【導入事例】JR東日本×KDDI「空間自在プロジェクト」空間自在ワークプレイス実証実験 / 東京
Japan/Tokyo Jul.2021
東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)とKDDI株式会社は2020年より、場所や時間にとらわれない多様な働き方やくらしを創出する新しい分散型まちづくり「空間自在プロジェクト」に取り組んでいます。空間自在プロジェクトでは第1弾として働き方に関する課題解決を目指すワークプレイスコミュニティの活動を開始しており、2021年5月17日から2021年6月18日までの間、離れた場所にいながらチームワークを醸成できる「空間自在ワークプレイス」の実証実験を首都圏の計5カ所で実施しました。
その実証実験において、ヤマハの遠隔会議用ワンストップサウンドソリューション「ADECIA」が導入されました。導入の理由や使い勝手などについて、東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部 新事業創造部門 品川くらしづくりユニット 早川 明希 氏、KDDI株式会社 サービス企画開発本部 企画開発戦略部 プロジェクトマネジメントグループ マネージャー 松本 晋輔 氏、同 安田 篤史 氏にお話をうかがいました。
※「ADECIA(アデシア)」とは、遠隔会議に必要な機器をすべて揃えた音響システムとして、シーリングアレイマイクロフォン「RM-CG」、遠隔会議用プロセッサー「RM-CR」を中心に、PoE対応L2スイッチ「SWR2311P-10G」、Dante/PoE対応ラインアレイスピーカー「VXL1-16P」で構成されたソリューションです。
離れていても同じ空間にいるかのようにコミュニケーションがとれる「空間自在ワークプレイス」
「空間自在プロジェクト」とはどんなことを目指しているのでしょうか。
早川氏:
「空間自在プロジェクト」はポストコロナ社会を見据え、人・機能が都心に集中した従来の拠点集約型の都市づくりから脱却し、JR東日本が培ってきた「交通」とKDDIが培ってきた「通信」を融合させることで、場所や時間に捉われない多様な働き方、くらしを創出する、「ヒト」を中心とした新たな分散型のまちづくりを目指しています。
このたび実施された「ワークプレイス実証実験」とはどんなものですか。
松本氏:
空間自在プロジェクトにおける分散型ワークプレイスサービスの検証のために実際に場所を作って実証実験を行いました。コロナ禍でリモートワークが急速に浸透しましたが、リモートワークの中で見えてきた事の一つが、リアルで顔を見ながら働くことの重要性です。そこで、分散した場所でも同じ空間にいるかのように仕事ができるワークプレイスを作り、チームワークが醸成され、生産性が向上できるかという実証実験を行いました。
ワークプレイス実証実験の拠点は何カ所ですか。
早川氏:
東京都内が高輪、虎ノ門、神田、さらに横浜と北与野の5拠点です。実証実験においては、利用者には5拠点のうち2拠点を選んでいただきます。会議室への入室と同時に接続先拠点の4K映像を壁一面に投影し、PCの画面では体験できない臨場感と雑談も可能なコミュニケーション環境を提供します。
ADECIAは声を張らなくても、普通に話すだけで拾ってくれる
ワークプレイス実証実験では遠隔会議システムとしてヤマハのADECIAを選定いただいきました。選定理由はなんでしょうか。
松本氏:
仕事場としての臨場感を考えたとき「映像」だけでなく「音」がかなり重要だという認識を持っていました。そしてADECIAのデモンストレーションを拝見したとき、これなら音もしっかりと拾ってくれて、円滑にコミュニケーションをとることができると感じたのでADECIAを選定しました。
具体的にADECIAのどんな点が良かったですか。
安田氏:
まず普通の声量でも、声をかなり拾ってくれるところです。通常の遠隔会議だと参加者はマイクを意識してつい声を張り上げてしまいますが、ADECIAだとそういうストレスがなく、隣の人に話すような普通の話し方をしても、きちんとリモート先にも伝わる点が良いと思いました。
松本氏:
また、従来の遠隔会議システムだと、複数人が同時に発言すると、重なった声が拾われず、音声自体が聞こえなくなる場合があります。そのため、誰かが話している時には発言を待たなくてはならず、コミュニケーションに若干のストレスがありました。でもADECIAは会話が重なって音声もきちんと音声を伝達してくれるのでブレインストーミングなどでも自由闊達なやりとりが行えるという点も高く評価しました。
