【導入事例】SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 様 / ホテル / 山形

Japan/Yamagata Dec.2023

2018年に山形県鶴岡市にオープンした「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」は、世界的な建築家 坂 茂 氏によって設計された、まるで広大な水田に浮かんでいるかのような美しいホテルです。このたびホテル内のレストラン「MOON TERRASSE」の音響システムにヤマハのサーフェスマウントスピーカー「VXS5W」が導入されました。

その導入理由やレストランのBGMのコンセプトなどについて、「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」の料飲部マネージャー 丹羽 陽一 氏、音響システムの設計・施工やBGMを手がけたMood Media Japan株式会社の取締役 シニア・ミュージック・デザイナー 植木 美央 氏、同 テクニカル・ディレクター、ミュージック・デザイナー 柴崎 大和 氏、同 アカウント・エクゼクティブ 髙橋 嶺治 氏(リモート参加)に話をうかがいました。

(写真右端より)
SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 料飲部 マネージャー 丹羽 陽一 氏
Mood Media Japan株式会社 シニア・ミュージック・デザイナー 植木 美央 氏
同 テクニカル・ディレクター、ミュージック・デザイナー 柴崎 大和 氏
同 アカウント・エグゼクティブ 髙橋 嶺治 氏(リモート参加・別写真)

四季折々の庄内地方の美しい田園風景が楽しめるホテル

丹羽氏:
「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」はオープン5周年を迎え、現在6年目となります。もともとこの一帯は水田で他には何もない場所でした。その田園風景を生かした建築を、ということで建築家の坂 茂 氏に設計をお願いし、このホテルが完成しました。

当ホテルは、いわゆるタワー型ではなく、目線が水田に近い低層の客室で構成され、ぬくもりが感じられるような木造建築となっています。またガラス面を多く用いたことで、開放的で明るく、ホテルのどこからでも田園風景が味わえるのが特長です。

SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 料飲部 マネージャー 丹羽 陽一 氏

日本人の原風景なのでしょうか、水田を見ているととても落ち着きます。

丹羽氏:
私もそう感じます。多くのお客様からも「とても懐かしい感じがする」とおっしゃいます。今はちょうど稲穂の時期で、刈り取った稲の匂いが漂っていますが、春の田植えの時期は水を張った水田がキラキラと反射して美しいですし、夏は青々と育った力強い稲の緑が楽しめます。秋には豊かに実った稲を刈り、冬を迎えると一面の雪景色となります。このように四季折々の田園風景を身近に感じていただけるのが醍醐味です。アクセスに関しても羽田空港から庄内空港まで1時間、そして空港からバスで20分程度と思ったより気軽に来られますので、東京都内からのリピーターの方も多くいらっしゃいます。

ナチュラルなサウンドと上質なデザインのサーフェスマウントスピーカー「VXS5W」を6台設置

このたびMood Media Japan株式会社にレストランの音響システムとBGMを依頼されたのは、なにか課題があったからですか。

丹羽氏:
当ホテルのレストラン「MOON TERRASSE」は非常に天井が高く、しかも屋根が強度を高めた折板構造を採用していることもあり、席によっては音が小さく聞こえづらかったり、あるいは逆に音が大きすぎたり、音量のバラツキがありました。またBGMの選曲に関しても、これまではレストランのスタッフが選んだ曲を使っていましたが、選ぶ人間の音楽の好みに偏りがちでしたし、マッチしていないのでは、という曲もありました。

レストランでのお食事はホテルの滞在において非常に大切なものです。料理そのものはもちろんですが、照明や音楽を含めた空間全体でお客様に特別な体験を提供したいと考えています。ですからレストランの音と音楽のクオリティをグレードアップするためにMood Media Japanさんに音響システムとBGMの刷新をお願いしました。

依頼を受けたMood Media Japanとしては、まずどこを解決すべきだと考えましたか。

柴崎氏:
こちらレストランにはもともと円柱型の360度指向性スピーカーが2台ありましたが、この空間に対して360度指向性とはいえスピーカーの台数が少ない、というのが最初の印象でした。そしてレストランで実際に音を確認してみると確かにスピーカーの近くでは音量が大きすぎましたし、少し離れると音が届かない。そこでまず、レストランの空間全体に音を行き渡らせるサウンドシステムを構築すべきだと考えました。

Mood Media Japan株式会社 テクニカル・ディレクター、ミュージック・デザイナー 柴崎 大和 氏

具体的にはどのようなシステムを導入したのですか。

柴崎氏:
レストラン「MOON TERRASSE」は2階部分がテラスになっていて席数も多いメインのスペースです。そして席数は2階より少ないのですが、より水田に近い目線で食事が楽しめる1階があります。今回2階にはヤマハのサーフェスマウントスピーカー「VXS5W」を6台、そして1階にも「VXS5W」を2台設置しました。

「MOON TERRASSE」2階部分
「MOON TERRASSE」1階部分

ヤマハのサーフェスマウントスピーカー「VXS5W」を選定したのはどんな理由ですか。

柴崎氏:
非常に洗練された内装で、細部にまでデザイン意匠にこだわりを持つホテルですから、この内装に対して異質なスピーカーを置くことで雰囲気を壊すのは避けたいと考えました。そこでまずデザイン性が高く、上品で自らを主張しすぎないデザインのスピーカーを選定したところ、ヤマハのスピーカーにたどり着きました。もちろん音質についても、ナチュラルで高音質であることは他の案件でも多数採用していますのでよく知っていました。

