音擁する日比谷公園で開催される野外フリーライブイベント「日比谷音楽祭」。2021年は5月29~30日の2日間にわたり無観客でのオンライン開催となり、ライブステージ、ワークショップ、トークショーなどが日比谷公園大音楽堂(野音)、日比谷公園小音楽堂、第二花壇、東京ミッドタウン日比谷など複数の会場からライブ配信されました。
「RIVAGE PM10」、「RIVAGE PM5」、「RIVAGE PM3」が使用されたのは日比谷公園大音楽堂で行われた「Hibiya Dream Session」。日比谷音楽祭のメインプログラムです。実行委員長の亀田誠治氏をはじめとするトップミュージシャンが集ったThe Music Park Orchestraをホストバンドに、いきものがかり、GLAY、KREVA、桜井和寿、Little Glee Monster、生田絵梨花など日本のミュージックシーンを代表する豪華なゲストアーティストを迎え、日比谷音楽祭ならではのスペシャルなセッションが展開されました。
フロント用に「RIVAGE PM10」を、モニター用に「RIVAGE PM5」と「RIVAGE PM3」を使用
今回「Hibiya Dream Session」で「RIVAGE PM10」、「RIVAGE PM5」、「RIVAGE PM3」と3台ものRIVAGE PMコンソールが使われています。それぞれはどのような用途で使用されているのでしょうか。
志村氏:
フロント用、いわゆるFOHに「RIVAGE PM10」を使用し、モニター用として「RIVAGE PM5」と「RIVAGE PM3」を使用しています。
このような大規模なシステム構成になったのはどうしてですか。
志村氏:
まずFOHですが、ここ野音で行われるHibiya Dream Sessionはトップミュージシャンが集ったThe Music Park Orchestraをホストバンドとして、多数のアーティストたちがゲストとしてステージに上がります。これだけのミュージシャンが集まって作り上げる素晴らしい音楽をできるだけ忠実に、みずみずしいサウンドでミックスするためには「RIVAGE PM10」が必要だと考えました。
モニター卓として使用する「RIVAGE PM5」と「RIVAGE PM3」は、どのように使い分けているのですか。
高田氏:
「RIVAGE PM5」(DSP-RX-EXを使用)はチャンネル数が多いのでホストバンドのミキシングを行います。またゲストアーティストのモニター、ほとんどの方はイヤーモニターですが、それとフロアモニターの調整を「RIVAGE PM3」(DSP-RXを使用)で行います。またアーティストによっては専属のモニターエンジニアがいらっしゃるので、その場合は「RIVAGE PM3」を操作していただくという段取りにしています。
「RIVAGE PM10」はヤマハミキサーの集大成
志村さんにはヤマハミキサーを長くお使いいただいていますが、「RIVAGE PM10」の印象はいかがですか。
志村氏:
僕はヤマハミキサーとの付き合いは長くて、アナログミキサーの「PM1000」の頃から使っています。最終は「PM5000」になり、自分としてはかなり使いやすいミキサーでした。デジタルに移行してからも「PM1D」から歴代のモデルを使ってきましたが、「RIVAGE PM10」が現段階でヤマハミキサーの集大成という印象を持っています。ホールコンサートはもちろんですが、今日のような野外ライブでも「RIVAGE PM10」は非常に使いやすいです。
高田さんは「RIVAGE PM10」を使われてどんな印象ですか。
高田氏:
僕はいつもツアーの仕事で「RIVAGE PM10」を使っていますが、ヤマハミキサーのコンセプトである「原音に忠実」ということは強く感じますね。使いやすい良い音というか、素直に入ってくる音だと思います。また操作性に関しても、「RIVAGE PM10」は人間的で、ツマミでもパラメーターによっては、少し触るだけで動くものもあれば、回した角度に追従してアナログ卓と同じ感覚で数値が上がるものもあって、非常に良くできていると思います。
Hibiya Dream Sessionには「RIVAGE PM5」と「RIVAGE PM3」が最適だった
モニター卓に「RIVAGE PM5」、「RIVAGE PM3」を採用した理由を教えてください。
志村氏:
