【導入事例】那覇文化芸術劇場なはーと 様 / 劇場 / 沖縄
Japan/Okinawa Jul.2022
2021年10月、那覇市の観光の中心である国際通りからほど近い場所に、約1600席の大劇場、最大300 席の小劇場、さらに大・小のスタジオなどを備えた新たな沖縄の文化発信の拠点「那覇文化芸術劇場なはーと」がオープンしました。このたび「那覇文化芸術劇場なはーと」の大劇場には調整卓としてヤマハデジタルミキシングシステム「RIVAGE PM5」および「QL1」が、小劇場にはヤマハデジタルミキシングシステム「QL5」および「QL1」が、そして大劇場、小劇場ともにNEXOのスピーカーシステムが導入されました。
それらの導入理由や実際の使い勝手について那覇市 市民文化部 文化振興課 主幹(音響技術) 福澤 裕之 氏、那覇文化芸術劇場なはーと 音響 技術 平野 涼子 氏、同 音響 技術 嘉陽 桃瀬 氏、同 音響 技術 川満 芳裕 氏にお話をうかがいました。
沖縄における実演芸術の新たな発信拠点
「那覇文化芸術劇場なはーと」
「那覇文化芸術劇場なはーと」についてご紹介ください。
福澤氏:
「那覇文化芸術劇場なはーと」は、現在老朽化により閉館している那覇市民会館の代わりとなる施設として作られました。沖縄の実演芸術の発信拠点となる「劇場」として実演芸術を中心に催し物を行うことが趣旨として掲げられています。
外観や1階のロビーは非常にユニークですし、大劇場や小劇場は沖縄らしさがあり、とても美しいです。
福澤氏:
「那覇文化芸術劇場なはーと」には、さまざまな形で沖縄的なコンセプトが込められています。大劇場は沖縄の珊瑚礁の海をイメージして作られており、上から明かりが入ってキラキラして、まるで海の中でお芝居を見ているようです。小劇場は壁面も音響反射板も朱色で、全体に格子状に木を使用しており首里城をイメージしています。キャパシティは大劇場が1594席+車椅子席が8で計1602席、小劇場は最大で298席+車椅子席2席で300席です。小劇場は反射板形式、幕仕様、1階席の前3列を撤去してフラットにし中通路とつなげることで平土間利用にも対応します。
劇場に加えてスタジオなども完備されていますが、これらはどんな用途で使われているのでしょうか。
福澤氏:
大スタジオは大劇場の主舞台部分と同じ面積を持ち、大劇場の稽古を行うことが多いですが公演も行うことができます。昇降バトンが4本、そして暗転も作れるように壁はダークブラウンになっています。小スタジオはほぼ小劇場を平土間にしたぐらいの面積です。こちらは真っ白な空間で、稽古や公演にも行えます。また1階の施設共通ロビーとつなげることができ、ロビーとつなげてインスタレーションの展示を行うこともあります。
ヤマハのデジタルミキサー「RIVAGE PM5」+NEXO
によるフルDanteの音響システム
それでは音響システムについておうかがいします。大劇場の音響卓としてヤマハ「RIVAGE PM5」を採用いただきました。採用理由を教えてください。
福澤氏:
原設計では別のコンソールが予定されていましたが、大劇場のキャパシティや用途を考え、変更しました。その時、ヤマハの「RIVAGE PM10」を検討しましたが、納入機器決定の最終段階で「RIVAGE PM5」が発表されたので検討した結果ベストだという判断をしました。
具体的にはどんな点が「RIVAGE PM5」導入の決め手になったのでしょうか。
福澤氏:
大劇場には多数のスピーカーがありますが、ミキサーのチャンネルアウトプットとスピーカーが1対1になることが理想でした。演劇の場合、スピーカーの制御は全部別々に分けたいんです。これが「RIVAGE PM5」でも可能でした。それともう一点はDanteによるフルデジタルシステムの構築です。「RIVAGE PM5」+NEXOのスピーカーシステムであれば、ミキサーからパワーアンプに直接Danteで送り出せるフルデジタルシステムが構築できます。
「RIVAGE PM5」の音質や操作性に関して川満さんはどう感じましたか。
川満氏:
これまでヤマハ「CLシリーズ」や「QLシリーズ」を使っていたので、大きな違いは感じませんでしたが、「RIVAGE PM5」はタッチパネルが3面あるので、情報が見えやすく使いやすい気がします。スロットにカードを入れることで、入出力数を増やせる点もいいと思います。
嘉陽さんは「RIVAGE PM5」を使ってみていかがでしょうか。
嘉陽氏:
「RIVAGE PM5」は画面が3つあるのが使いやすいです。卓の画面を分けて別の人と同時に作業できるので便利です。
音響調整室には「RIVAGE PM5」に加えてデジタルミキシングコンソール「QL1」も導入いただきました。調整卓を2台体制で運用しているのはどうしてですか。
