C-5000 プリアンプ
信号の流れを純化・最短化するブックマッチ・コンストラクション
「ブックマッチ」とは元々、1本の原木からスライスした2枚の板をあたかも本を開くように接ぎ合わせ、左右対称の美しい木目を顕した木工技法のことを指します。C-5000のブックマッチ・コンストラクションは、入出力端子を含む全オーディオ回路とそのグラウンドライン、そして各ステージへの給電を受け持つローカル電源レギュレーターのすべてを片チャンネルあたり1枚のワンボード上に展開し、さらにL用とR用の2枚を背中合わせにしてマウントするという前代未聞の構造。2枚の基板は部品配列からプリントパターン まで鏡に写したように完全なシンメトリーで、互いのパターン面は向き合うように重ねられています。これによって信号の流れが一方向に揃うとともに、 左右のグラウンド間の距離も限りなくゼロに近づけます。当然、これまで複数の基板を結んでいたジャンパー線やコネクターは不要となり、信号伝送・ 給電・グラウンドのすべてが革命的に純化、最短化されます。特にご注目いただきたいのは、MCヘッドアンプやフォノイコライザーなどのデリケートな回路もシールド類に囲われることなく、基板全体がフラットに見渡せること。外部ノイズを寄せ付けない完全バランス伝送でこそ実現し得たオープンなレイアウトは、そのままC-5000の開放的で濃密な音へとつながっています。
左右等長・最短距離での給電を徹底させたシャーシレイアウト
C-5000の内部を真上から見ると、手前側の左右端に2基の電源トランスが据えられ、その間に6個のブロックケミコンが並ぶメインレギュレーター(整流回路)基板があります。メインレギュレーターは上段Lチャンネル、下段 Rチャンネルの2層になっており、それぞれの背後に控えるメイン基板上のローカルレギュレーターへ最短距離かつ左右等長に給電される構造。給電に使われる線材は太さ12AWG(3.5スケア)。カスタムメイドの真鍮製ネジと真鍮製ラグを使って、まるでパワーアンプのようにがっちりとワイヤリングされています。いっぽうブックマッチ構造による上下2段(L/R)のメイン基板は、後端側が端子群とともに背面パネルで、前端側は基板の左右幅いっぱいに10mm厚のアルミ製スタビライザーブロックで支持。このスタイビライザーブロックを上下2枚の基板で挟み込むようにして各基板の振動モードを揃え、音のフォーカス感を飛躍的に高めることに成功しました。そしてシャーシ全体を支えるレッグには、スパイクを内蔵することで通常設置でもピンポイント支持効果が得られる新開発レッグ(特許申請中)を採用しました。
フローティング&バランス方式を全面採用したオーディオ回路
電源を含むアンプ回路をグラウンドからフローティングした状態でバランス増幅を行うヤマハの特許技術=フローティング&バランス方式。これまでパワーアンプ回路で大きな成果を上げてきたこの方式は、グラウンドを巡るノイズの影響を原理的に受けないという意味において、実はデリケートな微小信号を扱うプリアンプにこそ有用なものでした。しかしフローティング&バランス方式にはチャンネルあたり2組ずつのアンプ回路と電源回路を必要とし、多くの独立した増幅ステージを持つプリアンプへの応用は困難でした。そこでC-5000の開発にあたっては、回路構成の複雑化を避けながら仮想のフロー ティング&バランス用電源を成立させる独自の技術を確立。MCヘッドアンプを除くすべての増幅回路(フォノイコライザー、入力アンプ、出力バッファーアンプ、ヘッドフォンアンプ)のフローティング&バランス化を実現しました。
MCヘッドアンプを含むフォノイコライザーのバランス伝送化
C-5000開発の主要テーマのひとつが、MCヘッドアンプを含むフォノイコライザーの完全バランス伝送化でした。レコード盤の音溝情報をコイルの発電によって電気信号に変換するMCフォノカートリッジは、その出力をバランス音声として取り出すことが可能です。それをバランスのまま受け、バランスのまま伝送するのが理想であることは当然でした。バランス伝送が外部ノイズの影響を受けにくいことは周知の事実ですが、その特質はフォノカートリッジ〜プリアンプ間の微小な信号に対して劇的な威力を発揮します。初めて聴く生々しい音楽表現力と、ダイナミクスの違いを体験してください。
左右独立・銅メッキケース封入のトロイダル電源トランス
磁束漏洩が少なくレギュレーションに優れ、プリアンプ用として理想的な特性を備えた銅メッキケース封入のトロイダル電源トランスを左右独立で搭載。容量25VA×2、巻線からダイレクトに引き出される給電ワイヤーは低インピー ダンス化に貢献する真鍮ラグを採用したネジ止めとし、底面にはヒヤリングを重ねて選ばれた3mm厚の真鍮製ベースプレートを挟み込んでいます。
フラッグシップ機ならではの風格、冴えた手応えを追求
9mm厚のアルミ無垢フロントパネルと6mm厚のアルミ無垢トップパネル、そしてピアノフィニッシュのサイドウッドを滑らかに突き合わせた外観デザインは、ヤマハらしい清楚さのなかにフラッグシップならではの風格を漂わせます。 ポインター(指標)を一体化した印象的な形状のアルミ削り出しボリュームノブは軸受部にボールベアリングを採用。斜めにテーパーカットされたフロントパネルの切り口に沿ってポインターが滑らかに回る様子は、その精度と支持剛性の象徴。さらにレバースイッチも、切り替える瞬間の感触にこだわって試作を重ねた新規構造を採用するなど、C-5000はその操作フィーリングにも、最高級プリアンプにふさわしい冴えた手応えを求めました。
その他の機能・特長
●ターンテーブルのトーンアームの共振やレコードのそりで発生する超低音域の雑音をカットするサブソニックフィルター ●パワーアンプなどとの電源連動が可能なトリガー端子 ●アッテネーターとフェイズインバーターを装備したバランス音声入力端子 ●アルミフェイス採用のワイヤレスリモコンを付属 ●電源の切り忘れを防止するオートパワースタンバイ機能