【導入事例】株式会社サウンドメソッド 様 / SRカンパニー / 神奈川

Japan/Kanagawa Jun. 2025

株式会社サウンドメソッドがNEXO「GEO M12」を導入

株式会社サウンドメソッド(神奈川県横浜市)は、PAエンジニアの宮下章氏が2011年に設立したPA会社です。アコースティック系のコンサートを中心に、さまざまなイベントの音響を手がけている同社は2019年、NEXO「GEO M12」を導入しました。「GEO M12」は、国内のPA会社としては最も早い導入例であり、これまで約6年にわたってメインスピーカーとしてフル活用されています。

数あるラインアレイの中から「GEO M12」を選定された理由と、現場での使用感について、株式会社サウンドメソッド代表取締役の宮下章氏と、同社所属のサウンドエンジニアである岩澤和生氏にお話を伺いました。


2011年設立のPA会社、サウンドメソッド

サウンドメソッド様のこれまでの歩みについて、簡単にご紹介いただけますか。

宮下氏:
弊社は僕が2011年に設立した会社になります。その前は別の会社でいろいろな仕事を手がけていたのですが、独立して会社を設立した感じですね。フリーのエンジニアとしてやっていくことも考えたんですけど、自分の子供がまだまだお金がかかる時期だったこともあり(笑)、会社にしてちゃんとやってみようと思ったんです。岩澤に声をかけたら、一緒にやると言ってくれたので。

業務内容としては今は完全に音響だけですね。前の会社では社内にスタジオがあったので、劇伴やインディーズのレコーディングなんかも手がけていたんですよ。でも、この会社はスタッフの数も僕を入れて3人と少ないですし、あまり手を広げることなく、音響専門でやっています。

株式会社サウンドメソッド 代表取締役 宮下 章 氏

普段はどんな現場が多いのですか?

宮下氏:
ウチはもう何でもやってますね。本当は“深く狭く”の方がいいのかもしれませんが、僕は若い頃から、とにかく何でもやってみるという気持ちで仕事をしてきましたので。

岩澤氏:
来週からは芝居の旅に出ますし、本当にいろいろやっているんですけど、強いて言うならアコースティック楽器の現場が多いと思います。音楽ものなら、ほぼ生ピアノで、エレピやシンセサイザーがある現場はほとんどないですね。クラシックコンサートのSRも手がけています。

宮下氏:
あとはクラシックバレエやコンテンポラリーダンス、フラメンコ、アルゼンチンタンゴとか。前の会社でそういう現場があり、できる人がいなかったので、勉強して手がけるようになったんですよ。そこで舞台監督とか、いろいろな人と知り合いになって、外国の招聘ものやオペラなんかもかなり手がけましたね。そういった仕事をサウンドメソッドを立ち上げてからも引き継いでいて、東日本大震災以降は減ってしまったんですけど、今もたまに手がけています。そういう仕事は、大きなPA会社でも普段から手がけていないと難しいと思いますし、クラシックバレエやコンテンポラリーダンスにも対応できるというのは、弊社の強みなのではないかと思っています。

比較的大きなPA会社でもなかなかそういう仕事ができる人は少ないと言う話を聞いた事があります。たとえ芝居やミュージカルを手がけていたとしても、ダンスものは経験がないと難しいと。

株式会社サウンドメソッド サウンドエンジニア 岩澤 和生 氏

クラシックバレエの現場特有のマナーとかもありそうですしね。

宮下氏:
そうなんです。きっかけというか、約束事が多いんですよ。クラシックバレエだったら、ダンサーさんがこういうポーズをしたら音を出すといった決まり事がたくさんありますし。ジャズやコンテンポラリーダンスも同じで、それを分かっていないと難しい。演劇とも違って、人の喋りはまったくありませんし、すべてがボディランゲージですから。

現在運用されている機材をおしえてください。

岩澤氏:
メインの卓は、ヤマハさんの「QL5」で、「DM1000」や「DM2000」もあります。

宮下氏:
会社を設立したときは「PM3000」をはじめ、アナログ卓が何台かあったんですが、すぐに「DM2000」をメインで使うようになりました。ただ、その「DM2000」もオーバーホールをしないといけない状態なので、今年の秋くらいには新しい卓を入れたいと思っています。

岩澤氏:
アコースティック楽器の現場が多いので、3人しかいない会社の割には、マイクの種類はかなり充実していると思います。もう8割方、コンデンサーマイクでしか仕事をしないので(笑)。普通だったらAKGを使うような場合でも、贅沢にSCHOEPSを使いますしね。やっぱり良いマイクを使うと、音の被りがきれいなんですよ。

