【導入事例】STUDIO KE 様 / MAスタジオ / 東京

Japan/Tokyo Dec.2021

目まぐるしく変化を続けるメディアに柔軟に対応し、多様な要望に応えるMAスタジオとして2021年に設立された「STUDIO KE」。このたびSTUDIO KEに、シグナルプロセッサー「MRX7-D」が導入されました。

その導入の経緯やMAスタジオでの使い勝手などについて、サウンドエンジニア 半澤 修 氏、スタジオ設計を行った株式会社 レスターコミュニケーションズ 技術部門 システムエンジニアリングー部 SE三課 相馬 上総 氏、タックシステム株式会社 トライテック事業部 フィールド チーフ 小守 克彦 氏にお話をうかがいました。


テレビ・ラジオCM、Webなど
幅広いメディアのMAに対応するSTUDIO KE

はじめにSTUDIO KEについて教えていただけますか。

半澤氏:
「STUDIO KE」は映像制作会社である株式会社キッズのMAスタジオです。キッズにはこれまでMAスタジオはなかったのですが、前職で私が在籍していたMAスタジオが解散することになり、キッズの方に「それならうちでMAスタジオを作るのでやってくれないか」ということになり、2021年にSTUDIO KEが立ち上がりました。

STUDIO KE サウンドエンジニア 半澤 修 氏

半澤さんご自身は、長年MAのサウンドエンジニアをされてきたのですか。

半澤氏:
専門学校を出てから、30年間、MAエンジニアをやってきました。映像媒体のMAが中心で、CM、テレビ、映画などを手掛けました。

STUDIO KEではどんな業務を手掛けているのでしょうか。

半澤氏:
やはりテレビやラジオのCM、テレビ番組、ビデオのMA、店内放送やプレゼンテーション用のナレーション収録、さらにビデオ用の整音作業や、業務用音源のコーディネート・選曲などを行っています。
以前のMAスタジオは映像編集とセットがほとんどでしたが、最近は監督やディレクターがパソコンで編集を済ませたあとで、その映像に対してナレーションを録ったり、音楽やSEを付けてミキシングして仕上げるというケースが多いですね。今はWebがらみの仕事が非常に多く、特にYouTubeなどに差し込まれるCMや企業のホームページに貼られる紹介用のビデオのMAが増えています。

ナレーション収録用ブース

ヤマハプロセッサーをエンジンとしたTRITECH製スタジオコミュニケーション用コントローラー「VS-665N」をMA作業で活用

スタジオを設計された株式会社 レスターコミュニケーションズの相馬さんにおうかがいします。このたびSTUDIO KEでシグナルプロセッサー「MRX7-D」を導入いただきました。その導入理由について教えていただけますか。

相馬氏:
私と半澤さんとは以前上司、部下の関係だったこともあり、半澤さんの仕事は良く存じ上げています。ですからSTUDIO KEのシステムの構築にあたっては、半澤さんが仕事をしやすいように、以前使われていたスタジオに近いような形で組みました。そして前のスタジオでもTRITECHのモニターコントローラーを入れていたので、今回もTRITECHの「VS-665N」という最新のスタジオコミュニケーション用コントローラーを導入しました。そのエンジンがヤマハのシグナルプロセッサー「MRX7-D」となっています。

株式会社 レスターコミュニケーションズ 技術部門 システムエンジニアリングー部 SE三課 相馬 上総 氏
TRITECHスタジオコミュニケーション用コントローラー「VS-665N」
ラックに収められたシグナルプロセッサー「MRX7-D」(中段)

タックシステム株式会社 小守さんにうかがいます。TRITECHのスタジオコミュニケーション用コントローラー「VS-665N」はどういう製品なのでしょうか。

小守氏:
TRITECH「VS-665N」はボリューム/スイッチユニットで、ヤマハのプロセッサーをリモートで操作するインターフェースです。モニターの切り換えやメーターの切り換え、さらにアナブースのボリュームやバランスの調整がMAエンジニアの手元で瞬時に操作できるような操作子を持っています。

タックシステム株式会社 トライテック事業部 フィールド チーフ 小守 克彦 氏

MAの作業において、TRITECH「VS-665N」のような物理的なスイッチは必要なのでしょうか。

相馬氏:
私ももともとMAエンジニアだったのでよく分かるのですが、モニターコントローラーはVUメーターや映像を見ながら音の違いを聴き比べるものなので、ほとんど手元を見ずに使うんです。ブラインドタッチになるので、どうしても物理スイッチが必要になります。

