ヤマハ | アーティストに聞く、フィンガードラムと「FGDP」 Part 1

アーティストに聞く、フィンガードラムと「FGDP」 Part 1

フィンガードラムについてアーティストが語る。第1回は、電子楽器に特化したスタイルで演奏活動から音楽教育まで幅広い活動を行うMASAKingさんに、フィンガードラミングとの出会いに至るエピソードや専用楽器の魅力についてお話を伺った。

ー MASAKingさんはクラシックパーカッションから打楽器を始めたそうですね。

MASAKing:小学校5年生の時に、地元の仙台のジュニアオーケストラにパーカッションパートで入団しました。プロの方に直接ご指導いただいて、打楽器演奏の基礎を築けることができて、とても感謝しています。

ー どんなところに面白みを感じましたか?

MASAKing:右も左も分からない状態でクラシックの世界に入っていき、先生に教わることを真面目に忠実に練習していました。それが積み重なっていって、面白いと感じられるようになったのは、100人ぐらいの規模のオーケストラに自分の音が溶け込んでいくことでした。

ー その後、いわゆるバンドのドラマーになっていくわけですよね?

MASAKing:これは、ずばりX JAPANのYOSHIKIさんの影響です。当時のXをテレビの音楽番組で観た時の衝撃は今でも忘れられないですね。「Silent Jealousy」を演奏されていたのですが、最初はクラシックなピアノで始まって。当時クラシックにハマっていた私は、そこでシンパシーを感じたんです。そうしたら急に上の衣装を脱ぎ全身を使って激しくドラムを叩き出して……もう度肝を抜かれましたね。確か小学校6年生の頃だったと思います。クラシック少年がロックと出会いました。

ー それで、ご自身もドラムを始めたんですか?

MASAKing:はい。中学、高校ではドラムばかり叩いていて、高校の時は20個ぐらいバンドを掛け持ちしていました。ドラムをやる人って他のパートに比べて少ないので、需要があるんですよね。大学では、クラシックや音楽教育を学びながらも、仙台で人気のあったビジュアル系のインディーズバンドに所属していました。その時から電子ドラムを使い始めたんです。

MASAKing

ー なぜ電子ドラムを?

MASAKing:ビジュアル系バンドが全国で流行っていてライバルがたくさんいたので、差別化を図りたかったんです。中学生の頃から小室哲哉さんのサウンドがすごく好きだったというのもあります。あと、ジュリアナ東京とかで流れる音楽とかもかっこいいなって思っていて。あ、CDで聴いていただけで、通ってはいないですよ(笑)。そういう打ち込みの音を再現できるドラマーになりたいと思ったんです、バンドの特色にもなるし。それで、今は結構当たり前になっていますけど、アコースティックドラムのセットの中に電子ドラムを組み込むっていう、ハイブリッドなキットでやっていたんですよ。1999年ぐらいのことです。

ー 確かに当時のロック・バンドにはなかったセットですね。

MASAKing:試行錯誤しながら、誰もやってないことをやっていく面白さに夢中になっていましたね。でもその後、いったん電子ドラムから離れてアコースティックドラムに回帰しました。ビジュアル系のシーンが一気に落ち着いて、私もバンドを脱退して。そんな時に、ドラマーの齋藤たかしさんと知り合ったんです。目の前で彼のドラミングを見て、2度目の衝撃を受けたんです。たかしさんはスタジオミュージシャンとしてご活躍されていて、メジャーアーティストのリハーサル現場にも連れて行ってもらったりしてかなりの刺激を受けました。そこで、ドラマーとして独り立ちしたいなと思って、ジャズドラムからとことんやり直しました。

ー そしてまた電子の打楽器に戻ってくるんですよね?

MASAKing:そうなんです。ブレイクビーツユニットのHIFANAさんが、デジタルハンドパーカッションを使っているのを見たのがきっかけの一つです。ここでもやっぱり衝撃を受けて、私もそのデジタルハンドパーカッションを本格的に使い始めたんです。そこから、“PPAP”でお馴染みのピコ太郎さんのプロデューサーである古坂大魔王さんのユニット、ノーボトム!に参加することになり、メジャー・デビューをさせていただきました。その時に、やっぱり自分は電子楽器に特化した演奏を追求していこうという方向性が見えたんです。ノーボトム!の活動が落ちついた後は、電子打楽器奏者MASAKingとして名乗り始めて今に至ります。

ー では、フィンガードラムにはどのように出会ったのでしょうか?