早川氏:
普通の遠隔会議システムだと笑ったり、相槌をうったりなどの反応がしにくく、ひたすら無言で聞いているという状況になりがちで、それが課題だなと感じていました。ADECIAの場合は逆に会議中に隣の人とコソっと話したこともリモート先まで聞こえていることが多いです(笑)。
マイク設置の手間が省ける、臨場感ある音声、同時に複数の人間が会話できることが評価された
実際にADECIAをワークプレイスで使ってみた感想をお聞かせください。
早川氏:
マイクの事前準備がいらないのが便利ですね。社内の別の会議室で使っている遠隔会議用のシステムは、毎回マイクを出したりしまったりしているのですが、毎回なので準備や片付けが大変です。その点ADECIAは天井にマイクが設置されているので、マイクを接続したり、参加者にあわせてマイクの設置場所を考える必要がなく、すぐに遠隔会議が始められます。
安田氏:
マイクユニットが天井に据え付けられているため、ケーブルが床やテーブルにありませんし、マイクの位置を考えずに自由に席を動かせる点が良いです。
それともう一つ、今回の実証実験で使った5つのワークプレイスは、それぞれ部屋の大きさや形状が違うことから、響きなどの音響状況に差が出ます。すると設置する空間に合わせた微妙な調整が必要になってきます。その点ヤマハさんは楽器や音響機器、会議システムで培った知見を持つ音のプロ中のプロですから、導入時に安心してお任せできました。
松本氏:
実証実験にはいろんな企業にご参加いただいたのですが、そのフィードバックとしては、大画面の映像と質の高い音声との相乗効果で臨場感があって良かった、また音をしっかり確実に接続先に届けてくれる、さらに空間を超えて複数の人間が同時に会話できるので、まるで同じ場所にいるような臨場感がある、という声もいただいています。
暮らしを含めた幅広い視点で「分散型の暮らし」を提供していきたい
今後、空間自在ワークプレイスではどんな展開を目指していますか。
早川氏:
今回は「働く」にフォーカスした実証実験でしたが、ワークプレイスにこだわらずに様々な用途での商用化を将来的には目指していきたいと思っています。遠隔地をつないで臨場感のあるコミュニケーションが提供できれば、テレビ電話を超えた価値が創出できると思います。このように「分散型の暮らし」という新たな価値の創造を目指し、幅広い視点でプロジェクトを展開していきたいと思っています。
安田氏:
今回はワークプレイスと言っていますが、そもそもは高音質・高画質の通信により、離れた場所と質の高いコミュニケーションが実現することが原点です。これを応用すれば中央と地方、地方と地方を繋いでリモートで商談したり、また、ワーケーションにも使えますので地方創生にも寄与できると思っています。
また今回は首都圏で実証実験を行いましたが、今後は日本全国、さらに海外も想定しています。コロナ禍で海外とつなげたいという需要は非常に高くなっていて、海外拠点と国内拠点をADECIAで常時接続すれば、非常に緊密なコミュニケーションがとれるのではないかと期待しています。
松本氏:
もう一点加えるとしたら、だいぶ先となりますが、これから品川・高輪エリアもどんどん発展していく予定です。ここで得られた知見を、空間自在プロジェクトの原点でもある「品川開発プロジェクト」※に持ち帰り、よりいっそう磨き上げられたワークプレイスを、再度高輪に投入することも目指しています。
※ 品川開発プロジェクト
品川駅と田町駅の間にあった広大な車両基地の機能を整理・集約し、約13ヘクタールの開発用地が生み出された。JR東日本ではこの場所を、世界中から先進的な企業と人材が集い、多様な交流から新たなビジネス・文化が生まれる「グローバル ゲートウェイ 品川」と位置づけ、新たなまちづくりを計画した。
山手線ではおよそ半世紀ぶりとなる新駅「高輪ゲートウェイ駅」によりアクセスが向上するこの開発用地6区画のうち、第Ⅰ期として約9.5ヘクタールに総延べ約85万平方メートルの1街区から4街区の施設群を建設するビッグプロジェクトが、2024年度の完成を目指して進められている。
空間自在プロジェクトの今後の進展を大いに期待しています。本日はご多忙の中、ありがとうございました。
空間自在プロジェクト
https://kukanjizai.com
製品情報
遠隔会議用ワンストップサウンドソリューション | ADECIA |