【導入事例】アップスタート 様 / PA会社 / 熊本県熊本市
Japan/Kumamoto Aug.2023
2000年に創業したアップスタート様は、イベントやコンサートの音響を手がける熊本のPA会社です。代表の田上敏浩氏自らミックスを担当するのはもちろんのこと、来熊したオペレーターのサポート業務も行い、熊本の複合施設『グリーンランドリゾート株式会社』の音響管理も長年手がけています。
そんなアップスタート様は2020年9月、同社初のラインアレイシステムとしてGEO M10システムを4/2対向の構成で導入。規模の大きなコンサートから、小規模なスクールコンサートに至るまで、様々な現場で活用しています。
数あるスピーカーの中からGEO M10システムを選定した理由とその使用感について、代表の田上敏浩氏にお話を伺いました。
はじめにアップスタートさんの沿革と業務内容について、簡単にご紹介いただけますでしょうか。
田上氏:
アップスタートという屋号を付けていますが、完全にフリーでやっている熊本の音響屋です。もちろん、一人ではこなせない現場もありますので、そういったときは外部の人に手伝ってもらっています。アップスタートという屋号で始めて今年で23年目になるのですが、以前はヤマハさんの導入事例記事でも取り上げられていた有限会社ショーアップさんに在籍していました。ずっと一人でやっていたんですけど、ショーアップさんから“手伝ってもらえないか”とお誘いいただき、5年くらい在籍していたのではないかと思います。
今はまた一人で、夏祭りやパーティーなどのイベントの音響を担当したり、あるいは東京からアーティストと一緒に来られたオペレーターさんを機材込みでサポートしたりしています。また、熊本に『グリーンランドリゾート株式会社』という複合施設があるのですが、そこの遊園地の園内放送の音響管理も約20年担当しています。
同業他社と比較したアップスタートさんの強みというと?
田上氏:
何ですかね……。依頼はできるだけ断らないということでしょうか(笑)。依頼があったらすぐに動いて、フットワークよく対応する。早朝だろうが深夜だろうが、電話があって動ける状況であればすぐに現場に向かいますし、自分ではこのフットワークの軽さが評価されているのではないかと思っています。大きい会社さんですと、なかなか柔軟に対応できなかったりしますし、一人でやっていることの強みを活かして、お客さんからの要望にはできるだけスピーディーに応えようと。
音響屋は、“こうじゃなきゃダメ”と頑固な人も少なくないんですけど(笑)、私は要望にはできるだけ耳を傾けて、お客さんが望んでいることを叶えるというのを第一に考えています。当日になって、事前の打ち合わせでは無かった要望が出たりもするのですが、“そんなの聞いてないですよ~”とは言わないように心がけてますね(笑)。
アップスタートさんには、GEO M10システムをメインスピーカーとしてご活用いただいています。その導入の経緯をおしえていただけますか。
田上氏:
大きな現場はラインアレイをレンタルしてこなしていたのですが、そのレンタル料が思いのほかかさんでいたんです。年間200万円くらいかかっていたので、毎年確定申告の時期はげんなりしていました(笑)。これだけレンタル料を支払っているのであれば、いっそのこと導入してしまって、固定資産として償却していった方がいいのではないかなと。自分の機材であれば、気を遣わずに使うことができますしね。ちょうどコロナ禍で私のような個人事業主も融資を受けやすくなっていたので、思い切って導入したという感じです。
ラインアレイの選択肢は他にもたくさんあったと思うのですが、NEXOのGEO M10を選ばれたのはなぜですか?
田上氏:
ショーアップさんに在籍していた時代にPS15を導入してもらい、また野外の大きな現場ではAlpha Seriesを借りて使っていたのですが、“NEXOサウンド”には凄く良い印象があったんです。音色にパワーがあって、分離が良く、卓のフェーダーを上げたら音がしっかり付いてくる。音が“ダレない”というか、バンドの中で埋もれているボーカルも、NEXOのスピーカーはフェーダーを上げればしっかり前に出てくれるんです。ちょうどGEO M10が出て間もない時期だったこともあり、これはもうNEXOを導入するしかないだろうと。
ほとんど迷わずに導入されたと。
田上氏:
そうですね。でも導入前に、あらためて聴いてみたいと思い、ヤマハさんにお願いして試聴の機会を作っていただきました。ショーアップでPS15を導入する際にGEO S12と比較試聴したのですが、新しいGEO M10も同じような音なのか気になりましたからね。大津町にあるホールを借り、フリーでやっている音響屋さんとかにも来てもらって、一緒に聴いてもらったんです。
試聴会でお借りしたのは、3/2対向のシステムだったのですが、やっぱり凄く良いなと思いましたね。リファレンスのCDだけでなくアコースティック楽器でも聴いてみたんですけど、パワーは十分ですし、音の分離が本当に素晴らしい。それと、ボーカルの声の太さというか振れ幅が、低域が8インチや6.5インチのシステムとは違って、それで10インチにはこだわりたいなと思いました。
導入されたシステムの構成をおしえてください。
田上氏:
GEO M1012が8台、MSUB15が4台、NXAMP4x2MK2が2台の4/2対向のシステムです。この構成ですと、1台のハイエースに積み込むことができるのがいいですね(笑)。3/2対向くらいであれば、1人でもセッティングできてしまいます。
約3年間現場で使用されて、GEO M10についてどのような感想をお持ちですか。
田上氏:
めちゃくちゃ良いですね。会場に合わせてチューニングはするんですけど、スピーカー自体のチューニングが出来上がっているというか、CDのような音と言ったら語弊がありますけど、全帯域に渡ってバランスよく聴こえるスピーカーだと思います。それと本当にボーカルが明瞭。声がしっかり前に出てくる感じで、アーティストからも“歌詞がしっかり聞き取れてお客さんからとても好評だった”という話を聞いたことがあります。ボーカルがドンと前に出てくるんですよね。
もちろん楽器の音も良くて、私は必ずステージに上って生の音とスピーカーから出ている音を聞き比べるんですが、ドラムとか凄く良いですよ。キックのニュアンスとかしっかり拾ってくれて。それと使い勝手の良さも個人的には気に入っているポイントです。ほぼほぼ4/2対向の構成で使うことが多いんですけど、スクールコンサートなどの小さな現場では2/1対向の構成で使用したり。お金があればサブウーファーを追加したいなとは思っているんですが(笑)、現状のシステム構成でも満足しています。
セッティングのしやすさに関してはいかがですか?