平野氏:
「RIVAGE PM5」は舞台音響用の調整卓とし、「QL1」は舞台連絡設備用の調整卓として楽屋送りやエアモニター、ITVの音声用などと切り分けて使用しています。舞台連絡用の卓はほとんどの設定を固定にしておけますし、PAのオペレーションをする時に頭から連絡系のことを切り離せるので使いやすいです。
川満氏:
たとえば乗り込みのPAオペレーターさんが来てメイン卓を使う時、こちらで楽屋やロビーなどへの送りの調整をするときにメイン卓ではなく隣の「QL1」で行えるので、乗り込みのオペレーターさんに迷惑をかけなくて済みます。それも大きなメリットです。
小劇場の調整卓は「QL5」ですね。
福澤氏:
小劇場にはメイン卓として「QL5」、連絡設備卓として「QL1」が入っています。また小劇場とは別に移動用卓としても「QL5」と「QL1」を導入しています。同じモデルを2台ずつ導入したのは、それぞれのバックアップとして機能させるという目的がありました。
NEXOならフルDanteでシステム構築可能
スピーカーについてうかがいます。大劇場、小劇場ともにNEXOのスピーカーシステムを導入いただきましたが、導入の理由を教えてください。
福澤氏:
最大の理由は先ほども申しましたが「RIVAGE PM5」からパワーアンプまでDanteによるフルデジタルシステムが構築できることです。そこがNEXOの強みです。サブウーファーも一緒に吊ることができ、音や定位感は良いと思います。それと私が以前所属していた施設でNEXOを使っていたので馴染みがあり、音質的にも好みだったのも理由のひとつです。
NEXOのスピーカーの音質についての感想はいかがでしょうか。
福澤氏:
音としてはクリアで、好みの音です。公演にあわせて若干音質の調整はしますが、ミキサーのアウトプットで調整する程度でさまざまな用途に対応します。
川満氏:
私も素直で違和感のない音だと思いました。実は20年以上前にNEXOを使った時はかなりEQで調整しましたが、今のNEXOは素直な音で、昔に比べたらずいぶん丸くなったなという印象です(笑)。
平野氏:
大劇場で初めてメインスピーカーを聴いたときに「ああ、きれいな音だな」と思いました。ジャンルを選ばず、どんな曲でも素直に再生してくれるのと、こんなに小さいスピーカーなのに、音が飛んでくる感じで、結構音が出るんだなと驚きました。
嘉陽氏:
私も川満さんと同じ意見です。きれいな感じで、あまりミキサー側でEQをいじる必要はないかなと思いますね。
最後に、今後「那覇文化芸術劇場なはーと」で、どんなことをしてみたいか、教えていただけますでしょうか。
平野氏:
マイクやワイヤレスマイクをたくさん使って、NEXOのスピーカーや「RIVAGE PM5」などの機材をフルに生かしたオペレーションをやりたいと思っています。
川満氏:
大がかりな公演のオペレーションをやりたいですね。特にミュージカルのオペレーションを、ワイヤレスマイクをたくさん使って、たたきも含めてやってみて、ここにあるシステムを100%完全に使い切ってみたいです。
嘉陽氏:
この間フランスとの共同制作でコンテンポラリーダンスと現代美術家のアニメーション映像を絡めた日仏共同製作作品『もつれる水滴(Tangled drop)』という公演がありました。今後もそのような今まで沖縄ではなかなか見られなかったジャンルの作品の公演をどんどんやっていけたら面白いと思いました。
福澤氏:
まずは、はやくスタッフが公演に関われるチャンスを増やして行きたいと思います。ちなみに10月に平野さんプランで大劇場で演劇をやります。劇場のシステムをフルスペックに使って行う公演があります。
また、この劇場で年に1本か2本、プロの舞台俳優さんに加えて地元の人を採用してオリジナルの演目を制作し、そこにオペレーターとして劇場の人間が入っていくことで、我々も創作にかかわっていけるのではないかと思っています。
あとは沖縄の文化芸術劇場ですから、沖縄の伝統芸能の公演を行ったり、あるいは東京や大阪で行われている大きな公演を招聘したりといったバランスをとりながら、沖縄の実演芸術の拠点としての役割を果たしていきたいと思っています。
本日はご多忙中ありがとうございました。
那覇文化芸術劇場なはーと
https://www.nahart.jp/
ヤマハサウンドシステム株式会社 納入事例ページ
https://www.yamaha-ss.co.jp/halls-in-japan/okinawa-nahart.html
製品情報
デジタルミキシングシステム | RIVAGE PM5 |
デジタルミキシングコンソール | QLシリーズ |
NEXO製品についてはこちらをご覧ください。
NEXOサイト 日本語ページ