エレクトーンとピアノによる協奏曲 ~知らざれる名曲の饗宴~

ピアニスト服部真由子、横山歩によるコンサートが催された。二人は東京藝術大学大学院修了後フランスに留学。現在、洗足学園音楽大学講師という共通項を持ち、ソロ活動はもちろんのことデュオのコンサートも多い。今回のテーマは「知らざれるピアノ協奏曲」。オーケストラパートをエレクトーンで演奏するのは同じく洗足学園・電子オルガンコースの講師・卒業生。指揮者なしで息のあった、質の高い仕上がりを聴かせた。

第一部の協奏曲はファリャ作曲「スペインの庭の夜・ピアノとオーケストラのための交響的印象」。ファリャはスペインを代表する作曲家でフランス、特にラヴェルの影響を多く受けている。……ということで協奏曲の前にピアノソロでラヴェルの「鏡」より3曲を横山が演奏しファリャへの筋道をつけた。協奏曲演奏は服部(P)、橘光一、関口寿子(EL)。

第二部のソロは服部によるプロコフィエフの「ピアノのための10の小品」より5曲を演奏。この選曲にあたっては寺島尚彦作曲「ピアノと小オーケストラのための協奏曲」を完成させて行くにつれ、師・池内友次郎やフランス/ロシアの影響が見えたからという。協奏曲演奏は横山(P)、桑原哲章、伊藤佐智、堀麻衣子(EL)。

当日のプログラムに寺島尚彦氏の次女・夕紗子さんが書いている文章がある。それによると、寺島曲の初演は1954年3月23日、日比谷公会堂。寺島が東京藝大を卒業する卒業演奏会であったそうだ。寺島氏はその後楽譜を無くしてしまった、と家族に話し、この曲は幻の協奏曲となっていた。が、没後(2004年3月23日没)、遺品の整理中に楽譜が出てきたとのこと。そして発見から5年が経過、今回55年ぶりの再演となった。

ソロと協奏曲を繰り返す二部構成。聴く側としては妙に納得し、一つ一つの音、あるいは曲に集中して耳を傾ける結果となった。また、ピアノ音楽の繊細さを改めて知らされた気もする。服部、横山両氏に大きな拍手である。

(上から)写真2:第2部より。横山歩のピアノで、エレクトーンは、桑原哲章、伊藤佐智、堀麻衣子。写真下は、服部真由子。

2009年5月10日 エレクトーンシティ渋谷