成功のうちに幕 東京シティオペラ協会公演『こうもり』

『こうもり』を2日間3公演の上演。新進ベテラン混ぜ合わせて、合唱を含めた出演者全員が、このオペレッタを楽しんでいるのが伝わって、実に気持ちのいい舞台となった。見出しに「成功」と書いたのには理由がある。後日一聴衆から以下のような手紙が届けられたのである。

「(前略)さて今回は、ぜひともお礼をさせていただきたく筆を取らせていただきました。これまで私は、オペラから遠く離れたところで日々をすごしていました。オペラについての知識も皆無です。今回誘われて拝見するまで、オペラとはただただ敷居の高いものでした。しかしながら皆様の素晴らしい演技や演奏により、最初から最後までリラックスして楽しむことができました。その後も通勤時間などにオペラの本を読んだり、『こうもり』のCDを聴いたりと、オペラがほんの少し身近な存在になりました。(中略)そして、当たり前のことかも知れませんが、端のほうでも決して気を抜くことなく、自らの役に徹する演者が揃っていることは、本当に素晴らしい。私は日々を頑張っていく元気をいただきました。これからも、また元気をいただきにまいります。本当に本当にありがとうございました」

というものでした。この日は、指揮を担当した気鋭の相澤直人が、まだオペラを指揮することが数回目とは思えない手堅さを見せ、演奏を担当した赤塚博美・長井里衣や、歌手陣から、しっかりとした音を引き出していた。赤塚・長井の二人も、この作品に慣れているとはいえ、エレクトーンの世界を超越したような優れた音色を作り、見事な演奏を聴かせていた。演出はこの協会の演出家粕谷博通が、例によって決して奇をてらわずに、手堅く出演者の能力を引き出して、一分のすきもない緊張した舞台を作り上げていた。

この協会は今年、この後6月に『ラ・ボエーム』(エレクトーンシティ渋谷)、9月には『リゴレット』(練馬文化センター大ホール)、12月には再びくにたち市民芸術小ホールで『魔笛』を上演する。1年にグランドオペラを4本も上演する力を持ち合わせている、素晴らしい組織だと、胸を張って申し上げたい。

東京シティオペラ協会・理事長/川村敬一

エレクトーン演奏/赤塚博美

2010年2月6日、7日 くにたち市民芸術小ホール