アーティストに聞く、フィンガードラムと「FGDP」 Part 2

フィンガードラムについてアーティストが語る。第2回は、国内フィンガードラマーとしてSNS等でも人気のスペカンさん。音楽や打楽器との出会いから、フィンガードラムを演奏するまでに至るストーリーと、フィンガードラム専用楽器に感じた魅力を語っていただいた。

ー FGDPのお話に入る前に、まずスペカンさんのバックグラウンドについてお聞きしたいと思います。5歳の時にドラムを習い始めたとのことですが、きっかけは何だったのでしょうか?

スペカン:母がピアノの先生をしていて、何かしら楽器をやらせたかったようなんです。それで、幼稚園の運動会でマーチング・バンドみたいなことをやることになった時、僕は小太鼓をすごく気に入って。楽しかったんですよ。でも、リズム感が悪かったらしくて、“君はシンバルね”って言われたんです。それが相当ショックで悔しかったみたいで。あと、当時『ザ・ベストテン』などの歌番組を観るのが好きで、特に近藤真彦さん、マッチがすごく好きだったんですね。「ギンギラギンにさりげなく」を歌っているマッチを観た時に、バックバンドに目が行って、“ドラムっていいな”と思ったんです。幼稚園の運動会の悔しい記憶もあって、自分もやりたいなと。それで、あの頃は子供にドラムを教えてくれる先生はあまりいなかったんですが、親が探してくれたんです。

ー 実際にドラムを始めてみて、どう感じましたか?

スペカン:まだ自我があまりない頃なので、やりたいって言ったものの、知らない大人と会ったりするのも怖いし、親にも“練習しなさい!”って言われるし(笑)。だから、めちゃくちゃ楽しいとは感じていなかったかもしれないです。でも、ドラムをやっているって言うと珍しがられるので、そういう優越感は子供ながらに感じていたと思います。

ー バンドでドラムを叩くようになったのは、いつ頃ですか?

スペカン:中学1年生くらいからですね。僕が入った学校には、帰国子女や交換留学生が多くて、洋楽に触れる機会がよくあったんです。当時、寮に入ってたんですが、先輩たちが毎日のようにメタルをかけていて。“こんな怖い音楽あるんだ”って衝撃を受けたんですよ(笑)。メタリカを聴いた時に“なんだ、これは!”となって。ロックやメタルって、ドラムが前に出てくるじゃないですか。だんだんそれがカッコよく思えるようになったんです。その頃にはもう8年ぐらいドラムをやっていたので、同年代の中では一番うまかったんですよ。だから、文化祭などでいろんな先輩から声をかけてもらって。僕が全部のバンドで叩いていた年もありました。

ー プロとして活動するようになるきっかけについて教えてください。

スペカン:僕が20歳ぐらい頃って、インディーズのバンドがすごく多かった時代だったんですよね。僕もメロコアとかパンクとか、いろんなバンドを経験しました。そうこうしているうちに、スペースカンフーマンのメンバーに“ドラマーが抜けるから入ってくれないか?”って誘われたんです。彼は、僕が高校時代にやっていたバンドの対バン相手だったんですよ。それで、加入することになりました。スペースカンフーマンは知名度のあるインディーズ・バンドだったので、そこからドラマーを探している人たちに声をかけてもらうようになり、掛け持ちが増えていきました。同時期に、ジャズ・ドラマーの坂田稔さんに習うようになって。坂田さんの付き人もやり始めて、ジャズ系の活動もするようになりました。あと、友達がプロデューサー業をやっていたので、アイドルのバックバンドでドラムを叩くこともあったり。でも、先生業がメインでしたね。24、5歳ぐらいの頃です。

スペカン

ー では、スペカンさんのフィンガードラムとの出会いについて教えてもらえますか?

スペカン:実は、フィンガードラムは全く想定に入ってなかったんですよ、僕の人生において。DJの音楽はもともと好きだったんですが、ある時バトルDJみたいなスクラッチをやりまくるスタイルに興味を持って、YouTubeで検索してたんです。それでジェレミー・エリスっていう……純粋なフィンガードラムというより、パッドパフォーマーというんですかね。サンプラー系ハードウェアを使ってパフォーマンスするアーティストを見つけて、“こんなのあるんだ!”と知ったんです。僕の奥さんはシンガーなんですが、たまたま同じ時期に“曲を作ってほしい”と頼まれたんですよ。“作れないよ、ドラマーだし”ってなったんですが、パッドを使って曲を演奏するジェレミー・エリスがいたなと思い出して。またいろいろ検索していたら、“フィンガードラム”が出てきたんです。それが、フィンガードラマーとしても有名なKO-neyさんだったんです。KO-neyさんはレッスンもされていたので、すぐ習いに行きました。

ー 最初は音楽制作機器系のハードウェアでフィンガードラムを始めたのでしょうか?

スペカン:そうですね。その後いろんな機種を使いました。何が本当に自分に合っているのか知りたくて。いろいろなサンプラーやパッド・コントローラーなどをひと通り触って、全部フィンガードラムとして使ってみました。

ー いろいろな機種を使われてきた中で、ヤマハのFGDPシリーズを使うようになったのは?

