佐藤タイジ(THEATRE BROOK) インタビュー
ロックバンドTHEATRE BROOKのボーカル、ギタリストであり、バンドサウンドを牽引するフロントマン、佐藤タイジ。圧倒的なカリスマ性と独自の感性、そして音圧感あふれる豪快なギターサウンドとテクニックは、ロックの美学を体現しているといっていいだろう。2010年2月にはTHEATRE BROOKとして5年ぶりのシングル「裏切りの夕焼け」をリリースしスマッシュヒットを記録するなど、ますます精力的な活動を展開している。その佐藤タイジが新しいヤマハSGのスペシャルバージョンをオーダーしたという。いったい、どんなSGなのだろうか?
- 最初にエレキを手に入れた時のことを教えてもらえますか?
- 中学二年の時、親に「誕生日プレゼントをキャッシュでくれ!」って言って買ったのが最初のエレキギター。レス・ポール・タイプだったね。形が綺麗だなと思って。それ以来メインギターはずっとレス・ポール・タイプを弾き続けてる。
- 当時はどんな曲を演奏していたのですか?
- 音楽が好きな姉の影響もあってビートルズが好きだったんだけど、中学校で俺に「バンドをやろう」って言ってきたヤツがディープ・パープルのベスト盤を持ってたので、まずはディープ・パープルのコピーをやって、それが最終的にアイアン・メイデンになった(笑)。でも高校になった時「もうヘビメタはいいや」と思ってビートルズや自分のオリジナルを始めたけどね。
SG1802はクランチサウンドが気持ちいい。
ビグスビーはニール・ヤングの影響だね。
今回ヤマハのSGを使おうと思ったきっかけは?
今までハムバッカーのギターしか持っていなかったんだけど、P-90があればサウンドに幅が出ると思った。ソロだけじゃなく、クリーントーンでカッティングに使ってもいいしね。それでP-90のギターをしばらく物色していたら、ふと新しいヤマハのSGにP-90が載ってるのを見つけて「あ、これいいじゃん」って。ヤマハのSGは前から1本持っていて、ギターとしての質が高いのはよく知ってたので。俺にとってヤマハSGと言えばサンタナ。サンタナは大好きだったから。
メインのギターと比較していかがですか?
SGの方が少しアタック感が強いかな。俺はそこが好きだね。
タイジさんのSG1802には特注でビグスビー・アームが装備されていますね?
ビグスビー・アームを付けたのはニール・ヤングの影響。ニール・ヤングごっこがしたかったんだよね、せっかくのP-90だし。サンタナの上でニール・ヤングをやる。すごい贅沢!(笑)
- 弾いてみて印象はどうですか?
- 音がザクッとしてクランチサウンドがすごく気持ちいいね。SGは元々音がシャープなんだけど、これはピックアップがP-90だから、さらに歯切れ良くなってる。
- ビグスビーを載せたことで音は変わりましたか?
- 弾き比べるとよくわかる。ノーマルのSG1802は音がハッキリして明瞭なんだが、ビグスビーを載せると音が若干曖昧になるね。なんかひと味入る気がする。そこがいい。言ってみればハンドルの「遊び」? だから運転が楽しいっていうか。ビグスビー・アームによって「自由な何かが載っている」感じがするでしょ(笑)。それにシンクロナイズドトレモロと違って、効きが上品。音も違う気がする。見た目はゴツいのに、実は育ちがいい感じなんだよね。不良だけど実は老舗の息子、みたいな(笑)? いいよね。
フィニッシュもナチュラルにゴールドパーツで綺麗ですね。
色気があって、すごく美人なギターだよね。ナチュラルの色味が20年ぐらいするといい味になると思うよ。
SGは基本設計がしっかりしてるから
ピックアップの個性がよく出る。
- 新しいSGの3モデルについて感想を聞かせてください。
まずはタイジさんと同じ『SG1802』から。 - やっぱクランチ系がいいよね。P-90は出力が小さい分、歪んだ時にジャラっとした感じが出る。中音が締まって、ちょいドンシャリになるのかな? ぜひザクザク弾いてほしいね、クランチ系で。これはちょっとレベルの高い話になるんだけど「ちゃんと不器用に弾いてほしい」。あのニール・ヤングを見なさい、と。たぶんガキにはわからないので、置いていきます(笑)。ソロを弾くときも不器用な方がいいよね。エフェクターもちょっと踏み違えたりしてね。
- スタンダードな『SG1820』はいかがですか?