MASAKing:フィンガードラムが流行り始めているというのはずっと前から感じていて、興味はあったんです。そんな中、開発中のFGDPに関わらせていただくことになったんです。初めて製品に触れた時、これは面白い!と感心して。情熱溢れる開発チームの方々にフィンガードラムの世界に誘っていただき、自分の活動でFGDPが活躍するイメージがすぐに湧いてきました。

ー 開発にはどのように関わったのでしょうか?

MASAKing:主にアドバイザーとして関わらせていただきました。演奏をする上で、“こうだったらもっとやりやすい”という感じのことを提案させてもらいました。あと、パーカッションのキットは主に私が作っています。プレイヤーが叩きやすいフレーズを作れるように、実際に叩きながら調整していきました。悩んだのは、中近東やアフリカの打楽器。FGDPのパッドレイアウトはスタンダードなドラムキットに準じている(※1)ので、そこにどのように音をプリセット配置していくのがいいか、試行錯誤しました。でも、製品リリース後には、世界中の人たちが楽しく叩いているのを見て安心しました。嬉しかったですね。

ー 現在の活動に、FGDPはどのように取り入れられているんでしょうか?

MASAKing:電子打楽器奏者という肩書きでやっているので、電子楽器に特化した演奏をする機会が多いのですが、FGDP-50はすっかりマストアイテムになっています。

MASAKing

ー どう使っているのですか?

MASAKing:例えば、先日企画&出演したイベントでは、「パッヘルベルのカノン」のヒップホップアレンジを演奏する時に使用しました。FGDPの「HipHop」キットを元にして楽曲にあうサウンドにエディットし、ループフレーズを忠実に再現してオーケストラとアンサンブルしました。打ち込みの音を人間が演奏することにより、アンサンブルにリズムの揺らぎが生まれるのが大きな魅力です。曲の途中では、FGDPを演奏しながらDJエフェクターで全体のサウンドにフィルターやリバーブをかけるというアプローチをしてみました。FGDPはクラブミュージックシーンとも相性が良いので、ターンテーブルの隣にはFGDP!が流行って欲しいですね。

【Become a Bridge Concert Live】Pachelbel's Canon - Leon Symphony Jazz Orchestra × MASAKing

Youtubeより

ー では、FGDPでよく使うキットというと?

MASAKing:まずやっぱりプリセット1番の「Maple」ですね。バランスがいいし、ヌケもいい。どんなジャンルにもパシッと合います。それから、「Vintage70s」。ちょっと古い感じのドラムで、発音が緩めというか。シーケンスを流さず、アコースティック楽器とセッションする時に馴染みがいいんですね。それから「HardRock」は、バスドラムとスネアのふくよかな音が気に入っています。低域でしっかり支えつつ高域をはっきり鳴らせるので叩きやすいですね。この3つのキットは特にオススメです。

ー キットによって叩き方を変えるのでしょうか?

MASAKing:演奏する音楽ジャンルによって、叩き方のアプローチは若干変わってきますが、基本的には自分のベーシックな叩き方でイメージした音がすぐに出るように、各キットの音量バランスなどを細かくエディットして揃えています。例えば「Vintage70s」は、もともとタムの音が少し低いんですよ。ちょっとモコモコしているので、レベルを上げてディケイを短くして、リバーブを切ったりするとスッキリするんですよね。

ー すでにドラムの経験がある人は、そういうエディットも簡単にできると。

MASAKing:このエディット作業が楽しいんですよ。自分の好みのキットを、これ1台で作れるじゃないですか。アコースティックドラムだと、チューニングは結構大変な作業ですからね。それはそれで奥が深い世界で楽しいですが、FGDPだとどこでも気楽にチューニングに没頭できる。まさに「モバイルドラム」の大きな利点の一つですね。

ー エフェクトはどれくらい使っていますか?