田上氏:
他社のラインアレイと比べると、格段にセッティングしやすいですね。ガチャっと載せて、後ろを持ち上げて合わせるだけで完了ですから。重量もそんなに重くはないので、積み込みも一人でやっています。筋トレに行ったと思えば軽いものですね(笑)。
今回お邪魔させていただいたイベントについておしえてください。
田上氏:
『菊陽町夏祭り』という毎年開催されているイベントで、今年はメインゲストとして荻野目洋子さんが出演します。イベント自体は二部構成になっていて、一部は盆踊りや民謡のステージ、二部は地元のアーティストや福岡のサックス奏者が出演するという感じですね。会場の『菊陽杉並木公園さんさん』は凄く広い公園で、多分本番では2万人くらいの人が来られるのではないかと思います。
今回はどんなシステムを組まれたのですか?
田上氏:
屋外のイベントなので普段よりもブーストさせたいと思い、佐賀にあるPA会社のListenさんとヤマハさんに機材をお借りし、6/4対向のシステムを組みました。会場の中央、ステージから約60m離れた場所にやぐらがあるのですが、そこまで音を届かせたいと思ったんです。コンフィギュレーション・ソフトウェアのNS-1を使って、やぐらの位置で大体100dBは出るようにシミュレーションして。
実際に聴いてみたところ、100mくらい離れた場所でもステージで行われていることが何となく分かりますし、おおよそシミュレーションどおりの結果が得られました。これから秋口にかけていろいろな現場が控えているので、今回の経験が役に立つのではないかと思います。
これまでもフライングで使用されたことはあったのですか?
田上氏:
いいえ、グラウンドスタックでしか使ったことがなく、今回の現場が初めてのフライングになります。グラウンドスタックと比べると、フライングは音がすっきりしていて、当然ですが遠くまで音が届くような印象がありますね。ただ、これまではすべてのキャビネットを連結して積んでいたわけですが、フライングではサブが離れているので、それが全体のサウンドにどう影響するか、これから入念にチェックしようと思っています(注:取材は本番前に行われました)。
熊本と佐賀は近いというわけではありませんが、同じ九州にGEO M10を所有するPA会社があったのはラッキーでしたね。
田上氏:
本当にそうですね。でもListenさんと面識があったわけではないんです。ヤマハさんから、“佐賀にGEO M10をお持ちのPA会社がある”とうかがって、思い切って電話してみたんですよ……。“今度大きなイベントがあるんですが、GEO M10を貸していただけませんでしょうか”って。そうしたらご快諾いただいて、今回の現場をこなすことができました。近いうちに直接お会いしてお礼をしたいと思っています。
最後に、GEO M10の使用感をあらためてお聞かせください。
田上氏:
本当に導入して良かったなと思っています。パワーがあって、ボーカルが前に出てくる。私は、うるさい系のロックを手がけることはほとんどないんですけど、そういう音楽にも十分に対応できると思います。人間の声だけでなく、ギターの音色もとても良いですしね。
それと私たち地方のPA会社にとっては、メーカーさんのサポート体制ってとても重要なんですよ。その点ヤマハさんは、熊本まで何度も来てくださいましたし、コンフィギュレーション・ソフトウェアのNS-1についてもオンラインで説明してくださって、凄く信頼できますよね。
現状、とても満足していますが、欲を言えばサブウーファーをもう少し追加したいですね(笑)。それといずれはヤマハさんの卓を導入して、Danteでシステムを組みたいなと。そのあたりの話をListenさんにお邪魔して訊きたいと思っているんです。