設置場所に関してもできるだけスピーカーが目立たない場所を選びました。レストランの1階については、大きな窓から見える景色を邪魔しないよう、壁側2箇所の目立たない位置にスピーカーを設置しています。2階に関しては壁の上のエリアにルーバーがあり、意匠的にスピーカーを隠しやすく、音響的にもベストなポジションなので、そこに収めました。広い空間なので3つのエリアに分割し、それぞれに2台を設置しています。

1階に設置されたサーフェスマウントスピーカー「VXS5W」
レストランの2階のサーフェスマウントスピーカー「VXS5W」は見えない部分に設置

リピーターのお客様やスタッフからの反応も大きく、
空間に対する音の効果は絶大だと実感

次にBGMの選曲を担当された植木さんにうかがいます。レストラン「MOON TERRASSE」のBGMはどのようなコンセプトで選曲されたのでしょうか。

植木氏:
「SUIDEN TERRASSE」は建物自体が魅力的ですし、素材や色合いも含め細部まですべてが美しく整っている空間である、という印象を持ちました。そして、この素晴らしい空間に、音で積極的に印象づけや色づけすることはしたくないと考えました。ですからBGMは自らを主張するタイプの音楽ではなく「ホテルから眺める水田の風景に寄り添うもの」としたいと考えました。具体的には朝食からランチまで、ランチとカフェの時間帯、ディナーの時間帯、それと水田に映る夕陽が大変素晴らしいと聞きましたので、マジックアワー、つまり夕暮れ時の音楽を加え、4種類のプレイリストを作成しました。

Mood Media Japan株式会社 シニア・ミュージック・デザイナー 植木 美央 氏

具体的には、それぞれの時間帯でどのような音楽を選んだのですか。

植木氏:
以前のBGMはボーカルものも多かったようですが、今回はインストゥルメンタルに統一しています。ボーカルものは、歌詞が日本語でなくても頭が働いてしまうというか、印象がつきやすいのです。曲調としてはピアノやギターなど、アコースティック系の楽器で演奏された曲を多く選びました。

ランチタイムまでの時間は、小鳥のさえずりや虫の音が似合うような軽やかな曲で、ドラムが入った楽曲は外し、ソロかデュオ、多くても3人くらいまでの演奏者による音楽をセレクトしています。逆に夜はドラムやベースを加えた厚みのある曲を多く選びました。夜はお客様の会話が盛り上がりますので、より躍動感のある曲を選んでいます。

選曲が最も難しかったのは夕暮れの時間の音楽です。夕暮れというと、物思いにふけるようなシーンを想像しますが、ホテル側から「しみじみした感じにはしたくない」という意向がありました。私もここで夕暮れの水田を見たとき、その風景の雄大さや穏やかさによって、心の中で何かが湧き上がるような感覚がありましたので、そうした印象に合うような、広がり感のある、長いトーンの音楽を選曲しました。

アカウント・エクゼクティブの髙橋さんは、今回の「SUIDEN TERRASSE」の音響に関してどんなところにこだわったのでしょうか。

髙橋氏:
柴崎と同じく、やはり「SUIDEN TERRASSE」という素晴らしい意匠をできるかぎり崩さないということにこだわりました。レストランの内装にはガラスや鏡が使われているので、見えないところに設置したつもりでも、見えてしまうこともありました。音はよく聴こえるけれど、スピーカーはどこにあるのかわからない、そしてできるだけ音が風景の邪魔にならない。そのような設置を、柴崎とともに現地で細かく調整・確認しながら設置しました。その結果、ぼーっと田園風景を見ていると、そこに少しだけ音楽が体に入っていくような、そんな安らぎの空間ができあがったと思います。

Mood Media Japan株式会社 アカウント・エグゼクティブ 髙橋 嶺治 氏(リモート参加)

丹羽さん、音響システムが変わって音の印象は変わりましたか。

丹羽氏:
おおいに変わりました。最初ヤマハのスピーカーを見たとき「ちょっと小さいな」と思ったのですが、実際に音を出してみると小さいのにしっかりとした音が出るので驚きました。特に1階にはあの広い空間に2台しか置いていないのに、まんべんなく音が届いて驚きました。

柴崎氏:
ヤマハのサーフェスマウントスピーカー「VXS5W」は指向角度が120°× 120°と非常に広範囲に音を届けられるのも特長で、少ない台数で広いエリアをカバーすることができます。またヤマハはナチュラルな音色なので木を多用した空間にもフィットしますし、音質やデザイン面だけでなくコストパフォーマンスにも優れているので非常に使いやすいです。

新しいBGMの運用を始めて、スタッフやお客様から何か反応はありましたか。

丹羽氏:
スタッフの中にデザイン関係に携わっていた感度の良い者がいるのですが、新しいプレイリストを流したらすぐに「音楽、どこかに頼んだのですか?」と言われました。Mood Media Japanさんに頼んだと話したら「やっぱり。すごく良いですね」と言っていました。またリピーターのお客様からも「音楽、変わったね」と声を掛けられます。そのお客様の表情がすごく明るい感じなので、空間に対する音の効果は絶大だと実感しました。Mood Media Japanさんにお願いしてよかったです。

本日はお忙しい中ありがとうございました。

SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE
https://suiden-terrasse.com/

VXS Series

上質な音質と洗練されたデザインを兼ね備える、商業空間用サーフェスマウントスピーカー。