大好評を博した2台エレクトーン ベートーヴェン第九交響曲 日本初演100周年記念演奏会

今年2018年の6月1日は、わが日本でベートーヴェンの第九交響曲が初めて演奏されてから、ちょうど100周年の記念日でした。

この貴重な記念日に、第九が100年前に演奏されたドイツ人俘虜収容所の跡地が今も現存する徳島県板東をはじめ、ドイツ人俘虜たちに人道的に接したことで高く評価されている松江豊寿の出身地、福島県の会津若松など、日本全国的に第九日本初演100周年を記念する催しが展開されるであろうと以前から予想していた私は、私自身も第九の記念演奏会を、他にはない独特の内容で開催しようと計画しておりました。

実行委員会が結成され、100年前の板東俘虜収容所ではドイツ兵たちが、第九の譜面を男声合唱に編曲して演奏していたという事実を再現するべく、男声合唱に私が編曲した版と、原曲どおりの混声合唱版とを、一夜に両方演奏して聴き比べてみようと提案されました。

そして伴奏は、エレクトーンの良さを人々に知っていただく絶好の機会になると考えた私は、2台ピアノでもなく、生オーケストラでもなく、2台エレクトーンを提案し、実行委員も皆興味を持ってくれました。

合唱は、公募によって、男声合唱80名、混声合唱160名が集まってくれました。2つの合唱団が同時並行で、8ヶ月にわたる練習を行いましたが、その一方、エレクトーン奏者の山木亜美氏、柿﨑俊也氏と指揮者によるオケ練習、また独唱者との合わせ練習も何度も行われました。

そして、本番3週間前から、合唱とエレクトーンの合わせが始まりましたが、エレクトーンの素晴らしく立体的な美しい響きと、二人の奏者の手も足もフル回転の巧みな演奏ぶりに、合唱団員皆が、驚嘆の声をあげました。

いよいよ迎えた本番では、さくらホール満員のお客様が、二人のエレクトーン奏者に惜しみない拍手を送ってくれました。

「生オーケストラの迫力と全く変わらない。木管楽器のソロや、弦楽アンサンブルの音色は特に優れている」と多くの賛辞が寄せられ、他の曲でもエレクトーン協演の依頼をしたいと考え始めた人々が何人もいたようでした。

この第九記念演奏会そのものが大成功でしたが、エレクトーンの素晴らしさをあらためて人々に認識していただく大変良い機会となることができたことを、心から嬉しく、誇らしく思いました。

しかし私としては、こうも考えています。エレクトーン奏者の、スコア読み、鍵盤楽器へのアレンジ、音作り、奏者同士の調整、そして指揮者や独唱者や合唱団との合わせ、と、その労力の膨大さ、そこに費やす時間の膨大さを私はよく知っているだけに、エレクトーン奏者への依頼は、決して、生オーケストラの代わりに経費節約を目的とするべきではない、と。

オーケストラ100人に相当する膨大な仕事の量にエレクトーン奏者たちは日々骨を折っているのです。相応の予算を組む努力をすることは、主催者、依頼者の課題であると思いますし、そうであるべきことを理解してくれる人を増やすために、私自身も努めてまいります。

著・作曲家、指揮者、第九日本初演100周年記念演奏会 実行委員長/安藤由布樹

第九交響曲 第4楽章 混声合唱オリジナル版。指揮:安藤由布樹

第九交響曲 第4楽章 男声合唱版。指揮:岩佐義彦

エレクトーン演奏/山木亜美、柿﨑俊也

2018年6月1日 渋谷区文化総合センター 大和田さくらホール