【導入事例】Education & Live Spot 音浸-otohita / ライブスペース / 大阪
Japan/Osaka Oct. 2025
大阪淀屋橋にある「Education & Live Spot 音浸-otohita」は、エレクトーンやピアノを気軽に演奏できる場であり、練習やレッスン、また音楽とお酒が楽しめるライブスペースでもあります。
このたびotohitaにヤマハのポータブルPAシステム「STAGEPAS 1K mkII」、パワードスピーカー「DXL1K」、デジタルミキシングコンソール「DM3」が導入されました。otohitaに込めた想いや機材の選定理由などを主宰の藤村 亘 氏にうかがいました。
「Education & Live Spot 音浸-otohita」(以下otohita)とはどのようなスペースか、設立の経緯を含めて教えてください。
藤村氏:
otohita(オトヒタ)は、2025年6月6日に大阪のビジネス街、淀屋橋にオープンした音楽スペースです。私自身、長年にわたりエレクトーンの演奏活動と教育活動の両方に携わってきました。その経験の中で、常に抱いていたのが「ヤマハの教室という枠組みの外で、エレクトーンが常設されている場所を作りたい」という思いでした。
またここにはヤマハのグランドピアノ「S3X」も常設されています。エレクトーンに限らず、ピアノを愛する方々にも、もっと気軽に、そして自由に演奏を楽しんでいただきたい。そうした想いも含め、昼間は練習やレッスンができ、夜はお酒と音楽に浸れる場所として、otohitaを作りました。店名のotohitaは「音に浸る」という意味の造語です。これは私がライブ活動の際に使っていた名称ですが、レッスンに来る方もライブを聴く方も、ここでは日常を忘れて幸せな「音に浸る」ひとときであってほしい、そんな願いを込めています。
「Education」の面では、どのような活動をされているのでしょうか。
藤村氏:
レッスンも行っていますしリハーサルや練習用に貸し出しもしています。私が特に力を入れているのはコンクールに挑戦する子たちのサポートです。エレクトーンのコンクールは、西日本エリアの予選やファイナルが大阪で開催されることが多いのですが、九州などの遠方から来る子たちが大阪で練習場所を確保するのって大変なんです。地方の子も都会の子も、平等な環境で思い切り練習し、本番で力を発揮してほしい。
そうした思いから、コンクールで大阪に来る子たちにはotohitaを練習場所として開放しています。「ここで練習できたから本番も頑張れた」、そう思ってもらえる場所でありたいと思っています。
もう一つのコンセプトである「Live」についても教えてください。
藤村氏:
otohitaは演奏を聴くだけでなく、お客様が主役になれる参加型のイベントを積極的に行っています。ここはエレクトーンとピアノがメインではありますが、他の楽器を持ち込んでの練習やライブも可能です。場所柄、音量の大きい金管楽器やドラムセットなどは厳しいのですが、声楽や木管楽器、弦楽器などはOKとしています。
そうした中で、特に好評をいただいている主催イベントがいくつかあります。1つ目が「エレクトーン弾き倒したろう会」です。参加者が順番にエレクトーンを弾きまくるイベントなのですが、これが大人気です。小学生から60代くらいの、エレクトーンに愛着ある方々が「弾ける場所」を求めて殺到し、定員を超えて補助椅子を出すほどの熱気です。
もうひとつは「otohita Piano Sonic」というピアノイベントです。グランドピアノ「S3X」の素晴らしい音色を生かし、ピアノ好きが朝から晩まで自由に演奏を披露し合うフェスのような企画です。その時はピアノの生音だけでなく、他の楽器とのアンサンブルや、バッキングのオケの再生などでPAシステムを活用しています。