- これは老舗の味。とても完成度が高い。あの「サンタナ先生も弾いた」という先代から続く王道の音だね。メイプルトップ、マホバック、これがヤマハのSG!という音。ジャンルを選ばないしシャープでエッジがあるサウンド。フィニッシュも綺麗だよね。このギターはちゃんと練習して上手に弾いてくれ!「腕ばかり良くっても、いい音楽になるかどうかは別やけどな」とは付け加えておくけどな(笑)。
- EMGピックアップ搭載の『SG1820A』は?
- 弾いてみると、なるほど「EMG」。さすがだね。ものすごく綺麗に歪むんやね。どの帯域も素直に出てバランスがとてもいい。一番極悪なルックスでゴンゴンに歪ませられるんだけど、実はすごくヌケもバランスもいい。クリーンで弾いてもハイファイな音。実は『SG1820』よりも優等生的なぐらいだよね。コンテンポラリーというか。見た目はワルなのに「なんや、お前頭ええやん」って(笑)。こんなルックスなのに相当なインテリ。オールマイティでどんな音楽にも対応できるポテンシャルを持ってる。
- こうやってSGを弾き比べてみていかがですか。
- 違いはピックアップだけなのに、どのモデルにもそれぞれしっかりと方向性を持った個性がある。それぞれのピックアップの個性がよく出ている。きっと土台になっているSGの素材や基本設計がしっかりしてる証拠だと思う。歴史やエピソードの面でもSGには、ギタリストを魅了するだけの魔力があるんだよね。俺みたいにややこしいギタリストにもシックリくるし(笑)。これからもずっと続いていくべきモデルだと思う。
NXは音がラインでも素直に出てくれる。
それに耐久性も高い。
- エレクトリックナイロンストリングギターNXもお使いですね。
- NTX900FMというモデルなんだけど、半年ぐらい前に手に入れて今鍛えているところ。NXがいい点は、ラインで出しても音がちゃんと素直に出てくれる点。それと耐久性だね。エレガットは音の美しさを追求するモデルも多いけど、毎日ライブをやるようなプロのレベルで見ると、音が良いだけではダメで、耐久性も重要。いい音でも実際に現場では使えないんじゃ困るわけで。「現場に耐える耐久性」と「音の美しさ」のバランスを考えると、NXは、かなりいいバランスだと思う。
まぁ俺の使い方が異常であって、シールドをそのままマーシャルに入れるし、演奏は全部ピック弾きだし、アタックも強いということで、ギターの負荷はかなり高いけどね。たいていの場合はギターが負けちゃう。最近のギターは特にヤワになってる気がするけど、NXはいいね。頑張ってる。チューナーがついているのも「あ、便利かも」って思ってます(笑)。
最後にギターファンにメッセージをお願いします。
みんな、こんな時代だからこそ、自信を持とう!ロックには理由のない巨大な自信が必要だからね。それと今や、B‘zの松本さんのように、日本人のロックギタリストがグラミー賞を受賞する時代。本当に素晴らしいよね。もう時代は変わってる。ギターは生涯をかけるに値するもの。だから、ギタリストのみなさん、ギターを止めないでください。ギターといっしょに育ってください。僕もこのSGをずっと弾き続けるつもりですから!
profile : 佐藤タイジ
圧倒的なカリスマ性と他に類を見ない独自の感性を持ったギターサウンドでTHEATRE BROOKのサウンドを牽引し、作詞、作曲を担当する。
思わず口ずさんでしまうPOPセンスは、近年更に磨きがかかる。また、別ユニット“Sun Paulo” <サンパウロ>(メンバー:佐藤タイジ+森俊之)の活動も積極的に展開し、2009年4月にリミックスアルバム、更に6月にオリジナルフルアルバム「One People」をリリース。サンパウロ主催イベント「WISDOM」なども継続的に開催している。
他にもケミストリー、レヨナへの楽曲提供、櫻井敦司、MCU、井手麻里子への楽曲提供&プロデュース等、幅広く活動を展開する。