スペカン:あまりにも機材が増えてしまって、もうこれ以上は買いたくないと思っていた時にFGDPが出たんですよ。なので、最初はスルーしようと思ってたんですが、ドラム・ショップのシライミュージックの白井さんが、“スペカンさん、FGDPでフィンガードラムしましょう”って誘ってくれたんです。その後、ヤマハさんからFGDPを借りられることになって実際に触ってみたら、“あ、これいいじゃん”って。

ー どんなところが気に入りましたか?

スペカン:それまでの機種は、基本的に16個の四角いパッドが正方に並んでいるものだったんです。でも僕は、フィンガードラムをやる上で、パッドの形が全部同じなのも、整然と四角く並んでいる意味もあまりないなって思ってたんですよ。FGDPは、それが見事に昇華されていたし、僕が普段パッドにアサインしているパーツのレイアウトに似ていたんですよね。だからすぐに馴染めましたし、楽に叩ける感覚はありましたね。

スペカン

ー 今はFGDPをどんな時に使われているんですか?

スペカン:本当に“ドラムを叩く”時です。僕は普段FGDP-50を使っているんですが、友達の曲にドラムを入れる時に使ったりもしますし、動画で“叩いてみた”のようなことをやる時にも使います。上モノも含めて全部の楽器を叩くサンプラーのような使い方ではなく、FGDPは完全にドラムとして使っている感じです。ただ、フィンガードラムでライブをやるっていう文化が日本にはまだあまりないので、そこには至ってなくて。でも、FGDPを使ってフィンガードラムを叩きまくることで、他のパッドを演奏する際にもその技術は生かされるので、ライブ的なやり方で練習にも使ってます。あと、レコーディングではすごく使いやすいですね。

ー どんなところが使いやすいんでしょうか?

スペカン:生ドラムの場合、曲に対してどういうドラムを組み立てるかを考えるのに、大抵はスタジオに入らなきゃいけないですよね。本番のレコーディングまでに、練習もしなきゃいけない。でも、FGDPだったら自宅でいつでも叩くことができるし、叩いたものをUSBメモリーに録っておくこともできます。さっきのパッド配置の話もそうですがフィンガードラムを演奏するハードウェアとして優秀なので、PCに繋いで制作環境と連携しても使いやすいです。フレーズを構築しながら少しずつレック(録音)して完成させていくみたいなこともできるし、ミックスの際に曲全体を聴いた時に、“ここの部分はちょっと違うな”って思ったら、いわゆるパンチイン/パンチアウトでの差し替えも簡単です。そういったのちの作業を考えると、レコーディングでは生ドラムより使いやすいかもしれません。

ー 確かにフィンガードラムを叩いて録音した方が、その後の編集作業を考えると楽かもしれませんね。

スペカン:めちゃくちゃ楽だと思います。

ー FGDPにはプリセットのキットがいろいろ入っていると思いますが、特に気に入っているものを紹介してもらえますか?

スペカン:お気に入りは、「Maple」(メイプルシェルのドラムセットを収録したキット)です。「Birch」(バーチシェルのドラムセットを収録したキット)や「Beech」(ビーチシェルのドラムセットを収録したキット)もいいですね。僕は“ザ・ヤマハ”というようなドラムの音が好きなんですけど、「Maple」が一番わかりやすくその特徴が出ていると思います。生ドラム系の音色は、全体的にどれもいいですね。逆に、電子系の音はあまり使わないんです。

ー エフェクトは使いますか?

スペカン:使ってないですね。ほぼそのままの音でやってます。 “叩いてみた”動画を撮る時などに、チューニングの調整をするくらいです。ミキシング的なエフェクト処理は基本的にしません。

ー パッドのレイアウトは自分用に変えていますか?

スペカン:基本はそのままですが、ほんのちょっと変えています。一番大きなパッドをスネアのリムショットの音にしていて、その下のパッドをヘッドのショットにしています。プリセットでの配置は逆なんですよね。僕は、キック、スネア、ハイハットをスリーフィンガーで演奏するんですが、リムショットのパッドが下にあると、指の動きがスムーズにいかないんです。なので、そこだけ変更しました。

ー それはオススメのセッティングですか?

スペカン:オススメですね。あとこだわっているのは、ベロシティですね。僕は、ロックやポップスのようないわゆるスクエアなリズムのジャンルでは、キックやスネアのベロシティが固定されている方がいいと思っていて。生ドラムのレコーディングでは、音の強弱のバラツキをなくすのに苦労してきたんです。だから、フィンガードラムを演奏する際は、大体ベロシティを110くらいに固定しています。そうすると演奏が安定するし、ミスも減るんですよね。そもそも現代のスクエアなリズムの音楽では、キックの音をいきなり大きくしたり小さくしたりする手法はほぼ取らないですから。スネアのバックビートも同じです。一方で、ハイハットは固定していなくて。固定すると、ロボットっぽくなってしまうんですよ。リズムのパルスが1番小さいものが一定になればなるほど、無機質になってしまう。重要な部分、例えば1発目のキックやバックビートのスネアと一緒に叩く時は、ハイハットは大きくなってもいいって思ってるんです。ちょっとマニアックな話かもしれませんけど。

ー これからうまくなっていきたいと考えている人には、すごく参考になると思います。生ドラムとフィンガードラムで、特に違いを感じる点や、逆に共通する点はありますか?