まずはスペースの問題があります。野音はステージ袖にあまりスペースがないんですね。でも高音質のもの、できれば「RIVAGE PM10」の音がほしい。その点「RIVAGE PM5」、「RIVAGE PM3」はコンパクトですが音質的には何の遜色もありません。またサイズの問題だけでなく「RIVAGE PM5」や「RIVAGE PM3」は「RIVAGE PM10」より設計が新しいので、UIに関して進んでいる部分があるんですよ。それでモニター卓には「RIVAGE PM5」、「RIVAGE PM3」を採用しました。
「RIVAGE PM5」、「RIVAGE PM3」では具体的にはUIのどんな点が進化しているのですか。
高田氏:
「RIVAGE PM5」や「RIVAGE PM3」のほうがモニター卓として便利なボタンが増えています。
たとえば最もコンパクトな「RIVAGE PM3」に関してモニター卓用としていい点はありますか。
高田氏:
「RIVAGE PM3」は「CLシリーズ」や「QLシリーズ」と操作性での共通点が多いので触りやすいんです。アーティスト側の乗り込みのPAの方も使い慣れているので、直感的に使えるメリットがあります。UserDefined Keyが、多いのもモニター卓としては非常に使いやすいです。
志村氏:
僕は「RIVAGE PM5」と「RIVAGE PM3」が出た時、いつかこういう使い方をしてやろうと思っていたんです。今回いい機会を得たので、RIVAGE PM10、PM5、PM3のそろい踏みとなりました。
今回音声の伝送はどうされていますか。
高田氏:
ライブ会場の伝送は、RPio622と各DSPエンジンをTWINLANeネットワークで接続して行っていますね。そして一部マルチレコーディング収録の分岐と、モニター卓での「RIVAGE PM5」と「RIVAGE PM3」間の伝送でDanteを使っています。
「RIVAGE PM10」で作った音を配信音源として使用
「日比谷音楽祭2021」も含めて、最近はライブ配信が急増していますがPAの役割に変化はありますか。
高田氏:
たしかに昨年からのコロナ禍で、配信ライブの仕事が増えました。ライブ配信をはじめたばかりの頃は、音を分岐してPAの音は我々が作り、配信の音はレコーディングエンジニアが来て別ミックスをしていました。ただ配信ライブが増えるにしたがって、もっとライブっぽい音で配信したいという声がアーティストやお客さまから出てきて、最近ではPAアウトのミックスを配信ソースにするケースが増えています。
PAのミックスとレコーディングエンジニアが作るミックスは違うのですか。
志村氏:
違いますね。レコーディングエンジニアは何度も聴く音源をミックスするのが仕事ですが、PAエンジニアは今、ここにいるお客さんを相手にして音を作る仕事なので、やっぱりアプローチは異なります。PAは現場にいてアーティストのテンションや会場の熱気などをミックスに反映させていきますから、PAミックスのほうがライブ感はあると思います。また今回もそうですが、PAエンジニアはリハーサルにも立ち会っていますし、リハーサルでのミュージシャン同士の会話も聞いているので、演奏の意図も掴んでいます。さらに曲ごとの細かいレベルやパンなどの設定もリハーサル時点でミキサー本体にシーンとして仕込んでおくこともできます。そのようにPAエンジニアはアーティストに近い場所にいるので、プロデューサーの亀田誠治さんの意向もあり、配信のベーシックはPAのミックスが使われています。
配信される音源は具体的にどのように作られるのですか。
志村氏:
各ミュージシャン毎に1つずつLRのバスを作って配信側に送ります。中継車の卓ではミュージシャンの数だけフェーダーが上がっていて、フラットの状態ではPAの音がそのまま聴こえるようになっています。それをベースに配信側では映像に合わせてボーカルを上げたり、リズムセクションを上げる、といった調整が行えます。そこに会場の環境音や観客席でのアンビエンスを加えて、最終の音の仕上げをするというシステムになっています。基本の音楽のミックスに関してはPAでやっていますから、今回は「RIVAGE PM10」を通った音が配信されることになります。
PAチームと配信チームで役割分担が変わってきたんですね。
高田氏:
我々はステージ上の音に集中していますので、そこに会場の響きや環境音を混ぜたり、曲間に観客側のマイクを上げるということは普段やりません。ですからそこは配信にお任せしたいところです。最近はこのような役割分担ができてきたので、配信ライブもやりやすいですし、臨場感のある音を視聴者に届けられるようになったと思います。
本日は本番前のお忙しい中ありがとうございました。
製品情報
デジタルミキシングシステム | RIVAGE PMシリーズ |