清水のりこの新境地を開く ミュージカルコンサート 「I DO! I DO! ~結婚物語より~」 ~マイケルとアグネスは生き続ける…~

平成も間もなく終わろうとしている3月20日と23日に、このミュージカルコンサートはヤマハホールで行われた。結婚式を挙げた2人が共に過ごす夫婦の50年を描いた『I DO! I DO!』というミュージカル、これを、歌を中心に綴ったコンサートだ。出演は、村井國夫と春風ひとみ。

紐解けば、このミュージカル、1966年にブロードウェイで初演され、560回ものロングランを記録した作品である。出演者は2人だけ。日本でも1969年に初演され、2002年からは村井・春風が数多く公演し、質の高い安定した演技で観客を魅了し続けた

今回は、100分ほどに凝縮されたコンサートとはいえ、2人は、ほとんどすべてのナンバーを歌い、ミュージカルさながらマイケルとアグネスの心揺さぶる台詞で物語の世界へ観客を引き込んだ。そして、物語に触れつつ実生活も透けて見えるような村井と春風のユーモアを交えたテンポよいトークが、さらに物語を際立たせた。

タイトルにもなっている誓いの言葉「I DO! I DO!」(「誓います」)が印象的な冒頭の結婚式のシーンから、物語は、子育ての楽しい時期を経て、やがて倦怠期に突入。夫の浮気、妻の不満、離婚の危機…とちょっと不穏な時間が流れるが、その後2人は和解し、子どもの巣立ち、さらに晩年へと続いていく。とりわけ重要なのが、後半の中年から晩年にかけてのシーン。村井・春風の円熟味を帯びた台詞と深い演技に多くの観客が感動を隠さなかった。

そしてエレクトーン清水のりこは、このミュージカルコンサートに新境地を開いたように私には見えた。村井・春風を引き立てつつも、シーンごとに工夫したとてつもない臨場感が胸を打ち大絶賛を得た。

監修・訳詞を引き受けてくれた、村井・春風が絶大な信頼を寄せる演出家の勝田安彦氏は、このコンサートのためだけに台本を書いてくれた。ミュージカル『I DO! I DO!』を知り尽くした勝田氏が今回の企画に加わり監修を担ってくれたことが、このミュージカルコンサート成功の大きな原動力となったことは間違いない。

著・オーケストラプレゼンター 音楽イベントプロデューサー/栗原知里

エレクトーン演奏/清水のりこ

2019年3月20日、23日 ヤマハホール