管楽器のソリストを迎えて… concerto concert

エレクトーンをオーケストラとしてオペラや協奏曲の演奏会は全国各地で展開されてきているが、今回のこのコンサートにはひとつの特徴があった。

協奏曲といえば普通はピアノ協奏曲やバイオリン協奏曲が想像される。独奏楽器の技巧を極め、その作曲家の時代様式を代表する作品がピアノやバイオリンに数多くあるからだ。しかしながら今回のコンサートは敢えてピアノやバイオリンではなく、管楽器のソリストを迎えての企画となった。

ソリストを紹介しよう。

鶴谷 幸(フルート)玉川大学芸術学部を卒業後、ソロリサイタル等の演奏活動をはじめ現在も精力的にその活動の場をひろげている。今回はシャミナードというフランスの女性作曲家の代表曲であるフルート協奏曲を演奏。『この曲は普段はピアノの伴奏で演奏される機会が多いので、今回エレクトーンを使った共演ができ、とても新鮮な気持ちで演奏することができました』というように、しなやかで品のある演奏でコンサートの幕が開いた。

吉澤正一郎(クラリネット)武蔵野音楽大学を卒業。自ら作曲、編曲もし、テレビやBGMで作品が使われている。音楽力溢れる人柄。モーツァルトが晩年、最後に作曲したクラリネット協奏曲を鮮やかに披露。

苅部辰哉(バストロンボーン)玉川大学芸術学部を卒業、中学生のころからバストロンボーン一筋な男。エワイゼン作曲の協奏曲でその惚れ込んだ楽器の魅力を存分に楽しませてくれた。

佐藤広理(アルトサックス)国立音楽大学卒業。『のだめカンタービレ』のSオケメンバー、数々の国際コンクール入賞。2回目となったエレクトーンとの共演、イベールの協奏曲を自由でありながら深い洞察力に満ちた演奏をする。  最後に、黛 拓朗(チューバ)国立音楽大学卒業、クラシックだけでなくいろいろなジャンルでの活動を展開している。エレクトーンとの合わせ(リハーサル)のときから、『面白い!楽しい!凄い!』と。グレグソン作曲の協奏曲をその言葉どおりに演奏しこのコンサートをしめくくった。

それぞれのソリストは音楽大学を優秀な成績で卒業し音楽活動をしている方々ばかり、またその将来がとても期待されている人材。取り上げられたプログラムもそれぞれの楽器にとって魅力溢れる選曲となった。

どの協奏曲もそれぞれの作曲家の代表曲である。だが、オーケストラと共演されての演奏会は少ない。鈴木弥生の提案から企画されたこのコンサート、たくさんの温かいお客様にも恵まれて終演した。鈴木弥生と杉田香織のペアによるエレクトーンオーケストラは作品の様式を踏まえ充実した演奏であった。エレクトーンシティがエレクトーンを使い、さまざまな芸術家の出会い、可能性の展開や実験を発信し続けていることを大変嬉しく思った演奏会であった。

指揮/桑原 巌

エレクトーン演奏/杉田香織、鈴木弥生

2016年4月25日 エレクトーンシティ渋谷