大聖堂に響きわたるレクイエム コール・クライス第3回定期演奏会

三大レクイエムの一つにも数えられるフォーレの『レクイエム』に加え、いまをときめく現代英国の作曲家、ボブ・チルコットが精魂込めて書き上げ、2010年に初演されたばかりの『レクイエム』を、ひとつの演奏会で歌う。壮大なスケールの企画に胸を躍らせながら音取りを進めていた最中の、昨年3月11日、大勢の人の人生を一変させる未曾有の災害が東日本を襲いました。

一時は、練習を続けられるのかどうかさえも危ぶまれただけに、命の尊さや、歌えることの喜びをかみしめながら迎えた1年3ヵ月後の公演当日、東京カテドラルの大聖堂に集まった満員のお客様を前に祭壇の前に立ったときは、胸の奥から熱いものがこみあげてくるのを感じました。

コンサート・ホールではなく教会で、しかも東京カテドラルで演奏会をやりたいと、指揮者の箕輪健先生に提案されたときには、正直驚きました。しかし、フォーレのレクイエムの初演がパリのマドレーヌ寺院であったように、レクイエムのような宗教曲を演奏するに当たり、教会の響きの中で、美しいハーモニーを作り上げるという挑戦も、合唱団としては必要だと信じて、準備を重ねました。

丹下健三氏の設計による美しい大聖堂。その天井の高さゆえの残響の長さを考慮して、カテドラル教会のパイプオルガンの使用は断念しましたが、カテドラルでの演奏経験をお持ちの大竹くみ先生の助言に従い、エレクトーンを使うことになりました。大竹先生の爪弾くエレクトーンの豊かな音色と、息のあったアンサンブルが、ソプラノの大森絵理先生、テノールの山川高風先生とともに、この演奏会を成功に導いてくれました。

演奏者と観客が一体となって大聖堂に響きわたる音楽に浸ることができた2時間余。歌を歌ってきてよかった。心から思えたひと時でした。このひと時があるからそ、今日も、明日も、私たちは歌い続けるのです。演奏会を成功に導いてくださった箕輪健先生、小林恵美先生、澤田亜希先生、そして大勢の皆様の支援に心から感謝いたします。

代表/山内祐治

エレクトーン演奏/大竹くみ 写真/菊池元宏

2012年6月22日 東京カテドラル聖マリア大聖堂