半澤氏:
結局、時代でMAスタジオも変わってきていて、昔はMAルームに音声卓がドンとありましたから、卓のからモニター類をコントロールしてました。ところがDAW化が進んできてスタジオがコンパクトになると、コントローラーも小型化する。そうなったときモニターコントロールをどうするかということになってきます。それって物理操作子がないと面倒なんですね。それで卓の代わりにラックマウントできるサイズのプロセッサ−「MRX7-D」と小型のボリューム/スイッチユニットですぐに操作できるようにしているわけです。

ボタン1つでモニター切り換えやレベル調整などの操作を実現

「MRX7-D」の物理的なインターフェースである「VS-665N」ですが、MAスタジオではどんな用途で使われることが多いのですか。

小守氏:
「VS-665N」の基本的な機能は、モニターの切り替え、コントロールルームとアナウンスブース送りのボリューム調整などです。動作は「MRX7-D」のエディターでプログラムしますので、MAエンジニアの方のご希望に応じて、さまざまな操作が設定でき、複数の切替をボタン一つで動作できます。たとえば便利な機能としてはアナウンスブースのヘッドホンのオン・オフです。これはナレーション録音の作業を一回止めて、アナウンサーさんに待ってもらっている間、ヘッドホンの音を止める機能です。アナブースに音が聞こえても問題はないんですけど、静かに休憩して待ってもらえるので、意外とこれが「いいね」と言われます。
他には、ラージ/スモールのモニタースピーカーを切り替えた時の音量の差のバランスをとることもできます。他には、PGMとCUE1、CUE2というツマミがあって、アナウンスブースに送る2MIXに加えて別系統のキュー送りも作れます。これらの機能をMAミキサーにご説明すると、たいてい「おー!」っと喜ばれます。これらが設定できるのは設計が柔軟な「MRX7-D」のおかげですね。

半澤さんは「VS-665N」でどんな操作をされているのでしょうか。

半澤氏:
私が特に便利に使っているのはメーターの切り替えですね。納品用の音源には規定されたレベルがあり、それにあわせてVUメーターは調整されているのですが、音楽やWeb環境向けコンテンツの場合フルビットまで使っている音源が多いので、通常のVUメーターの設定だと針が振り切れてしまうんですよ。それで何かしら抵抗を入れてVUメーターを調整しなきゃいけなかった。ですから今までメーターを合わせるのが手間だったんです。
その点「VS-665N」にはメーターのdB値をワンタッチでアジャストできるボタンがあって、例えばメーターを2dB下げたい場合は、「VU-2dB」ボタンを押すだけでOKです。スイッチは加算式になっていて、「VU-2dB」と「VU-6dB」を押せば8dB下がります。放送媒体ではこのレベル、YouTubeだとこのレベル、と瞬時にメーター設定を切り換えられて、これはとても便利です。

「VS-665N」の機能は用途に応じてプログラマブル、カスタマイズもできるんですね。

半澤氏:
そうなんです。要望を伝えると、すぐにプログラムを組んでもらえるのでとても助かります。

小守氏:
「MRX7-D」のエディターソフトウェアで1つ1つプログラムしますので、お使いになるMAエンジニアの方のご希望に応じて、さまざまな操作が設定できてボタン一つで動作できます。
今回も最後の調整の時に、スピーカーの音を調整したいというお話があったのでエディターソフトの「MTX-MRX Editor」でEQを立てて、そこで低音を調整して、比較調整用に「VS-665N」にはEQのバイパススイッチも急遽追加しました。

「MRX7-D」の音質に関してはいかがでしょうか。

小守氏:
社内でいつも使っているスピーカーで先代のモデルと比較しましたがかなり違いが出ました。前より音が滑らかになったような感じがしました。やはり解像度ですね。あと低音の濁りがなくなった感じがしたので、高域が伸びたんじゃないかなという印象です。

もし「MRX7-D」と「VS-665N」がなかったらかなり不便ですか。

半澤氏:
同じ作業ができなくなるわけではないんですが、それぞれの作業がいちいち面倒になるので作業効率が大幅に下がってしまうと思います。

小守氏:
私たちはスタジオの設計や施工も行っていますが「MRX7-D」がなかったら相当苦労したでしょうね。おそらく一番苦労するのがコミュニケーションのレベルマッチングだと思います。たとえばアナウンスブースとコントロールルームとの音声のやりとりや、コンテンツの音声をアナブースに送る音量などは、それぞれいろんな機械を使いますから、各機器の側で出力を調整しなくてはなりません。機材によっては出力レベルが動かせないものもあったりしてこれがけっこう厄介なんです。その点STUDIO KEではコミュニケーション機能を「MRX7-D」に集約しているので、ここで一括してレベルが調整でき、非常に便利です。

本日はお忙しい中ありがとうございました。

STUDIO KE
https://studioke.jp

株式会社レスターコミュニケーションズ
https://www.restarcc.com

タックシステム株式会社
https://tacsystem.jp/

製品情報

シグナルプロセッサー MRX7-D