目玉はフォーレ作曲『レクイエム』ニ短調 ユーフォニック合唱団 2010年定期演奏会

一昨年、創立75周年を迎えた当ユーフォニック合唱団は、今年4月18日14時より、千駄ヶ谷駅前「津田ホール」に於いて、表題の『レクイエム』をメイン・プログラムとした定期演奏会を開催した。

第一部では、三善晃編曲『山田耕筰による五つの歌』と高田三郎作曲『水のいのち』(全曲)を演奏。それぞれ違った難しさはあるものの、得意の「日本語」による合唱曲なので、まずはのびのびと、そして情感を込めた演奏を繰り広げることができた。

休憩の後の第二部では、今回の演奏会の目玉、フォーレの『レクイエム』をソプラノ独唱・森岡紘子、バリトン独唱・鈴木優のソロ、合唱はユーフォニック合唱団に加え、茨城県より石岡混声合唱団を招き、総勢50数名で、また伴奏もエレクトーン・小林由佳、ピアノ・朝岡真木子の豪華布陣で演奏した。

エレクトーンの新たな可能性として、オペラやその他の演奏会で、オーケストラに代わる楽器としての演奏をよく耳にするようになったが、楽器そのものの音色の追求、操作性の進歩、そして何よりも演奏者の技術と音に対する鋭敏な感性の融合などにより、今やエレクトーンは「代用として」という言葉を捨て去らねばならないほど、素晴らしい楽器として発展してきた、と私自身も常日頃感じている。

そんな思いもあって、また友人でもある小林由佳さんという素晴らしいプレイヤーを得て、この日のプログラムにはぜひフォーレの『レクイエム』を、という決断を下した。そして作曲家でもある当団の名ピアニスト朝岡真木子さんとのコラボレーションで、生のオーケストラにも負けない、立体的なアレンジで演奏していただけたことは、正に喜びの極みであった。

さて、この日の演奏を振り返ってみると、合唱団もそんな伴奏の素晴らしさに触発されたのか、練習では出せなかったような繊細さ、また時にはダイナミックな表現で、満足な演奏をすることができ、また満員の聴衆の方々にも大変喜んでいただけたことで、これまでの苦労や努力が一気に報いられた気がした。

小林さん、朝岡さんとも、さまざまなジャンルでまた新しい挑戦をしようと誓い合った、この日の演奏会であった。

エレクトーン演奏/小林由佳

指揮者 河野正幸(聖徳大学音楽学部教授)

2010年4月10日 津田ホール