ミュージカルコメディーへの挑戦 天才ホテル公演「全国小学生漢字検定者大会」

私たち「天才ホテル」は2001年に旗揚げし、日頃ミュージカルという表現方法で活動しています。作品の多くは社会的な問題を扱い人間の深淵に迫っていくという作品です。しかし今回の『全国小学生漢字検定者大会』という作品は久々のミュージカルコメディーへの挑戦でした。

お客様数人に舞台にあがっていただき、小学生に扮した役者と共に漢字大会で優勝を目指すために漢字を書いていただくという作品です。したがって、お客様がどのタイミングで間違えるかはやってみなければわからず、エレクトーン奏者の高木文世さんにはその都度、曲の順番が違うということに対応していただかなくてはなりませんでした。しかも曲のイメージやキャラクターにより音色を変えていただいていたので本当に大変だったことと思います。

また、作品も何となく形になってきていた3月11日に東日本大震災が起こり、自分たちは公演をやるべきかどうか毎日自問自答を繰り返しながらの稽古となりました。自粛の声が大きく、軒並みイベントごとが中止などになっている最中に公演を敢行することを決めましたが、それは私たちに今できることはこれしかなかったのです。そして今回の作品が小学生の話であり、壁にぶつかっても乗り越えていく可能性をもった、言わば未来を向いた作品であったからこそ私は公演を敢行しようと決意できました。公演を行った後お客様の顔が笑顔だったのを見て(もちろん先ほど書いたように大変なエレクトーンの演奏が完璧であったからこその成功ですが)、この公演は間違いではなかったのだなと思えました。

エレクトーンという数多くの音色を出すことができる楽器を使ったことにより、自分たちもまた状況に合わせた音色を出せるような役者に、人間になりたいと強く思った公演となりました。ならびにエレクトーンという楽器の可能性の高さを素晴らしく感じずにはいられませんでした。

天才ホテルは今回のこの公演を糧にして演劇活動をするということで何ができるか? またはなぜ演劇活動はなくならずに今日まで残っているのか? 演劇活動の可能性、という問題を常日頃から考えていこうと思っております。そして、それを素敵な音色で奏でられるよう日々精進したく思っておりますので、これを読まれた方が天才ホテルという団体をお気に留めていただければ幸いです。

最後にこの公演を上演するにあたりまして、ご協力いただいたエレクトーンシティ渋谷のスタッフの方々、技術、制作スタッフの方々、まだ余震も残る最中にご来場いただきましたお客様には心よりお礼を申し上げます。

天才ホテル 主宰/小林篤

(上から)写真2:エレクトーン演奏/高木文世

2011年4月15日 エレクトーンシティ渋谷