MASAKing:フランジャーやフェイザーがかかっているEDM向けのキットがあって、それはよく使っています。あと私は、叩かないパッドを決めてコントローラーにするんですよ。アフタータッチ機能を使うことで、パッドを押し込むとリバーブのセンド量が上がったりピッチが上がるような設定をします。叩いて音を出すだけでなくて、出した音をコントロールできたらいいなと思って考えついたのがこのやり方ですね。電子テクノロジーを積極的に活用したアプローチの1つの例です。私のYouTubeチャンネルにはパフォーマンス動画もアップしています。

ー これまでクラシックパーカッション、アコースティックドラム、電子ドラム、電子パーカッションとさまざまな打楽器を経験してきたMASAKingさんから見て、FGDPの面白さはどんなところにありますか?

MASAKing:ダイナミックに演奏できる電子打楽器の中で、最もコンパクトであり、オールインワンであることですね。スピーカーも付いていて、私自身も夢中になって演奏する時間が本当に増えて感謝しています。日常生活に寄り添っていて、音楽が溢れる豊かな生活を実現する電子打楽器だと思います。これは楽器を楽しむ人を増やしていく上で、最も大事なところかもしれないですね。

Finger Drumming Performance "Disco Breakin" - MASAKing【FGDP】

Youtubeより

ー スピーカー付きというのは大きいですよね。

MASAKing:すごく大事なことですね。私は、ミュージシャンの他に音楽教育家としても活動してまして、全国の小中学校に出前授業という形で教えに行っているんです。ICTとリズムをテーマに電子楽器やタブレット端末を活用して音楽の楽しさを伝えています。ただ、先生たちだけで同じような授業をしてみようってなった時に、スピーカーが必要な楽器だと、“難しそうだからできない”って距離を置いてしまうのです。そのような心配がいらないFGDPは、音楽教育の現場にもどんどん普及できると思っています。私の出前授業でもFGDPを子供たちに演奏してもらってるんですよ。キックとスネアだけでシンプルなビートを叩いてもらって、私はタブレット端末でギターを演奏して、アンサンブルのコツを短時間で掴んでもらってます。

ー それは面白いですね。その音楽教育につながる話ですが、全くドラム経験がない人が、FGDPに興味を持って始めたいとなった時に、どのように練習していったらよいでしょうか?

MASAKing:両手両足で演奏するドラムという楽器を指のみで演奏することになるので、大きく2つの要素が必要かと思います。1つ目は知識面ですね。ドラムは複数の打楽器で構成されていますので、ドラムの演奏を動画などでたくさん見るなどして、それぞれの打楽器がどのように機能して絡み合っているのかを知る必要があります。2つ目は技術面。ピアノなどと一緒で、音がしっかり鳴る指の使い方があるんですよね。例えば、バスドラムは手首を返す感じで叩く。指だけの力で叩こうとするとしっかりとしたビートが出せないんです。あと、スネアやタムを連打する時はスナップを効かせるとか。ピアノは基礎が大事と言われますけど、FGDPも同じだと思います。基本的にはこの2つの要素、知識面と技術面を軸にして進めていくのが上達の秘訣だと思います。ちなみにヤマハさんの公式レッスン動画(※2)は、私が監修と演奏を担当していますので、そちらもぜひ参考にしてみてください。

ー ピアノのように譜面がないので、動画があるのは嬉しいですね。

MASAKing:やっぱりレッスン動画は必要ですよね。レッスン動画の続きのリクエストなどあればどんどん声をあげてほしいです。練習に飽きてしまった場合は、難しいことは抜きにして好きな音楽にただ合わせて演奏するだけでも良いと思います。そして、自分だけの世界で演奏するのも楽しいですけど、是非ともFGDPを使って誰かとアンサンブルしてください。お家で家族や仲間が弾くピアノやギターに合わせたりとか、バンドのスタジオ練習に持って行ったりとか、どんどん気軽に連れ出して欲しいですね。アンサンブルの経験を積み重ねていくと、余裕が出てきて周りの人がやっていることがわかってくる。そうすると音のキャッチボールが生まれてもっと楽しい世界が見えてくるんです。そこに辿り着くと、もう最高ですよね。

ー MASAKingさんはFGDP-50をお使いですが、下位機種のFGDP-30はどう違うのでしょうか?

