【STAGEPAS 600BT / DBR10使用レポート】明和電機★UMEツアー2025@ひらしん平塚文化芸術ホール / 神奈川
Japan/Kanagawa Jul. 2025
オタマトーンなどユニークな楽器の発明や自作楽器での自動演奏などで知られる明和電機が、47都道府県をめぐる全国ツアー「明和電機★UMEツアー2025」を行いました。社長の土佐信道氏がたった一人で楽器やPA機器を車で運び、セットアップから演奏、撤収まで行う過酷なツアーでした。
今回のツアーのPA機器として、ハイパワー・高音質なポータブルPAシステム「STAGEPAS 600BT」とパワードスピーカー「DBR10」を選ばれた理由や感想などについてお話しをうかがいました。
すべての楽器とPA機器を1台の車に積んで行うライブツアー
「明和電機★UMEツアー2025」の概要について教えてください。
土佐氏:
明和電機のライブは規模にあわせて「松(MATSU)」「竹(TAKE)」「梅(UME)」に分かれ、「明和電機★UMEツアー」ではドラムやベース、ギターなどの自動伴奏楽器やロボットダンサーなどをスーツケース2つにつめ、社長一人で運んでパフォーマンスを行います。僕は自分が作ってきた作品を全部持ってるという特殊なアーティストなんですが、楽器を小型化して効率的に収納するUME BOXが完成し、自分の音楽人生がコンパクトな2つの箱に納まった時に、47都道府県を回ろうとひらめきました。
そうなると、スピーカーやミキサーなどのPA機器も一緒に車に積んで、自分で運ばなければならない。それならば、もともと「DBR10」をライブ用のスピーカーとして使っていたので、PA機器についてはすべてヤマハさんの機材に絞り込もうと「STAGEPAS 600BT」も採用することになりました。
「STAGEPAS 600BT」採用の決め手はなんだったのですか。
土佐氏:
PA機器を選ぶにあたっては、念のため明和電機の公演でPAを担当している方に相談しました。すると、スピーカーだけでなく、ミキサーも予備を持っていった方がいいと言われました。
とはいえ、すでに車には予備の機材が積めるスペースがない。でも、「STAGEPAS 600BT」なら、スピーカーにミキサーが収納されています。これならば、通常はモニタースピーカーとして使い、機器にトラブルがあったら予備のスピーカーだけでなくミキサーとしても使える。そう思って車に積んでみたら、見事に荷台の空きスペースにぴったり納まったんです。
「DBR10」を選んだ理由も教えてください。
土佐氏:
日本は見事な“箱物行政”で、どんな市町村にも必ず300人規模の人が入る会場があります。今回のツアーでは、そういった会場での使用に耐えうる小型スピーカーを探しました。ツアーの前に東京で同規模のホールを借りて、各社のスピーカ−をいろいろと試してみたのですが、やはり出力が十分でバランスの良さを感じるのは「DBR10」しかないという結論になりました。
ライブ中のトラブルを救ってくれた「STAGEPAS 600BT」
実際にライブツアーで「STAGEPAS 600BT」と「DBR10」を使用した感想はいかがでしたか。
土佐氏:
実は、今回のツアーで実際にソフトウェアミキサーがフリーズしたことがあったんです。大分県立美術館のアトリウムでライブをやった時に、至近距離でお客さんに囲まれました。撮影OKのライブだったので、皆さんスマートフォンでばんばん写真や動画を撮っていたのですが、その電波でミキサーとして使っていたタブレットがフリーズしました。リハーサルの時はお客さんがいないから問題なく動いていたので、そんな事態は想定してなかったんです。
その時に、急遽「STAGEPAS 600BT」のミキサーに各楽器をつなぎ直しました。有線なので電波の影響を受けることもなく、出力も十分あるので会場にきちんと音が届き、無事最後まで公演を続けることができました。
他にも「STAGEPAS 600BT」ならではの使い方がありましたか。
土佐氏:
開場から開演までの間に会場でBGMを流したのですが、「STAGEPAS 600BT」はBluetoothスピーカーにもなるので、スマートフォンに入れていたプレイリストを再生しました。開演すると自分でボリュームを下げ、終演後にまた自分でボリュームを上げるという演出ができた点も、「STAGEPAS 600BT」ならではの便利な使い方でしたね。
いずれにしても、「STAGEPAS 600BT」と「DBR10」の組み合わせに関しては、PA機器としてはなんの問題もありません。一方で、今回のツアーに限らず明和電機で作られた楽器はすべてMIDI信号を100ボルトに変換するインターフェースを使って、MIDIによるON/OFFでコントールされています。当初はワイヤレスのMIDIを使うことで、ケーブルの数を減らそうと思ったのですが、どうしても遅延があったので今は全て有線にしています。
これはあくまでも希望ですが、将来はヤマハさんの技術を使って、遅延のないワイヤレスのMIDIシステムを作っていただければ助かるのですが(笑)
追い込まれた時ほど創造性を発揮できる
ツアーでは演奏後の撤収も、お客さんに公開していますね。
土佐氏:
これも、「明和電機★UMEツアー」ならではのエンターテイメントだと思っています。撤収の時間も最初は90分くらいかかっていたのですが、今は40分くらいで片付くようになりました。ポイントはいくつかあるのですが、その一つとしては楽器や道具を工夫することで、次々に工程を省略していきました。
実は、ツアーの途中で行った台湾公演で、舞台から転落して歩けなくなったことがありました。それで、いかに歩数を減らして片付けるかを考えることになり、ワゴンの上に物を置いて運ぶようになったら30分くらい短くなったんです。
あとは、地方に行くほど大きなDIYショップやホームセンターなどがあるので、ツアーの途中でもオフの時にそういうところで部品や道具を買ったりしています。そうやって、ツアー中でもいろいろと改良を繰り返しながら、前に進んでいます。
土佐さんのそういったいろんなひらめきが、結成から30年を越える明和電機を支えているのですね。
土佐氏:
結局、なにかトラブルが起きた時こそ、人間は創造性を発揮するものだと思っています。例えば、以前も野外でライブを行う予定だったのが、雨が降ってきたので中止になる可能性がありました。すべての楽器が100ボルトで制御されているので、危険だったからです。
その際には、楽器や機材を全部車の中で組んで演奏することをひらめき、ライブを成功させました。さらに、このまま車の中で演奏しながら走ることもできる、というアイデアも浮かんだりしました(笑)
今回のツアーでいろんなひらめきを実現できたのも、ヤマハさんの製品のおかげだと感じています。