オーケストラ伴奏でフォーレ「レクイエム」を熱唱! 男声合唱団「シャウティング フォックス」 結成30周年記念 第10回定期演奏会

千葉県我孫子市の住人が中心の、平均年齢68歳、合唱歴60年近い大ベテランもいるが、入団するまで歌ったことのない者が多数、という男声合唱団が我ら「シャウティング フォックス」である。2007年の秋、結成30年、第10回定期演奏会で取り上げる曲を検討しはじめた。指揮者大久保光哉先生(敬意を込めて『師匠』と呼ばせていただいている)の指導のよろしきを得て、発声が目に見えて進歩し、木下保氏が男声合唱に編曲した信時潔の名曲「沙羅」をしっかり歌い上げたころだった。そこで巡り会ったのが吉岡弘行氏編曲のフォーレのレクイエム男声合唱版。オーケストラ伴奏でフォーレを歌う。「面白そう、やろうじゃないの。」軽率と言えば軽率、身の程知らずの決断だった。

優雅、繊細、精妙なフォーレの音楽の手強さに出鼻を挫かれた。「歌も歌える合唱団」と自称して周囲の失笑を買い、「練習後の酒盛り」を団員勧誘の目玉にしているオヤジどもである。同じパートで音がいくつもある。誰の音程が正しいのだ? いやみんな間違っている! こんな曲やるんじゃなかった。

だが高度成長期に企業戦士として頑張ってきた根性が甦る。5月から土日全部、プラス合宿2日、時にパート練習を含めると1日6時間の猛練習。好きなゴルフも断り(酒は断たず)日々練習。家族はあきれ、ほかの合唱団から「狐が化けたか、気がふれたか」と怪しまれ、悲しいかなそれでも成果は現れない。

8月25日、渋谷エレクトーンシティでオケの練習を見学。プロの厳しさを目の当たりにして、こりゃ大変だ、師匠に恥をかかせてはならぬ。幹事一同気を引き締め、とりあえず師匠とエレクトーン奏者伊藤佳苗嬢を引っ張り込んで、都内某所でスキヤキ宴会を開いたものだ(こういう話の飛躍がフォックス流)。

待ったなしの9月13日の本番、「Kyrie」の歌い出しから確かな手応えを感じた。練習は裏切らない。初めてのオケとの協演に気後れもせず、多彩な音色を響かせるエレクトーンにも負けず、老いたる狐は熱唱した。終曲「In Paradisum」の響が会場に静かに消えた。やった! 万雷の拍手を受ける狐は少年のように頬を紅潮させていた。感極まり涙を浮かべる純情狐もいた。

男声合唱団シャウティング フォックス副団長 阿部祐一

エレクトーン奏者/伊藤佳苗

2009年9月13日 我孫子市福祉ふれあいプラザ