音楽の持つ力を改めて確認 NHK東京児童合唱団ユースシンガーズ第4回演奏会

演奏会は東日本大震災から1ヵ月、そんな中、開催自体を検討し、日々葛藤がありましたが、メンバーと共に「演奏すること」に役目を見出した私たちは、気持ちを改めて本番に向かうことといたしました。

本番当日は未だ停電、テレビの報道などから心身ともに緊張が続いている頃でしたが、私たちの心配をよそにこれまでに感じたことのない空気が会場いっぱいに溢れていました。メンバーも今できる精一杯の力でお客様へ、そして東北へ向かって演奏をしていたと思います。

「祈りと動物たちの活躍する曲」を集めたプログラム、エレクトーンはこの演奏会の重要な場面での登場となりました。それはプログラムの中で1曲、そして最後、その日ご出演いただいたゲストの皆様がご参加いただいた1曲の2回でした。

一つは現在エストニアに在住しエストニア国立男声合唱団のメンバーとして世界各地で演奏活動に従事、また自身では作曲・合唱指導をされている西村英将さん作曲の『2群の女声合唱のための「ひめくりささげうた」』を初演。この曲は、昨年の夏に「祈りの歌を作ってください」とお願いし作っていただいた曲で、作曲者の強い希望からオルガンとチェロの起用となりました。5曲で構成された曲は復活祭に近いことからキリストの誕生から受難そして平和までの内容をドイツ語・英語・ラテン語・イタリア語・エストニア語・日本語の歌詞で書かれました。演奏していると「祈る心に国境はない」という実感があります。期せずして大震災と時を同じくしたことも深い意味があったように思います。初めて聴かれたお客様の記憶にも強く残ったようです。

二つ目は演奏会の最後、この日ゲスト出演いただいた皆様全員と共に「千羽鶴」を演奏いたしました。「千羽鶴」は長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典の被爆50周年を記念して作られた曲でこちらも思いが重なっていたようです。

どちらの曲もオルガンの存在が曲を彩り、オルガンの音に誘われて聴き手の心に染み入っていったのを感じます。音楽の持つ力を改めて確認することができた演奏会となりました。

指揮/金田典子

エレクトーン演奏/大竹くみ

2011年4月10日 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール