芥川也寸志作曲「GXコンチェルト」再演! オーケストラ・トリプティーク 第10回演奏会 幻の交響作品と新たな創造

日本の作曲家を専門に演奏するオーケストラ・トリプティークが10周年記念の演奏会を行った。野村英利指揮、オーケストラ・トリプティーク、竹蓋彩花エレクトーンによって、6作が演奏された。

88歳現役の水野修孝による「交響曲第5番」は委嘱初演。クラシック、ジャズ、民族音楽をハイブリッドしたゴージャスなサウンドは高齢化社会における創作の意味さえ問われる気分だった。三木稔の「交響曲『除夜』」は、1960年に作曲されたが埋もれていた。除夜の鐘の響きをオーケストラに移し替えた独特の響きには、多彩な打楽器群や、エレクトーンによって再現された電気楽器クラヴィオリンが効果的に色を添える。

鹿野草平の「よみがえる大地への前奏曲」、黛敏郎「パッサカリア」なども上演されたが、特に鮮烈だったのは、ヤマハとも関わりの深い、芥川也寸志の「GXコンチェルト」(1974年)が再演されたことである。

当時最新の技術で作り上げたGX-1のためにヤマハが依頼した作品で、これまでほとんど演奏機会がなかった。初演は沖浩一、2009年の再演は平部やよい。偉大な先人を踏まえて竹蓋彩花が再びこの曲に命の火を灯した。最新機種のエレクトーンELSー02Xを調整しての演奏であったが、竹蓋は、現在までの楽器の発展を踏まえたレジストレーションで、即興的要素も強いスコアに対応して、進化を続ける楽器エレクトーンによる“未来”を示してくれた。

作曲者も1974年時点で固定するつもりはなく、楽器も機材も進歩を重ねることや、さまざまな奏者による変容を期待していたのだろう。その意味で、この日の演奏は、多くの人々に知られるべきであろう。

この曲の多様な演奏が増えてほしいと願う。当日は、ホールのアコースティックを考慮した入念な調整とPA音響操作を磯部英彬と今堀拓也が行った。客席には芥川也寸志夫人の眞澄さんの姿もあった。

著・音楽評論家/西 耕一

エレクトーン演奏/竹蓋彩花

2022年12月3日 なかのZEROホール