YH-5000SE 開発ストーリー
開発者がYH-5000SEに込めた想い
YH-5000SEの発想の原点
“夜な夜なヘッドホンに引き寄せられ、時間を忘れて音楽に没頭する”、そんな音楽体験の究極を追求して、YH-5000SEは、音・装用性・ビルドクオリティ・デザインのあらゆる面に於いて徹底的にこだわってきました。ぜひ私たちが作り上げたこのヘッドホンで、昔聴いていた曲、今夢中になっている曲、これから出会う曲を心ゆくまで自由に行き来してみてください。
波多野 亮
音響設計 担当
70年代に誕生したオルソダイナミック™ドライバー。社内の古い引き出しに残った図面を調べてはヒントを探した開発初期から、幾多の試作と試聴を経て現在の形にたどり着くまで、気付けば実に6年以上の歳月が経過していました。音楽に集中できる音の密度感と音場感を両立させ、音源に閉じ込められたディテールを出来る限り解放する。 これがYH-5000SEの音質テーマでした。そのためにドライバーユニットをはじめ、あらゆる部品・構造に対して苦心を重ねました。アーティストやエンジニアがこだわったディテールに気付いていただいた時、その音楽はよりリアリティをもって深く心に残り、特別なものとなるはずです。
小林 力
機構・筐体設計 担当
YH-5000SEは、追及する音質・装用性・デザインを実現するために「理由のある素材の選択」をモットー(基本)とし、構造部材から表皮材料・加飾に至るまで厳選された材料が使用されています。YH-5000SEには、繊細で扱いの難しい材料やオーディオ製品にはあまり使用されない材料も使用されていますが、理想とする音響特性や外観としての美しさを損なわないように、素材選びから製造工程まで一切妥協せず作り上げました。そして本体に刻まれる「MADE IN JAPAN」の文字は、お客様に満足いただける品質を提供するための証でもあります。
高野 泰明
感性評価 担当
“着け心地のよいヘッドホンとは?”
”使用される方がどんな装着感を望んでいるのか?”
YH-5000SEは、その本質を深く調査するところから始まりました。ヤマハの研究開発部門内には感性評価の専門チームがあり、音・音楽領域で人の感性を科学的に捉える取り組みを行っています。本モデルはそのチームと協力しながら、ヘッドホンの側圧、イヤパッドの表皮、クッション材の試作品を数十種類用意し、長時間試聴に最も適した組み合わせを求め、何度も繰り返しテストを重ねました。具体的には、凹凸のある人の頭頂部や顔側面に均等かつ低圧に接しているかどうかを面圧力測定器を用いて計測し、また長時間使用時の感性評価を行うことで私たちが理想とする着け心地を追求しました。そんな着けていることさえ忘れてしまう程のこのヘッドホンで、心ゆくまで音楽の世界に浸っていただければと思います。
Yamaha Flagship headphones YH-5000SE | MESSAGE FROM THE ENGINEERS
ALL ABOUT ORTHODYNAMIC™
オルソダイナミックのすべて — いつの時代も、真実を追求する —
初代オルソダイナミック™ドライバーは1976年に誕生しました。ギリシャ語で "オルソ "は「正しい」「まっすぐな」という意味を持ち、振動板を正しく駆動して音をより正確に再現させることが、初代オルソダイナミック™ドライバーの考え方でした。そのコンセプトは変わることなく、さらなる進化を遂げて新世代のオルソダイナミック™ドライバーへ受け継がれています。
オルソダイナミック™ドライバーとは
ヘッドホンのドライバーには様々な種類があり、一般的なダイナミック型ドライバーはドーム状の振動板に接着したボイスコイルをマグネットと組み合わせ、電気信号を送ることで駆動させます。一方、YH-5000SEでは薄膜の振動板とボイスコイルを一体化しマグネットで挟んで駆動させる平面磁界型ドライバーを採用。平面磁界型ドライバーは振動板全体を駆動するため、ダイナミック型ドライバーに比べて応答性が高く、高域性能に優れ、歪みが少ないという利点があります。その反面、開発・製造に高度な技術が必要になります。
ヤマハのオルソダイナミック™ドライバーは振動板を真円形状にし、コイルパターンも円形のスパイラル形状を採用しています。同心円状の凹凸により、ピストン運動領域での振動板の動作がスムーズになり、優れた応答性と豊かなダイナミックサウンドを実現します。
オルソダイナミック™の歴史
1970年代、平面磁界型ドライバーの開発は複雑な構造と製造の難しさもあって製品化できたものは市場ではごくわずかでした。ヤマハ初のオルソダイナミック™ドライバーは、ポリエステルの薄膜にスパイラル状のボイスコイルをフォトエッチングして製造しており、同心円状に分割した5つのボイスコイルが磁極を交互に繰り返すという非常に複雑な構造のため、開発・製造が非常に困難でした。
これらの課題を克服し、「オルソダイナミック™ ステレオヘッドホン HP-1」を発売しました。HP-1はその優れた音質が評価されただけでなく、イタリアの工業デザイナー、マリオ・ベリーニによるシンプルで実用的なデザインも好評を博しました。
いかにしてオルソダイナミック™ドライバーは進化を遂げたのか、新世代オルソダイナミック™ドライバーへの挑戦
社内で新たなヘッドホン製品のプロジェクトが立ち上がったとき、エンジニアたちは1970年代のヤマハのヘッドホンに触発され胸を熱くしました。そして、ハイレゾ音源をはじめとする現代の音楽ソースにマッチする上質なアタックを実現する方法を模索する中で、オルソダイナミック™ドライバーに注目しました。精度の高い振動板を設計するのは非常に難しく、約1,000種類の試作を経て、現在の設計にたどり着きました。素材や部品の選定、製造方法にもこだわり、測定・解析・改良を繰り返すことで形状や構造を完成させました。新開発のオルソダイナミック™ドライバーは、従来モデルよりも開口部を大きくし、振動板からの音の透過率を向上させました。また、振動板の中央固定をなくすことで共振周波数を下げ、低域の表現力を高め圧倒的なダイナミックサウンドを実現しました。さらに、ダンピング方式を見直し、以前のフェルトによる制動から、微細孔ダンパーによる制動へ進化したことで、 伸敏な音の立ち上がりを可能にするとともに、中高域のロスを最小限に抑えました。幾多の困難を乗り越え6年以上の歳月をかけて開発された新世代のオルソダイナミック™ドライバー。聴く人の心を揺さぶる、新しい "TRUE SOUND "をぜひ体感ください。