合唱団の新たな歴史を刻むコンサートを開催 六本木男声合唱団ZIG-ZAG 築地本願寺コンサート

結成24年となる六本木男声合唱団ZIG-ZAG。2023年11月22日19時より、浄土真宗本願寺派「築地本願寺」の本堂でのコンサートが、初めて開催された。ニューヨーク「カーネギーホール」やバチカン「サン・ピエトロ大聖堂」をはじめとする多くの海外公演、「サントリーホール」や「東京カテドラル聖マリア大聖堂」など多くの国内公演を成功させてきた合唱団にとって、「築地本願寺」での公演は、新たな歴史を刻むことになった。

出演は、村松稔之(カウンターテナー)をゲストに、初谷敬史(指揮)、岩井美貴(ピアノ)、清水のりこ(エレクトーン)、六本木男声合唱団ZIG-ZAG(合唱)。

コンサートの前半は、六本木男声合唱団ZIG-ZAGの団長である三枝成彰氏の編曲による美しい日本の歌の数々。「待ちぼうけ」「夏は来ぬ」「村祭」「汽車メドレー」「あわて床屋」「荒城の月」の6曲を披露。六本木男声合唱団ZIG-ZAGは、2022年と2023年に開催された三枝成彰氏の編曲による『日本の歌の祭典』に出演している。これは、近年、日本の歌の数々が忘れさられていくのを嘆いた三枝氏が、次の世代に歌い継がれていくようにと願いを込めたコンサートである。このコンサートは、今年も7月10日(水)にサントリーホールで開催する予定。

後半は、三枝成彰作曲のカンタータ『天涯。』(自由人の祈り)より第6曲、第7曲、第8曲を披露した。これは、ソニー株式会社の創業者のひとりであり、名誉会長であった故・盛田昭夫氏の遺族から委嘱された作品である。作詞は、作家の島田雅彦氏が、盛田氏の生き様や足跡を遺族に伺った上で、この作品のために書き下ろしたものだ。第6曲は、恋愛讃歌である。ラフマニノフ風、またはリチャード・クレイダーマン風に作曲された三枝氏の甘美なピアノ・ソロに乗せて、さまざまな恋のシーンが描かれる。個々は滅びる存在にあるが、叡智は未来に引き継がれるという内容である。第7曲は、オルフ『カルミナ・ブラーナ』を思わせる壮大なオスティナートと対位法とを駆使した圧倒的な音楽である。「未来は今よりもう少しましになる」という祈りの言葉に導かれて、人類の歴史の営みが歌われる。第8曲は、弦楽によるレクイエムで開始される。中間部には再び第6曲の恋のメロディーがあらわれる。そして、後半に歌われる詩は第1曲の歌詞に戻り、輪廻転生が象徴される。「なぜ、地球は丸いか知ってる? 別れた人同士がまた何処かで出会えるように、神様が地球を丸くしたからだよ」という大航海時代の思想によって書かれた祈りが、歓喜のメロディーに乗せて高揚しながら、何度も、何度も繰り返されていく。圧巻は、清水のりこ氏によるエレクトーンであった。大編成のオーケストラサウンドを、大胆に、また繊細に表現し、満席の本堂を感動の渦に巻き込んだ。

六本木男声合唱団ZIG-ZAGは、2025年、スペイン「サグラダ・ファミリア」でのコンサートを予定している。

著・指揮者/初谷敬史

エレクトーン演奏/清水のりこ

2023年11月22日 築地本願寺