【音像制御システム「AFC Image」使用事例レポート】ユンナのデビュー20周年を迎えたアニバーサリーコンサートを「AFC Image」とNEXO「STM」がサポート / ソウル

2024年2月初旬、韓国のシンガーソングライター「ユンナ」がデビュー20周年を迎え、ソウルのKSPOドームでアニバーサリーコンサートが開催されました。1988年夏季オリンピックの体操競技場でもあるKSPOドームで行われた本コンサートは、その節目にふさわしい特別な音響体験を届けたいという主催者の意向で、ヤマハ音像制御システム「AFC Image」とNEXO「STMシリーズ」が採用され、10,000人以上の収容人数を持つ大規模ライブイベントにてイマーシブなサウンド体験を多くの観客に届けました。

コンサートのPAを担当した韓国のSRカンパニーWay Audio社は、このコンサートで観客に特別な体験を届けるために、KSPOドームでのライブイベントのミキシングと、イマーシブオーディオシステムの制作およびミキシングの経験を持つスヨン・リー氏に連絡を取りました。

まず、このイベントには2つの大きな音響的課題がありました。1つ目は、KSPOドームの大空間特有の音響の難しさです。このドームはその大きさ、円形の形状、そして長い残響時間やロングパスエコーのために、音響的に難しいとされています。

2つ目の課題は、大きな円形の空間において、ステージの前に180度以上の角度で観客席が配置されるため、従来のステレオPAシステムでは最も近いスピーカーに音が定位してしまうことで定位をコントロールできず、FOHエンジニアが意図した音源の位置を、観客が認識することが難しいという点です。

このステージは、リードボーカル、ピアノ、ギターを担当するユンナを中心に、さらに2人のギタリスト、2人のキーボーディスト、ベース、ドラム、そして2人のバックボーカリストが加わった構成でした。スヨン・リー氏によると、これまでのKSPOドームでのコンサートでは、音が不明瞭で、音源が二重に聞こえることがありました。そのため、この特別なショーで期待される体験を提供するためには、新しい解決策が必要でした。

難しい音響的課題を解決したヤマハイマーシブオーディオシステム

イマーシブオーディオエンジニアであり、元SoundkoreaENG社の最高技術責任者でもあるスヨン・リー氏は、イマーシブオーディオシステムを使用することで、各楽器やボーカルの音の分離と明瞭性を向上させ、音質をクリアにし、観客がより楽しめる体験を提供できると考えました。

まずスヨン・リー氏は、メインスピーカーとしてNEXO「STMシリーズ」を合計9アレイ使用したシステムを設計しました。中央に5つのアレイを配置し、それぞれ9台のメインモジュール「STM M46」と9台のベースモジュール「STM B112」によるダブルカラム、ダウンフィルに2台のオムニモジュール「STM M28」を含む構成にしました。また、外側には4つのアレイを配置し、それぞれ12台のオムニモジュール「STM M28」で構成しました。

また、低音域の指向性を正確にコントロールするため、合計36台のサブウーファー「STM S118」を12台ずつ3つのクラスターに分けてステージ上方にエンドファイア構成で配置しました。さらに、ステージ前方にはフロントフィルスピーカーとして「STM M28」と「STM S118」をグラウンドスタックで配置しました。

全てのオブジェクト入力信号は音像制御システム「AFC Image」で処理し、その後段の出力ルーティングにはデジタルミキシングシステム「RIVAGE PM5」を使用しました。冗長性を確保するため、メインとバックアップのAFCプロセッサーの出力を「RIVAGE PM5」のA/B入力に割り当て、万が一のトラブルが発生した場合には、USER DEFINED KEYSを使って瞬時にA/B入力を切り替えられるようにしました。

「AFC Image」のサウンドオブジェクトは演奏者の位置に応じて配置し、オブジェクトサイズは音の定位と分布がバランスよく聞こえるように細心の注意を払って調整しました。「AFC Image」で処理した出力信号がアサインされた9つのNEXOメインアレイシステムは、適切に配置・調整されたサウンドオブジェクトを精確に再生し、FOHエンジニアが意図した定位とミックスバランスを実現、多くの観客に対し、没入できるイマーシブサウンドを提供しました。

また、カバレッジが不足する外側の2つのアレイとフロントフィルスピーカーにはモノミックスをアサイン、ディレイ調整を行うことで十分な音圧分布とカバレッジを確保しました。

ドラムのイマーシブミキシングにおいては、個々のドラムマイクの音が二重に聞こえないようステレオミックスを作り、「AFC Image」システムで再生することで明瞭さを確保しました。

ユンナの楽曲はさまざまなスタイルやテンポを特徴としていますが、アップテンポの曲でリズム楽器を広い範囲にオブジェクト配置すると、それぞれの音が重なって二重に聞こえることがありました。これを避けるためにスヨン・リー氏は、アップテンポの曲ではオブジェクトをステージの中央に寄せることで一体感あるサウンドを、スローテンポの曲ではより広く配置することで明瞭度の高いサウンドを実現するなど、さまざまな楽曲の特徴に柔軟に対応しました。また、楽器のソロ演奏時のオペレーションではその都度対象のサウンドオブジェクトを積極的に移動させることでソロ演奏を強調しました。

スヨン・リー氏:

「このコンサートはこれまでのKSPOドームでのライブショーとは全く異なるサウンドでした。NEXOシステムと「AFC Image」によって、個々の楽器やボーカルの音の分離と明瞭度が向上し、意図した定位とミックスのバランスが実現され、大規模な席数を持つ会場全体で音楽がよりクリアに聞こえました。コンサートの後、この思い出深いライブショーの音質に大変満足しているというSNSの投稿が多数ありました。」

サウンドチーム:(左から)Dai Hashimoto, Suyong Lee, Andrew Kim, Young Cheol Kim, A Ram Nam

Sound System: Way Audio Co., Ltd. and STM partners Mico Sound, Master Sound

General Sound Director: Andrew Kim

FOH Engineer: Young Cheol Kim

Monitor Engineer: Hyeung Gu Kim

System Design: Suyong Lee, Yun Cheol Lee, A Ram Nam. Way Audio Co., Ltd.

Immersive Design, Processing Operator: Suyong Lee (AFC Certified Designer)

Immersive Technical Support: Dai Hashimoto (Yamaha Japan)

ソウル, 韓国

AFC

AFC(アクティブフィールドコントロール)は、あらゆる空間において、音を自在にコントロールし最適な音環境を創り出すことができるヤマハのイマーシブオーディオソリューションです。