【導入事例】株式会社フォース 様 / SRカンパニー / 京都

Japan/Kyoto Mar.2022

2022年に創立42周年を迎える「劇団☆新感線」のサウンドデザインを長年手掛けている株式会社フォースの代表取締役 井上 哲司 氏。このたび株式会社フォース様にデジタルミキシングシステム「RIVAGE PM3」が導入されました。

その経緯や選定理由などについて、井上 哲司 氏にお話をうかがいました。


バンドオペレーターから「劇団☆新感線」のサウンドデザインへ

井上さんはどんなきっかけで「劇団☆新感線」のサウンドデザインを手掛けるようになったのでしょうか。

井上氏:
私はもともとバンドが好きで、最初はバンドもののPAオペレーターをしていました。当時はライブハウスでのオペレートがほとんどでした。そのうちに関西を拠点に活動をしていたバンドの専属PAを担当するようになりました。それからほどなくして、そのバンドがお芝居の公演で演奏することになり、オペレーターとして入ってほしいといわれたのがお芝居の音響をした最初になります。その後、お芝居の関係者との繋がりから、「劇団☆新感線」と出会いました。それが90年代ですからもう35、6年になります。その後、96年ぐらいからは「劇団☆新感線」の仕事をどっぷりやるようになりました。

株式会社フォース 代表取締役 井上 哲司 氏

コンサートPAとお芝居のPAでは、全然違うのではないでしょうか。

井上氏:
始めた頃は、お芝居でのPAのマイクレベルやバランスなど苦労しました。たとえばバンドのPAであれば、基本的にバンドさんのバランスでステージがどんどん進んでいくわけですが、お芝居って、マイク1本考えても、向き合った時の被り込みも違うし、離れた時の音量も違ってくるので、そのつど細かく調整をしなくてはいけません。たとえば劇中で演者さん全員が一斉にセリフを言い出した時に、各演者さんのマイクをそのままにしておいたらレベルが急に上がってしまいますので、各演者さんのマイクレベルは下げなくてはなりません。そのためには、そのシーンの各演者さんのフェーダーをリンクさせておいて、フェーダー1本でまとめて操作できるようにしておく、といったような高度な判断が求められる細かい作業が場面ごとにたくさんあります。そういったことは、実際にお芝居の公演を続けていく上で身につけていきました。
今では「劇団☆新感線」の音響システムについては、一通り任せられております。
本番でのオペレーションも行いますが、最近は若いオペレーターに任せるようにしています。

演劇で要求される多数のインプット/アウトプットに対応するために「RIVAGE PM3」を導入

井上さんは、これまでもずっとヤマハのミキサーを使われてきたと聞きました。

井上氏:
はい。当初はアナログミキサーを使用していましたが、早い段階でデジタルミキサーへ移行しました。
最初に導入したデジタルミキサーは、「ProMix01」で、次に「02R」を使用していました。「02R」はスタジオでは、プリプロ用の音楽制作卓として使用し、お芝居ではスタジオから持ち出してPA卓として使用していました。
その後「DM2000」、「02R96」、「PM5D-RH」、「CL5」と移行していき、今回「RIVAGE PM3」の導入に至ります。

「RIVAGE PM3」を選ばれた理由を教えてください。

井上氏:
お芝居での入出力の回線数が近年どんどん増えていき、「CL5」では追いつかなくなってきました。
ミキサーの更新を検討していたところ、良いタイミングで「RIVAGE PM3」が発表され、ヤマハさんにデモ機を持ってきてもらいました。実機を確認したところ、入出力の回線数、音質など納得いくものでしたので、「RIVAGE PM3」の導入を決定しました。

デジタルミキシングシステム「RIVAGE PM3」
I/O ラック「Rio1608-D2」(ラック上段および中段) 、DSPエンジン「DSP-RX」

お芝居ではそんなに多くの入力数、出力数を使うのでしょうか。

井上氏:
出力に関してはウォールスピーカーにも出力したい、プロセニアムスピーカーにも出力したい、メインスピーカーも低域スピーカーだけは別に出力したい、もちろん舞台袖のモニタースピーカーへの回線も必要など、出力は本当に目いっぱいです。また入力に関しても、ワイヤレスマイクだけで、出演者の人数とスペアも含めて最低でも40本は使いますし、音響効果のSE系から入力回線数も多いです。SE系は単にLRスピーカーに送るのではなく、リアスピーカーの回線などに分けていきますから、それだけでも10回線ぐらい使ってしまいます。あとはワイヤレスマイクのフォロー用途でガンマイクも10回線ぐらい用意しています。

「シアターモード」はダブルキャストなどで使えそう

「RIVAGE PM3」を実際に導入されて、印象はいかがでしょうか。

井上氏:
本格的な運用はこれからですが、操作に関してはフェーダーが「CL5」は8本単位だったのに対して「RIVAGE PM3」では12本単位になったので、そこがまず使いやすくなったと感じました。それと「RIVAGE PM3」ではカスタムフェーダーバンクをシーンごとにメモリーできます。「CL5」と違ってカスタムフェーダーのバンクが多くなっているので、使うカスタムフェーダーをあらかじめいくつも組んでおき、シーンごとに必要なバンクを呼び出しすれば、便利に使えるだろうなと思っています。

「RIVAGE PM3」の操作性はいかがでしょうか。

井上氏:
「DM2000」から「CL5」への移行の時も慣れが必要だったので「RIVAGE PM3」も今のうちに勉強しておかないと、と思ってやっています。専用のEditorソフトウェアに関しても覚えるのがちょっと大変かもしれませんが、慣れてしまえば絶対「RIVAGE PM3」のほうが楽になると思います。

可搬性などの面はいかがでしょうか。

井上氏:
サイズ的には今まで使っていた「CL5」とそんなに変わらないですし、奥行きは逆に短いぐらいなので、全く問題ないと思います。ただディスプレイサイズが大きくなり、「CL5」より高さがあるので、それがサイトラインにどれだけ影響があるか、これは実際に劇場で設置して計測する必要があります。

「RIVAGE PM3」を導入したことで新たにトライしてみたいことはありますか。

井上氏:
ミュージカルなどに特化して開発されたという「シアターモード」を使ってみたいですね。これは各インプットチャンネルが4つのバンクを持っていて、それぞれに異なるEQやダイナミクスの設定ができるので、ダブルキャストの時やマイクを切り換えた時などに利便性が高いと思います。
別に設定しておいたEQやダイナミクスに瞬時に切り換えられるので、何かあった時の備えとして、これは結構使えそうだと思っています。

最後に今後やってみたいことがあれば教えてください。

井上氏:
イマーシブオーディオをやってみたいですね。たとえば役者が花道から登場するようなとき、お客さんはスポットライトがあるので演者さんがどこにいるのかはわかるのですが、現状だと音声だけは前のスピーカーから聴こえるわけです。そういう時はPAのセリフの音量を極力下げて生の声を聴かせるようにしてますが、できれば音像定位を用いて、PAでも演者の口元からセリフが聴こえるようにしたいと思っています。

近い将来、演劇でもイマーシブオーディオが導入されるのでしょうか。

井上氏:
ヨーロッパ系のミュージカルはすでに対応しているので、近い将来日本でもそうなると思います。

今後の「劇団☆新感線」で「RIVAGE PM3」が活躍することを期待しています。本日はご多忙中ありがとうございました。

劇団☆新感線
http://www.vi-shinkansen.co.jp

製品情報

デジタルミキシングシステム RIVAGE PMシリーズ