MASAKing:FGDP-30はお求めになりやすい価格なので、フィンガードラマーが増えることに繋がる機種ではないでしょうか。入っている音は一部のバリエーションなどを除いてFGDP-50とほとんど一緒で、打感もほとんど変わりません。だから、気軽に好きな曲に合わせて叩くというのであれば、FGDP-30で十分だと思います。学校教育にもFGDP-30が相性いいと思いますね。FGDP-50は、創造性を膨らませられる機種です。先日私は、クラシックの楽曲を素材としてサンプリングしてパッドに並べて、リアルタイムに楽曲を構成していくという演奏をしました。そういった先進的なアプローチをすることもできるので、音楽的にとことん追求していきたかったら、絶対にFGDP-50がいいと思います。

ー では、FGDPはどんな人にオススメですか?

MASAKing:ドラマーやDTMをやっている人たちにはもちろんオススメです。それから、何か楽器を始めてみたいとずっと思っている人ってたくさんいると思うんですよね。FGDPは、その背中を押してあげられる楽器だと感じています。あと、弦楽器、管楽器、鍵盤楽器など全ての演奏家のリズムトレーニング用としてもオススメですね。特に、クラシックを中心に勉強されてきたピアノの先生たちは、ポピュラー音楽のリズムを難しく感じていてレッスンで苦労されていると聞きます。FGDPを導入することによって、先生自身が練習するだけでなく、生徒さんへのリズム学習にも活用できますよね。子供の頃からFGDPが演奏できる環境が世界中で増えて欲しいなと常々思っています。

MASAKing

ー そうなっていったら面白そうですね。

MASAKing:カッコいい演奏者が増えるともっと普及していくと思うんですよ。私もカッコいいミュージシャンたちの演奏に衝撃を受けて、楽器を始めたり夢中になったり練習するようになったというお話しを先ほどからしてきましたが、やっぱり憧れって大切な要素なんですよね。もちろん私もこれからもっと精進していく所存なのですが、若い子たちの中からカッコいい演奏者がたくさん出てきたら、さらに盛り上がっていくのかなと期待しています。

ー この先のご自身の活動ではどんなふうにFGDPを使っていきたいですか?

MASAKing:今はFGDP-50をメインに使っていますが、将来的に上位機種が出てくる可能性もありますよね。そうしたらもっともっと創造的でクリエイティブな演奏もしてみたいです。もちろん今の機種でも、使い倒せばもっとできる余地がありますし、電子打楽器奏者という自分のポジションとして、まだ誰もやってないアプローチを開拓し続けたいなと思っています。それを世界に向けて発信して、電子楽器の可能性をどんどん広げていくような活動をしていきたいですね。この“フィンガードラム専用楽器“が生まれたことで、音楽を楽しむ人が世界中で増えているのを感じています。私自身も、演奏家として、音楽教育家として、そのムーブメントの一端を担えるような存在になれたらと思っています!

MASAKing ミュージシャン / 音楽教育家 / プロデューサー

20数年にわたり電子楽器にこだわり続ける唯一無二のプレイスタイルによるクリエイティブな音楽活動は国内外で評価されている。ライブツアーへの出演や演出指導、人気テレビ番組への出演他、数々の電子打楽器のアドバイザーなど幅広く活動。全国の小中学校で最新の出前授業を実施。

※1:FGDP開発者インタビューvol.3-Pad Development

※2:FGDP-50/FGDP-30: スペシャルコンテンツ

製品情報

Top view of FGDP-50

FGDP-50

希望小売価格: 39,600 円(税込)

  • 2023年9月 発売

FGDP-50は、音源、スピーカー、充電池を内蔵したフィンガードラム専用楽器です。より多くの機能と幅広い性能を備えたFGDPシリーズの上位モデルです。

Top view of FGDP-30

FGDP-30

希望小売価格: 25,300 円(税込)

  • 2023年9月 発売

FGDP-30は、音源、スピーカー、充電池を内蔵したフィンガードラム専用楽器です。指を使ったドラム演奏”フィンガードラム”がいつでもどこでも気軽に楽しめる、FGDPシリーズのスタンダードモデルです。

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