ロッシーニ「小荘厳ミサ」に寄せて 大田文化の森合唱団第3回定期演奏会

縁あって「大田文化の森合唱団」の指揮者としてお世話になり早4年目、定期演奏会も3回目を数えました。今回の演奏会のメインプログラムに、ロッシーニの「小荘厳ミサ(ミサ・ソレムニス)」を取り上げました。この曲との出会いは今をさかのぼること二十数年前、まだ私が学生だった頃、授業で取り上げられたことがきっかけです。第1曲目前奏を聴いた瞬間に、体中に電流が流れたような衝撃が走ったのを、今でも鮮明に覚えています。

この「小荘厳ミサ」の小は、オーケストレーションがピアノ2台とハーモニウムという小さな編成の意で、またロッシーニ自身が合唱12名と指定しています。しかしその内容の充実度は大ミサと呼んで良いでしょう。実はこの曲は1回目、2回目の公演にも取り上げ、全曲演奏にこぎつけるまでに、3年の月日を要してしまいました。

1回目の演奏会ではピアノ1台、2回目はピアノ1台と電子ピアノで、そして今回の演奏会に際しては、ピアノ2台とハーモニウムを使って……といきたかったのですが、舞台のスペースがピアノ1台分しかとれず、ハーモニウムはそれほど音量が出ないので、60人の合唱団員が舞台に上がると、かき消されてしまいます。エレクトーン奏者の西岡奈津子さんに相談したところエレクトーンで大丈夫ということ、また本番の演奏を快く引き受けてくださいました。西岡さん、ピアノの渡辺あけみさん、ソリストの皆さん、何にもまして3年間この曲と向き合ってくれた合唱団の皆さんのおかげで、感動的な演奏会になったと思っています。

何事も派手好みと言われていたロッシーニが、フルオーケストラの大合唱にしなかったのは、どんな思いがあったのでしょうか。彼自身の言葉に、「こんな私が、あなた(神様)のために心を込めてつくりました。ほんの少しでも喜んでいただければ嬉しいです」とあります。地位も名声も手に入れたロッシーニが、晩年にどのような境地に至って、この曲を作曲したのか…。私には答えはわかりませんが、「こんな私が、あなた(ロッシーニ)のために心を込めて演奏しました。ほんの少しでも喜んでいただければ嬉しいです」そんな思いで、3年間を臨んでみました。

指揮 生駒文昭

エレクトーン演奏/西岡奈津子

2009年12月19日 大田区民ホール