【新製品レビュー】ポータブルPAシステム「STAGEPAS 1K mkII」/ パワードスピーカー「DXL1K」/ 株式会社G-SOUND 代表取締役 サウンドエンジニア 中嶋 優 氏

Japan/Tokyo Sep.2022

東京・吉祥寺のライブハウス「吉祥寺SHUFFLE」を運営する株式会社G-SOUNDの代表取締役 中嶋 優 氏は、音響エンジニアとして日本武道館のコンサートなどをはじめとする音楽イベントを年間100件以上担当。また専門学校の講師も務めるなど多方面で活動されています。

今回はご多忙の合間をぬって、新商品「STAGEPAS 1K mkII」と「STAGEPAS 1K」の比較検証、さらに「STAGEPAS 1K mkII」と新商品であるパワードスピーカー「DXL1K」との組み合わせで音の印象や使い勝手になどについてお話をうかがいました。


ライン入力では全体のバランスが向上

今回はライブハウス 吉祥寺SHUFFLE で、mkIIへと進化した「STAGEPAS 1K」の実力を確認していただきたいと思います。早速ですがステージ上に「STAGEPAS 1K」と「STAGEPAS 1K mkII」を2台設置させていただきました。まずはCD音源でライン入力の音を聴き比べていただけますか。

中嶋氏:
(「STAGEPAS 1K」と「STAGEPAS 1K mkII」交互に試聴して)
初代の「STAGEPAS 1K」はハイやローの一部の帯域が出過ぎて聴こえている感じがありました。「STAGEPAS 1K」のローがガンガンくる感じは私としては好きですが、好みは分かれるかもしれません。新しい「STAGEPAS 1K mkII」の方はハイとローのバランスがとてもいいですね。ローはかなり締まった感じです。ボーカル系のCDを再生すると「STAGEPAS 1K mkII」のほうが良いですね。「STAGEPAS 1K」と「STAGEPAS 1K mkII」では、出力やスピーカーとサブウーファーのバランスは変更したのですか?

「STAGEPAS 1K mkII」はアンプ出力が1100Wで、「STAGEPAS 1K」は1000Wなので100W出力がアップしています。またパワー配分も変更していて、「STAGEPAS 1K mkII」ではサブウーファーの出力はやや抑え、ラインアレイスピーカーの出力を大幅に増やしました。

中嶋氏:
なるほど、それでバランスが変わったんですね。「STAGEPAS 1K mkII」のほうがいいバランスだと思います。これは初代もそうですが、こうやって鳴らしてみるとラインアレイスピーカーは使いやすいですね。音の減衰が少なくて遠くまで届くし、近くで聴くのと遠くで聴く時のボリューム差がほとんどないので、インストアライブやイベントなどではかなり使いやすいと思います。

進化が際立ったマイクインプット

続いてマイク入力での比較テストをお願いします。

中嶋氏:
(「STAGEPAS 1K」と「STAGEPAS 1K mkII」で綿密なマイク入力の比較を行って)
マイクインプットは「STAGEPAS 1K mkII」のほうが断然大きな音が出ますね。ライン入力ではさほど音量差は感じませんでしたが、マイクを使う場合のポテンシャルは「STAGEPAS 1K mkII」のほうが上です。拡声用途やライブの音響なら断然「STAGEPAS 1K mkII」がいいです。これだけの音量差が出るのは「STAGEPAS 1K」と「STAGEPAS 1K mkII」では、パーツなども変わっているのでしょうか?

スピーカーユニットは同じですので音色バランスは変わりませんが、アンプから供給されるパワーが増えましたのでパーツや抵抗値などを変えています。

中嶋氏:
きっと能率が上がっているんですね。聴感上の音量の違いはかなり大きいです。100人規模程度のインストアライブであれば「STAGEPAS 1K mkII」は十分使えると思います。さらに言えばスピーカーを背にして歌ってもハウリングしないし演者さんにも自分の音がよく聞こえるので、モニタースピーカーなしでライブやイベントができそうです。

実際スピーカーの前にマイクを持って行ってもハウりにくい。これはスゴいです。モニターを用意しなくていいのであれば、運搬や設置の労力が劇的に減りますから、「STAGEPAS 1K mkII」を使うメリットはかなり大きいでしょうね。