スペカン:もちろん指なのか脚(バスドラムやハイハットなどのペダル操作)なのかという点が圧倒的に違いますよね。あと、身体の運動的な感覚というものが生ドラムにはあります。フィンガードラムの場合、使う範囲は手首辺りまでなので。ただ、共通しているのは“ドラムを叩く”ということと、“練習は必要”ということですね。そして、習熟にかかる時間に関しては、フィンガードラムの方が圧倒的に早いです。教える側としても、“こうやって指を速く動かせばいいんだよ”とか“この指で叩いてみて”くらいの説明で済む。あとはもう練習あるのみ、という感じで。そこに特別なコツがあるわけではないんですね。

ー フィンガードラム初心者は、まず何から取り組むのがいいでしょうか。

スペカン:リズムパターンをやるのが一番楽しいと思いますね。まずは基本のパターンをしっかりできるようになることで、ドラムを叩いている感覚が得られると思うんです。それを繰り返すだけでも、けっこう楽しいはずです。できない人は、最初のリズムパターンをできるようになるのに3日ぐらいかかるかもしれません。それを綺麗にできるかどうかという段階まで行くには、1〜3ヶ月かかることもある。そんなふうに、リズムパターンや簡単なタム回しを練習していくと、次のステップも見えてくるんじゃないかと思います。

ー スペカンさんは、フィンガードラムの教則本を執筆されていたり、YouTubeで教える動画を出されていますが、そういった書籍や動画はどんなふうに活用すればいいでしょうか?

スペカン:動画に関しては、主に“1日1フレーズを習得”みたいな感じでやっているんですけど、それをコツコツと頑張って叩けるようになっていけば、どんどんうまくなっていくと思います。動画では、最初にゆっくりやって、それから BPM145 とかにスピードを上げてやるようにしているので、それを見てちゃんとできるようになれば確実に上達しているはずです。教則本は2種類出していて、1冊は『譜面が読めなくてもできるフィンガードラム』というもの。音符が嫌いな人って多いですよね。まずはこの本からやり始めてもらうと、おのずと譜面も読めるようになるはずなので、その次にもう1冊の『DTMerのためのフィンガードラム入門』に進んでもらうのが良いですね。あと、いつかFGDP専用の教則本を作りたいと思ってます。

ー スペカンさん自身は、今後 FGDP をどんなふうに活動に取り入れていきたいと考えていますか?

スペカン:レコーディングの仕事にはぜひ使いたいですね。先ほども言ったように、これを使ってライブをするというのが、まだ僕の中ではイメージができていなくて。ただ、今後のFGDPが切り開くシーンには本当に期待しているし、その“今後”がちゃんとあるように、みんなに始めてもらいたいです。みんなで一緒に作っていくジャンル、みたいな感覚ですね。

スペカン

ー 最後に、FGDPに興味を持ってフィンガードラムをやってみたいという人に、メッセージをお願いします。

スペカン:ドラムをやってる人ほどすぐできるはずなので、ぜひ手にしてもらいたいですね。生ドラムを叩く時のシミュレーターとしても確実に使えると思うんです。そうやって“フィンガードラムも普通にできるよ”っていう人が増えてくれたらいいなと。ドラム経験がなくてフィンガードラムをやってみたいという人は、よくわからなくてやめたくなることもあると思うんです。そうなる前に、僕に連絡ください。

スペカン フィンガードラマー / ドラマー

5歳からドラムを始め、ジャズドラムで基礎を学び、学生時代から数々のロックバンドで活動。その後、アコースティックドラムの経験を活かした独自のフィンガードラム・メソッドを確立。2006年頃から本格的に講師活動を開始し、アコースティックドラム/フィンガードラム指導者としてこれまでにのべ1000人以上を指導する。

YouTubeチャンネル:@fingerdrummer3060

製品情報

Top view of FGDP-50

FGDP-50

希望小売価格: 48,400 円(税込)

  • 2023年9月 発売

FGDP-50は、音源、スピーカー、充電池を内蔵したフィンガードラム専用楽器です。より多くの機能と幅広い性能を備えたFGDPシリーズの上位モデルです。

Top view of FGDP-30

FGDP-30

希望小売価格: 29,700 円(税込)

  • 2023年9月 発売

FGDP-30は、音源、スピーカー、充電池を内蔵したフィンガードラム専用楽器です。指を使ったドラム演奏”フィンガードラム”がいつでもどこでも気軽に楽しめる、FGDPシリーズのスタンダードモデルです。