またリスニングイベントとして「THE BIG」があります。これは自分の推し曲を、いい音で、大音量で聴く企画。参加者が自分のスマートフォンに入っている「推し曲」を持ち寄り、otohitaのPAシステムを使って爆音で再生しながら、みんなでお酒を飲みます。今の若い世代は、音楽をイヤホンやスマホのスピーカーで聴くことが多く、空気を振動させて全身で音を浴びる体験が減っています。でもここで大音量で聴くと「この曲のベースライン、実はこんな動きをしていたんだ!」などの新しい発見があり、音楽の楽しみ方が広がります。
ヤマハのポータブルPAシステム「STAGEPAS 1K mkII」とパワードスピーカー「DXL1K」を導入した理由を教えてください。
藤村氏:
otohitaのオープンにあたって、信頼しているヤマハの担当者の方に相談をしました。そこで私が提示した条件は大きく3つありました。
第1は「エレクトーンの音を、ヤマハのスピーカーで鳴らす」です。本来この広さならばエレクトーン本体のスピーカーで十分なのですが、コンクールでの演奏は必ずPAスピーカーを通して拡声されます。エレクトーンの演奏ではリバーブやボリュームの設定は非常に重要で、奏者は音の質感に敏感です。だからこそ可能な限り本番に近い音響環境を作り、本番と同じ感覚で音作りをチェックできるようにしてあげたい、という強い思いがありました。
次に重要だったのがスペースです。otohitaは決して広い空間ではありません。ここに大きく無骨なスピーカーを置いて圧迫感が出るのは避けたい。それでコンパクトで、かつデザイン的にもこの空間に馴染む機材を希望しました。そしてもう一つがBluetooth。イベントなどで音源を再生する際、CDプレーヤーなどの機材を増やさずに、スマホから手軽に高音質で音を飛ばせることは必須でした。
これらの要望をすべて満たす機材が「STAGEPAS 1K mkII」でした。「これしかない」と即決でしたね。あわせて導入した「DXL1K」は「STAGEPAS 1K mkII」と組み合わせてステレオ再生を行うための拡張用スピーカーとして使っています。
「STAGEPAS 1K mkII」を使ってみて、音の印象はいかがですか
藤村氏:
エレクトーンを弾きながら聴いた印象は「めちゃくちゃ自然」でした。普通のLRのスピーカーだと音が直線的に飛んできて体に突き刺さるような感覚があるのですが、「STAGEPAS 1K mkII」と「DXL1K」のサウンドは空間全体へ柔らかく拡散して、音に包み込まれるような感覚です。
またオーディオの再生機としても素晴らしいです。ボーカル音源を再生すると、スピーカーから鳴っているというより、まるでその場で歌っているかのような生々しさを感じました。私は「HIATUS KAIYOTE(ハイエイタス·カイヨーテ)」というオーストラリアのバンドが好きなのですが、彼らの曲は音像やパンニングにこだわっていて、ここで聴くと音が左右に行き交うのが鮮明に分かります。この臨場感と包容力のあるサウンドは、お客様からも大変好評です。
デジタルミキシングコンソール「DM3」は、どんな目的で導入したのですか。
藤村氏:
将来のレコーディングへの対応を見据えて導入しました。現在はMCマイクやエレクトーンの接続が主ですが、いずれは「DM3」でピアノの録音をしたり、持ち込み機材が多いライブのミキシングで使う予定です。
最後に今後otohitaでやってみたいことがあれば教えてください。
藤村氏:
将来的には、このビルに入っているレストランや他のテナントと協力して、ビル全体で音楽イベントを開催するなどで、淀屋橋の街の人に音楽を届けたいという思いがあります。音楽を通じて、地域や、働く人々に貢献し、「淀屋橋にこんな面白いビルがある」となれば嬉しいですね。僕を育ててくれたヤマハに恩返しをする意味でも、エレクトーンがもっと外の世界に広がり、老若男女が「音に浸る」ことができる場所になるよう、otohitaを育てていきたいと思います。
本日はありがとうございました。
「Education & Live Spot 音浸-otohita」公式インスタグラム
https://www.instagram.com/educationandlivespot_otohita/