サブウーファーの上部にあるミキサーの使い勝手はどうですか。

中嶋氏:
分かりやすいし、使いやすいです。Bluetoothがついているのもイベントでは便利です。よくBluetoothの音量はスマホ側のボリュームじゃないといじれないものがありますが、「STAGEPAS 1K mkII」はミキサー部のツマミでもボリュームをコントロールできるので便利です。

「STAGEPAS 1K mkII」ミキサー部分

「DXL1K」とのステレオリンクではさらに音圧アップ

「STAGEPAS 1K mkII」と同時に発売されたパワードスピーカー「DXL1K」もお持ちしました。「DXL1K」は音響的な仕様は、「STAGEPAS 1K mkII」と同じでミキサー機能を省略したラインアレイ型パワードスピーカーです。単体でコンパクトなPAシステムとして使えるだけでなく「STAGEPAS 1K mkII」のステレオ拡張用ユニットとしても使用できます。今回は2台をステレオリンクしたシステムもチェックしていただけますか。

中嶋氏:
わかりました。早速セットしましょう。

中嶋氏:
(「STAGEPAS 1K mkII」と「DXL1K」のステレオリンクを試聴して)
とてもいいです。「STAGEPAS 1K mkII」1台の時よりもライン入力音源もステレオでガツンと出せますし、マイク入力も、単体よりさらに音量が上げられる印象です。

中嶋氏:
(「STAGEPAS 1K mkII」と「DXL1K」のステレオリンクでマイク入力をさらにテストして)
これは2台あったほうがいいです(笑)。ステレオリンクならインストアライブ全く問題なく使えそうです。大型旗艦店のインストアライブでも十分いける。今はコロナ禍で声出しが制限されていますが、お客さんが「ワー!」っと声を出し始めるとボーカルが負けちゃうことがあるんですよ。もっとボーカルを上げてほしいと言われることが多いのですが、通常のポータブルPAでは限界を感じていました。でも「STAGEPAS 1K mkII」+「DXL1K」なら音量は出るし、キツく感じるピークがない。とてもきれいな音だと思います。これでモニターなしでインストアライブができるなら、本当に助かります。

可搬性が抜群でスピーカースタンドも不要

「STAGEPAS 1K mkII」はコンパクトさ、可搬性なども評価されています。その点はいかがでしょうか。

中嶋氏:
PAって音を出す前後の運搬、セッティング、撤収も大切なんです。実際、インストアライブの場合は一人で現場に行くことが多くて、設営もオペレーションも一人で行います。ですから機材がコンパクトで軽量なのは大きなメリットです。「STAGEPAS 1K mkII」なら、スピーカースタンドは要らないですし、転倒リスクも考えなくていいのでとてもいいと思います。

「STAGEPAS 1K mkII」には専用のキャリングケースが付属します。使っていただけますか。

中嶋氏:
やってみましょう!

中嶋氏:
(「STAGEPAS 1K mkII」をケースに収納する作業を終えて)
ものの5分もかからないですね。撤収が5分で終わるのは本当に助かります。最近は女性のオペレーターも増えていますから、機材の運搬がラクになるのは助かります。ケースのうしろにポケットが2つあって、マイクやケーブル類が入れられるのも便利です。

今回は「STAGEPAS 1K」と「STAGEPAS 1K mkII」を徹底比較していただきました。総合的に見て、mkIIの印象はいかがですか。

中嶋氏:
見た目はほとんどかわらないけど、実際に仕事レベルの音量で試してみると、かなり大きな差がありました。特にマイクの音量とハイの抜けが格段に違っていて、mkIIはすごく進化したと感じました。近年は小型のラインアレイのスタイルが海外で主流になってきているので、近い将来日本でも数多く使われるようになると思います。今日テストした「STAGEPAS 1K mkII」はバランスがとてもいいですし、音質も素直で使い勝手も良かったので、今後多くの音響の現場で活躍するのではないでしょうか。僕もライブやイベントでぜひ「STAGEPAS 1K mkII」を使ってみたいと思います。

本日はお忙しい中、製品レビューをしていただきありがとうございました。

株式会社G-SOUND
http://g-sd.net

ライブハウス「吉祥寺SHUFFLE」
http://k-shuffle.com

製品情報

ポータブルPAシステム STAGEPAS 1K mkII
パワードスピーカー DXL1K