幕開けは大竹くみ作曲「六つのマリアの歌」 第48回甍演奏会

甍演奏会は今年で48回を数えました。「早稲田大学コール・フリューゲル」が母体となり、その弟分「早稲田大学高等学院グリークラブ」と、そのOB等から成る「いらか会合唱団」の3団体が毎夏に行う演奏会です。16歳高校生から80歳OBまで3世代、約百名の男声合唱は、おそらく他には類を見ないでしょう。

今年の演奏は4部構成。その幕開けに「六つのマリアの歌/作曲・大竹くみ」を清水昭指揮で演奏いたしました。心地よい響きの杉並公会堂大ホールにオルガンの素晴らしい音色とともに歌声が舞いました。 プログラムより曲目解説(文・戸田拓〈いらか会合唱団〉)を以下に転記します。

『響きあう2つの振動』

「六つのマリアの歌」は、作曲家、ピアノ・パイプオルガン・電子オルガン演奏家として幅広く活躍する大竹にとって初のオリジナル男声合唱作品。昨年、早大コール・フリューゲル54回定演で初演(清水敬一指揮)され好評を博した。テキストはラテン語の聖句に基づき、構成等は金澤正剛氏が協力した。楽曲は大天使ガブリエルの受胎告知、イエスの刑死に悲しむ姿など聖母マリアの生涯から代表的5つの場面を経て、多くの作曲家が手がけた「アヴェ・マリア」で結ばれる。2曲はア・カペラ、他はオルガンと共に。上記定演へ寄稿した大竹は「重厚な男声合唱とそれを支えるオルガンの組合せは、合唱に関わるようになってから一番魅力を感じる構成でした。持続音同士が交わり合って新たな振動が生み出されるような感覚は、ヨーロッパの教会で出会ったものなのかもしれません」と語っている。ラテン語の柔らかさを生かして響き合う中低音の豊潤なハーモニーは、伝統的な教会音楽の見事な換骨奪胎となっている。同時に、生まれたばかりのイエスとともに祝福を受けるために神殿に赴くマリアの喜びを表すかの様に、溌刺としたリズムで軽やかに転調を繰り返す3曲目なども、オルガンと男声合唱の表現に新たな風を吹き込むものとして注目されよう。

「六つのマリアの歌」誕生には、私財を投じて新しい合唱作品創造に協力している篤志家・池田規久雄さんからの委嘱があったことを付記する。

いらか会合唱団 藤村正

エレクトーン奏者/大竹くみ

2009年8月8日 杉並公会堂