至福のアンサンブル 須江太郎ピアノコンサート ~コンチェルトへの憧れ~

去る9月21日に行われた「須江太郎ピアノコンサート~コンチェルトへの憧れ~」(日本橋公会堂)を聴いた。

“お江戸日本橋”の実力派小ホールが、開演を待ちわびる熱気に溢れていた。

サロンや自宅でのコンサートでファンに愛される須江の約10年ぶりのコンチェルトは、ショパンの第1番とシューマン。シューマンを特に大切な作曲家とする須江には、真の憧れへのアプローチ。本来フルオーケストラを頼むべきだが、ここは大人の事情。今回オーケストラパートは、エレクトーン奏者の長谷川幹人さんにお願いした。

エレクトーンによるオーケストラ伴奏について、この夜の演奏を聴いた方々は、その素晴らしさを堪能できたはず。特に管楽器ソロパート、打楽器や弦のピチカートなど、目をつぶると管弦楽団がいるかのよう。この素晴らしい演奏に演奏者の実力が不可欠なのは勿論、長谷川氏は周到な準備を重ね本番に備え、一曲目から「ブラボー!」の声、拍手が鳴り止まぬ熱演。続くシューマンは曲への愛情の深さから、更に熱が入り、情感溢れる須江の音楽と、長谷川氏の冷静にスイッチを操る熱いオーケストラ伴奏が、手に汗握るアンサンブルを舞台上で丁々発止と展開し、二人の創る大きな空気感が渦を巻いているのを感じた。オーケストラであっても丁々発止は見られるに違いないが、今回エレクトーンという一つの楽器になったことで、ピアノとの小さなアンサンブルが、大オーケストラに負けず、緻密なやり取りのできるスリリングな演奏を聴かせ、奏者の呼吸や鍵盤、足鍵盤のタッチ音までもが演奏を彩り、オーラとなって会場に満ちていくのをみるのは感動的で、本当に素晴らしい至福の一夜になった。

須江太郎と長谷川幹人のコンビによる、次回の“コンチェルトへの憧れ”に期待したい。

Studio-b/鈴木章司

エレクトーン演奏/長谷川幹人

2017年9月21日 日本橋公会堂