宮下氏:
SCHOEPSは津軽三味線なんかにも合うんですよ。海外にも民謡のコンサートで持って行きましたね。

2019年、新しいメインスピーカーとして「GEO M12」を導入

サウンドメソッド様には2019年にNEXO「GEO M12」を導入していただきました。導入のきっかけをおしえていただけますでしょうか。

宮下氏:
前の会社から引き継いだ古いスピーカーをずっと使っていたんです。でも使い始めてから30年以上経っていましたし、いい加減新しいスピーカーを導入しようということになりまして。クライアントさんの中にはこういう機材に詳しい人もいますし、ビジネス的にもそろそろスピーカーを更新した方がいいんじゃないかと思ったんです。それで何を導入するという話になったんですが、岩澤は最初、ポイントソースがいいと言っていたんですよ。

岩澤氏:
ポイントソースなら、とりあえず積めば音が出ますからね。ウチはキャパ1,500人くらいの仕事がほとんどですし、それ以上大きな現場の場合は、協力会社にお願いしてスピーカーを用意してもらうというスタンスで仕事をしているので。ポイントソースの方が扱いやすいだろうと思ったんです。

宮下氏:
でも知り合いに、“スピーカーの更新を考えている”という話をしたら、「GEO M10」をおすすめされたんですよ。ラインアレイだけれどもコンパクトで、僕らが手がけているような現場に合っているんじゃないかと。だったら試してみようと思い、ちょうどホールで沖縄の歌と朗読のイベントがあったので、デモ機をお借りして使ってみたんです。そうしたらなかなか良くて、価格的にも予算の範囲内でしたし、これはいいなと。

もう発注するつもりで見積もりも出してもらっていたんですけど、そんなときに12インチの「GEO M12」が発表になり、『NEXO Day』で聴かせてもらったらもの凄く好みの音で、急遽変更したという感じです。普通だったらデモで聴いて、まずはカタログを取り寄せて検討するんでしょうけど、あまりに良いスピーカーだったので、迷わず「GEO M12」に決めてしまいましたね。一聴した瞬間に、これはウチでやっている仕事に合うスピーカーだなと確信しました。

「GEO M12」のどのあたりに良さを感じましたか?

宮下氏:
小口径のラインアレイの音は知っていたので、「GEO M12」のロー・ミッドは本当に衝撃的でした。このロー・ミッドの出方とふくよかさが、自分たちが手がけているようなアコースティックな音楽には必要だなと思ったんです。もちろん、「GEO M10」も数を積めばロー・ミッドが出るんですけど、積んで出る量感と、口径が大きなスピーカーの量感は、やっぱり違うんですよね。これは「GEO M12」を試聴する前から感じていたことで。

岩澤氏:
12インチだと、そんなに大きな音を出さなくても、ロー・ミッドがしっかり出てくれるんですよね。それまでも「GEO S12」を他社さんにお借りしてホールとかで使ったことがあったんですけど、やっぱり12インチは違うなと感じていました。箱が鳴ってくれるというか、音のふくよかさが違うんです。『NEXO Day』で「GEO M12」を初めて聴いたときも、“ああ、全然違うな”と思いましたね。

宮下氏:
それで予算的にも合っていたので、「NXAMP4x4MK2」と一緒にすぐに注文しました。国内のPA会社で「GEO M12」を導入したのは、かなり早かった方なのではないかと思います。システム構成は、「GEO M1210」と「MSUB18」が片側4/1対向で、アンプは「NXAMP4x4MK2」が2台。本当は片側5/2対向くらいのシステムを導入したかったんですけどね。「QL5」を一緒に導入したかったので、スピーカーの本数は少し我慢しました(笑)。

岩澤氏:
1スロープ1,000人を超える会場ですと、片側4/1対向のシステムだと、ちょっと物足りないですね。後ろが薄く感じるので、アレイEQのハイを上げたりして補っているんですけど、あと1本あれば全然違うんじゃないかなと思っています。片側4/1対向のシステムには、箱とかを使わずにトップまで立って積めるという良さもあるんですけど(笑)。

宮下氏:
でも、機材の物量に関ししては割り切っています。大きな会場に対応できるだけの機材を自分たちで持つのではなく、そういう現場は協力会社にお願いする。我々のような規模の会社で、すべての現場に対応できるわけはないので、自分たちのテリトリーを理解して仕事をするというか。人数も少ないですし、こなせる量には限界がありますから。

さまざまなイベントでフル活用される「GEO M12」

導入後、実際に現場で使用されて、「GEO M12」の印象はいかがですか?

岩澤氏:
ウチが手がけているアコースティックな音楽に凄く合うスピーカーだなという印象です。繰り返しになりますが、ロー・ミッドがふくよかで、1つの塊として上から下まで鳴ってくれるスピーカーというか。それと音質的には、「STM Series」など他のNEXOのスピーカーとは違う、「GEO M12」ならではのサウンドというのがあるなと感じています。

宮下氏:
ロー・ミッドだけでなく、スロートが細いからか、ミッド・ハイの出方も違いますよね。振動板が小さいと歪みっぽくなってしまいますけど、「GEO M12」はそういう感じの音にはならない。僕は津軽三味線の仕事が多かったりするんですけど、あの楽器ってめちゃくちゃ難しいんですよ。すぐに硬い音になってしまうので、奏者の方からも“音が硬い”と言われることがあるんです。

だからこれまではEQでかなり補正していたんですけど、「GEO M12」を使い始めてからは、“音が硬い”と言われることはほとんどなくなりました。SCHOEPSのマイクを立てて、ノンEQ。結局、入口と出口が良ければ、何もする必要はないんですよ。

岩澤氏:
本当にそうですよね。SCHOEPSを使って、ハイパスを入れるくらい。それだけで、あとは「GEO M12」がそれなりの音を出してくれます。

宮下氏:
相乗効果というんですかね。音を良くしようと思ってEQを使うわけですけど、使えば使うほど音が乱れてきますし、どんどんハマっていって、結局音を悪くしてしまいますから。

人間の歌声や喋りの明瞭度に関しては、どのような印象をお持ちですか?

岩澤氏:
凄く明瞭ですね。以前、大田区体育館での現場あったのですが、30メートル引いた場所でも、区長さんの言葉が凄く明瞭に聴こえました。役所の人も、“去年よりもよく聴こえる”と言っていましたね。

宮下氏:
人間の声のコントロールがしやすいスピーカーだなと思います。僕は男女のコーラスグループを手がけることもあるんですけど、男性の方はロー・ミッドよりもさらに下の帯域が持ち上がっていて、女性の方は1kHz近辺がクワっと持ち上がっているので、その辺りのコントロールが凄く難しいんです。でも「GEO M12」は、低域がしっかりしているので、前のスピーカーとは感触がだいぶ違うんですよ。かなりコントロールしやすくなりました。

それと民謡は、いかに高いキーで歌うかというのが歌い手さんのステイタスで(笑)、高い音が出れば出るほど良かったりするんです。だから歌い手さんは、喉を締めて歌うんですけど、その結果、ミッド・ハイが大変なことになってしまって。これまではダイナミックEQなんかを使って処理していたんですけど、「GEO M12」を使い始めてからは、そういうクッと持ち上がる帯域がだいぶなだらかになりましたね。

カバーエリアのコントロール性能に関しては、いかがですか?

岩澤氏:
コロナ禍で時間があったときに、同業者同士で各社のスピーカーを持ち寄り、検証実験をしてみたんですよ。音響解析ソフトを用意して、どれくらい違うのか比較してみたんですが、「GEO M12」は本当に回り込みが少なかったですね。特に「MSUB18」は、他のサブと比較しても横からの回り込みが少なくて、その場にいた人たち皆、“こんなに回り込みが少ないんだ”って驚いていました。

あとはやっぱりNS-1ですね。あのソフトをちゃんと使えば本当に完璧になる。“NS-1は嘘をつかない”という名言に偽りはありませんでしたね(笑)。

宮下氏:
横着して使わないことも多いんですけど(笑)、使えば計算どおりの音になりますから。僕は最初、ああいうシミュレーションソフトって信用していなかったんですよ。でも現場で、ここから先には音を飛ばしたくないと思って使ってみたら、ちゃんとそのとおりになった。あれには本当に驚きましたね。ただ、Windows版しかないのが残念で。ぜひMac版もリリースしてほしいです。

機動性やセッティングのやりやすさに不満はありませんか?

岩澤氏:
積むのは本当にラクです。後ろからスーッと滑らせて、角度を決めてガチャンと固定するだけですから。いろいろ使ってきましたけど、こんなにラクに積めるラインアレイは他にないんじゃないかと思っています。先日、他社のラインアレイを使う機会があったんですけど、ピンの数が多いので仕込むのが大変で(笑)。それと重さも34kgくらいなので、僕なんかは1人で下ろしちゃってますね。1人でやった方が簡単に抜けるというか。だから体が動くうちは1人でやろうと(笑)。

それと意外とコンパクトなので、片側4/1対向のシステムなら、スピーカー台と一緒にハイエースに積んで運搬できちゃうんですよ。設置場所の間口もそんなに取らないですし、大きな現場から小さな現場まで対応できる、凄く利便性が高いスピーカーだと思います。

