合唱との一体感、オーケストラの神髄に迫る演奏 第11回ロッソ・ヴィーヴォ混声合唱団 定期演奏会 ドヴォルザーク レクイエム

本番を迎える約2カ月前の8月1日、主催者であるロッソ・ヴィーヴォ混声合唱団の団長から「コロナ感染拡大のため、ステージ上が密になるので、今回の公演はオーケストラではなくピアノ伴奏だけで演奏したい」という申し出があった。すでに近隣のアマチュア音楽家を集めてメンバーが決まり、練習を始めようとしていた矢先、直前の青天の霹靂であった。申し出を受けた私は一瞬目の前が真っ白になったが、即座にエレクトーン2台とティンパニでオーケストラを代用する形でやらせてもらえないかと提案し準備に入った。90分の大曲、しかも本番まで2カ月しかない状況で塚瀬さんと柿﨑さんは快諾をしてくれた。私はエレクトーンでのオーケストラ演奏を25年ほど前から何度も経験していた。5台のエレクトーンを駆使して「春の祭典」にも1年がかりで挑んだ。ピティナのコンクールでは協奏曲部門を担当させていただいたのも懐かしい思い出だ。

今回は充分な時間がなく大変恐縮だったが短期間で譜割りやレジストを決めていただき、数回の合わせを経て前日のリハーサルを迎えた。お二人はオーケストラのフルスコアから繊細なニュアンスを読み取り、私のイメージ通りにバランスよく音楽的センスの抜群な演奏でまとめていってくださった。合唱団の皆さんは、エレクトーンによるオーケストラ演奏に触れ、大きな感動と喜びに包まれたようだ。士気も一段と上がってきた。

本番では一音一音を大切に紡いでくれ、ティンパニが加わることによってサウンドにさらなる深みを加えることもできた。集中力溢れる演奏が90分間続き、大成功に演奏を終えることができたのはプレイヤーのお二人の強力なサポートのおかげである。心より御礼を申し上げたい。合唱団とエレクトーンのコラボレーションは、まだまだ可能性が広がる世界だと思っている。昨今クラシカルな演奏を得意とする優秀なプレイヤーも増えたので、今後の展開が楽しみである。

著・指揮者/田久保裕一

エレクトーン演奏/塚瀬万起子、柿﨑俊也

2022年10月9日 船橋市民文化ホール