オペラ合唱の名曲を感情豊かに上演 横須賀芸術劇場合唱団定期演奏会 Vol.38

横須賀芸術劇場専属のアマチュア合唱団として、1995年9月に創立し、年末の「第九」演奏会中心に、これまで唱歌、宗教曲、オペラコーラスなど、幅広いジャンルの多くの楽曲も披露しています。指揮者には二期会のテノール歌手、梅沢一彦氏を迎え、週1回の練習を基本に活動しています。

今回の演奏会は、オリジナル編曲の日本の歌(「美しき日本の歌vol.3」)とイタリアオペラ3作品(ヴェルディ『ナブッコ』、『椿姫』、プッチーニ『つばめ』)から合唱の名場面をピックアップした2部構成の内容です。

前半の「美しき日本の歌」は大正の童謡8曲を寺嶋陸也氏が編曲。当時の雰囲気と歌が元々持っている味わいを保つように作られています。20代から70代の110名の合唱メンバーたちは、日本語を美しく丁寧に歌い、時代背景を思い起こさせる演奏でした。

そして、後半のイタリアオペラは、ソリストたちの重厚な歌唱とともに、絶望の中での希望(ナブッコ)、愛を育む喜び(つばめ)、侮辱に対する怒り(椿姫)といった喜怒哀楽を、演出をつけ、感情豊かに歌い上げました。演奏は、ピアノ、エレクトーン、パーカッションの編成で、合唱が動きを伴うため、オーケストラピットでの演奏です。

今回のエレクトーンはオペラを演奏する上で重要な役割を果たしました。ピアノとエレクトーンで弦楽器と管楽器のパートを振り分けることで、オーケストラのような重厚なサウンドを生み、また、パーカッションがアクセントとなり、迫力ある音が生まれました。この演奏会でエレクトーンを担当したのは江尻弘子氏。楽曲の特徴を的確に捉え、効果的な響きと丁寧な音作りをしていただきました。前回の定期演奏会でもご出演していただき(この時はロイド=ウェバー「レクイエム」)、今回が2度目の共演ということもあり、合唱が演奏しやすいような工夫も随所に見られました。

出演者の歌う喜びと聴衆の聴く喜び、2つの喜びが相通じ、互いが満たされた空間の中で、幸せなときを刻む。合唱の魅力を存分に味わえた演奏会でした。

公益財団法人横須賀芸術文化財団//五十嵐 厚

エレクトーン演奏/江尻弘子

2012年3月18日 よこすか芸術劇場