『Shibuya Crossing Jam By 中田裕二 / 荒谷翔大』2025年8月30日(土)@Yamaha Sound Crossing Shibuya
2026.5.29
オートクチュールで創り上げる
特別で素敵なサウンドスケープ

ヤマハの新拠点・Sound Crossing Shibuyaにフラッと立ち寄ったミュージシャンが、同所にある楽器を使って一夜限りのスペシャルショウを繰り広げる、“手ぶら de シブヤ”がコンセプトの入場無料イベント『Shibuya Crossing Jam』。中田裕二と荒谷翔大をゲストに迎え、その記念すべき第1回が2025年8月30日(土)に行なわれた。
2024年11月、渋谷サクラステージ内のSAKURAサイド3階にオープンしたYamaha Sound Crossing Shibuyaでは、最新の楽器、テクノロジー、バンド演奏が体験可能で、オリジナルコーヒー、クラフトビールなどを取り揃えたカフェも併設。アーティストやクリエイターをはじめ、誰でも自由に利用することができ、これまでにない音楽交流の場となっている。
イベントには立ち見が多数出るほどの観客が詰めかけ、当日限定ラテもカフェコーナーで販売されるなど賑わうなか、主役の2人がステージに登壇し、中田による乾杯の音頭でイベントが開演。ヤマハのオリジナルクラフトビールを「おいしい!」と絶賛しつつ、まずはイントロダクションとして軽快なトークを聞かせていく。

この日が初対面だという両者は「アーティスト写真がクールでワイルドだからちょっと怖い人なのかと思ったんですけど、実際にお会いしてみたらとても温かい方でした。僕は福岡、中田さんは熊本と、同じ九州出身でもあって」(荒谷)、「荒谷くんはすごくおしゃれな音楽をやっていて、自分の時代にはなかったハイセンスな感じがしますね。見てのとおり、爽やかなイケメンですし」(中田)と、お互いの印象を語り合う。
また、渋谷という街の所感については「やっぱり、スクランブル交差点ですね。人がいっぱいいてエネルギーがすごくあるから、それを取り込んで自分もがんばろうと思うかな。人間模様が入り乱れていて好きです」(荒谷)、「僕もそうなんですよ。未だにスクランブル交差点のイメージが強い。若い人たちでごった返してるみたいな。Yamaha Sound Crossingがここにできたときはめっちゃ嬉しかったですね。渋谷に来られる理由が見つかった気がしました」(中田)とのこと。

そして、いよいよライブセクション。「初めて一緒にやるので、お互いが知っている曲をチョイスしました」(中田)という前置きから、椎名林檎「丸の内サディスティック」のカバーが1曲目にコラボで届けられた。中田がキーボードを、荒谷がエレキギターを弾き、時にハモリ合いながら歌うスタイルで、2人の美しいボーカルに加え、ジャジィなアレンジも相まって、場内は一段といい雰囲気に。

続いては、個々のオリジナル曲をプレイ。荒谷がそのままステージに残り、「ピーナッツバター」をギターで弾き語り始めると、流れるようなリリックやメロウな曲調に乗せて、客席から自然とハンドクラップがあふれ出す。さらに、暑い季節とマッチした「真夏のラストナンバー」へ。ほんのり灯る暖色系の照明が心地よく、キーボードを添えて聴かせる切なくエモーショナルな歌唱もたまらない。
今度は中田が入れ替わりで、キーボードの弾き語りによる「海猫」を披露。荒谷のロマンティックなムードを受け継ぎつつ、負けじと孤高の哀愁に満ちた甘い歌声を優しく染みわたらせる。恋の駆け引きを描いたアダルトな世界観が際立つ「誘惑」では、ギターを軽やかに奏でる一方、フェイクを豊かに効かせたり、ロングトーンで大いに沸かせたりする瞬間も。

共にバンドのフロントマンとしてデビューし(中田は椿屋四重奏、荒谷はyonawo)、現在はシンガーソングライターとして活躍。ギターと鍵盤が得意なところ、ルーツミュージック的な音楽性にも共通項が感じられる2人は、それぞれの奥行きあるアプローチをもって観る側を存分に魅了してくれた。
ソロ曲のあとは再びトークパート。イベントのテーマ“手ぶら de シブヤ”にちなみ、この日の演奏がすべてヤマハの楽器を使っていて、出番前に本人たちが選んだものであることが明かされた。そう、Yamaha Sound Crossing Shibuyaには、ギター、ベース、ドラム、キーボード、ピアノなどはもちろん、アンプ、マイク、クリップチューナーといった機材が充実しており、カフェでコーヒーやオリジナルクラフトビールも楽しむことができる。
ミュージシャンが普段とは異なる機材でライブをしたり、その貴重な演奏をオーディエンスが味わえたりと、特別な音楽、思いがけないイノベーションが生まれる空間を具現化できたのは、音の入口から出口までを担うヤマハだからこそ。楽器を何ひとつ持参することなく、ヤマハ所有のギター(Revstar)やキーボード(CP88)を使い、こうしてイベントが成り立っているのがなんとも画期的だ。中田も荒谷も新鮮な様子で「僕ら、本当に手ぶらで来てるんですよ!」と嬉しそうに話す。
「たとえば、制作に関してもヤマハの機材で全部やれちゃいますよね。卓(ミキサー)とかまで揃っているから。そういう試みは面白いんじゃないかなって」(荒谷)、「上の階にラウンジがあってちょっとしたミュージアムになってるんですけど、60年くらい前のビンテージアコギがカッコよくて。弾いてみたいなと思いました」(中田)と、終盤にはすっかり笑顔で打ち解けていた2人。

「ぜひ、いろんな楽器を触ってみてください。渋谷という場所もあって、夢が膨らむんじゃないかと思います!」と中田が呼びかけ、最後はもう一度スペシャルなセッションでOriginal Loveの「接吻 kiss」をカバー。「丸の内サディスティック」と同様に「Just the Two of Us」進行が活きた、渋谷の夜に似合いすぎる名曲を、中田のやわらかなエレピとともに2人で色っぽく歌い上げ(荒谷はハンドマイク)、初回の『Shibuya Crossing Jam』は余韻たっぷりに幕を閉じた。
手ぶらで完結する音楽の新たな発信地、Yamaha Sound Crossing Shibuya。あらゆる種類の楽器を備え、オリジナルのコーヒーやクラフトビールを取り扱う。渋谷にこういった唯一無二のスペースがあることがたくさんの人に広まり、さまざまなクロスオーバーによって偶発的な輝きが生まれていくことを期待したい。

◎SET LIST
- 丸の内サディスティック(コラボ/椎名林檎カバー)
- ピーナッツバター(荒谷翔大)
- 真夏のラストナンバー(荒谷翔大)
- 海猫(中田裕二)
- 誘惑(中田裕二)
- 接吻 kiss(コラボ/Original Loveカバー)
◎EQUIPMENTS
<中田裕二>
<荒谷翔大>
- Yamaha/Revstar RSP20X Rusty Brass Chacoal(Guitar)
- Marshall/JVM205H & 1960A(Amplifier)
- Yamaha/CP88(Keyboard)
取材・文:田山雄士
撮影:山川哲矢