宮下氏:
今のところグラウンドスタックでしか使用していないんですが、多分吊るのもラクなんでしょうね。機会があれば、吊ってみたいと思っています。

その他、何か気に入っている点があればおしえてください。

岩澤氏:
「MSUB18」のインフラモードですね。下が27Hzまで出るモードなんですけど、それでウッドベースとかチェロとか鳴らすと、もの凄くふくよかで良い音がするんですよ。クラシック専門のクライアントさんが客席で聴いて、“今日はチェロがめちゃくちゃ良いね”と感動していましたね。

宮下氏:
僕が若い頃は、こんなに下が出るスピーカーは無かったですよ(笑)。まさに最近のスピーカーという感じですね。

岩澤氏:
それと「NXAMP4x4MK2」も気に入っています。MK2になって明らかに良くなったというか。まだ自分のところのスピーカーしか鳴らしたことがないんですけど、「STM」なんかもMK2で鳴らすと違うんじゃないかと思っています。

宮下氏:
プロセッサーのパラメーターもかなり変わったみたいですしね。

岩澤氏:
ファームウェアのアップデートで上の帯域がかなりスッキリしたのには驚きましたね。ハイの聴こえ方が本当にきれいになった。アップデート後は、チューニングもワンポイント触るだけでOKになり、凄くラクになりましたよ。

宮下氏:
最近はもうハイはほとんどいじらないよね。

岩澤氏:
そうですね。前よりもかなりスッキリしたので、4kHz近辺を切る程度でOKです。

宮下氏:
もちろん、音響測定ソフトで見れば、出っ張っている部分が気になっちゃうんでしょうけど、そういうソフトを使ってフラットにしたから良い音かと言えば、決してそんなことはありませんから。耳で聴いて問題なければ、出っ張ったままでいいんですよ。それと「GEO M12」、約5年使って、だいぶ音が変わりましたよ。エージングで良くなってきたんでしょうね。チューニングの肝も分かってきて、前よりもスウィートスポットにたやすく入れるようになりました。

長いインタビューになってしまいましたが、お話から「GEO M12」をかなり気に入っていることが伝わってきました。

岩澤氏:
本当に気に入っていますよ。サウンドが豊かですし、自分たちが手がけているような音楽ですと、まったく苦労がないスピーカーなんです。やっぱり良いスピーカーは、使い手の言うことをちゃんと聞いてくれるんですよね。マイクの位置を1cm動かしたら、その違いがしっかり分かりますし、コントロールが効くスピーカーだなと。本当に“良い子”ですね。あとは自分がどれだけ仲良くなれるかだと思っています。

宮下氏:
僕は古い人間なので、ネットワークで鳴らした方が、音の繋がりが良い感じがするんですよ。マルチウェイで鳴らすよりも、フィルターをかけて位相を回して繋げてしまった方が、なめらかな音になるというか。もちろん、パワー的にはマルチウェイで、それぞれ独立させて鳴らした方がいいんでしょうけどね。でも音的には、ネットワークで鳴らす方が好きですね。

岩澤氏:
「GEO M12」、まだバイアンプで鳴らしたことがないので、機会があれば3/1のバイアンプで鳴らしてみたいですね。

宮下氏:
あとはコロナ禍で停滞してしまったんですけど、スピーカーの本数を増やしていきたいと思っています。

岩澤氏:
そうですね。あと1本あれば、自分のオペもラクになるかな(笑)。まぁ、劇場だったらプロセで補えばいいわけですけど。

最後に、NEXOとヤマハに期待することがあれば、おしえてください。

岩澤氏:
これまでどおりのサポートですね。ヤマハさんの素晴らしいところは、レスポンスが速いのもそうですけど、ユーザーの意見にしっかり耳を傾けてくれるところだと思っているんです。“こういうことがあった”と伝えると、“分かりました。すぐに開発に投げます”と言ってくれて、それがファームウェアのアップデートで反映されることもある。そういうやり取りができるのは大きいですね。「GEO M12」と「QL5」を一緒に導入したのも、全部ヤマハさんの製品だったらサポートも安心できると思ったからなんですよ。

宮下氏:
最近の機材は、言ってみれば中身はコンピューターなわけじゃないですか。年寄りながら一生懸命ついていっているんですけど(笑)、それでもなかなか理解できない部分があったりする。しかしヤマハさんに連絡すれば、分かりやすく明快におしえくれますから。そういうところはやっぱり安心できますよね。

本日はお忙しい中、ありがとうございました。

QL Series 生産完了品

Danteに標準対応したオールインワンタイプのデジタルミキシングコンソール。