ベルカントオペラ隆盛期を飾る1835年初演2作品を上演 エスト!エスト!主催ダブル・オペラハイライトVol.1 ドニゼッティ『ルチア』&ベッリーニ『清教徒』

今回の企画は、ベルカントオペラ隆盛期1835年に初演を飾った2作品を取り上げました。2作品ともに、ベルカントオペラを代表する作品ですが、大変高度な技術が要求されるオペラゆえ、上演困難なのが現実です。そこで今回の企画は、知名度はともかく、日本にはこれだけ歌える歌手がいることを紹介したいという主旨がありました。そして、何よりもベルカントオペラの復興。そして、もうひとつ。オペラを簡潔にわかりやすくすることでオペラを手軽に楽しんでもらいたいというコンセプトで企画いたしました。

『ルチア』という作品は初演以来ベルカントオペラの代表作としての地位を保ち続けている作品ですが、タイトルロールを歌った山崎浩美は超絶技巧を難なく歌いこなし、この時代の特徴と言える「狂乱の場」は美しく可憐な演技と歌唱で多くの聴衆を涙させました。エドガルドの浅原孝夫は安定感のあるリリックな高音を武器に、ドラマティックな演技力でベルカントオペラの魅力を十二分に魅せてくれました。エンリーコの工藤智巳は器を感じさせる魅力的な音色で音楽を引き締めました。

一方、『清教徒』は驚異的な高音が要求されるため難曲中の難曲とされる作品です。そのテノールを余裕しゃくしゃく綽綽と歌いきったのが三村卓也です。彼のように超高音を使いこなせる歌手は日本の財産と言えるでしょう。ソプラノの西本真子も超高音と超絶技巧を武器にベッリーニの流麗極まりない旋律をスタイリッシュに歌いきりました。この三村、西本の二人の演奏だけで充分ベルカントオペラを満喫できるところですが、さらに通好みのバリトンとバスの音楽がドラマを引きたてます。

松本光紘は輝かしく深い音色で超絶技巧をこなし、バリトンとしては超高音となるAs音を鳥肌ものの音色で歌い切り、バリトンの魅力を存分に聴かせてくれました。ドラマでは重要な役柄であるバス役は森下公博が貴重な男性のデュエットとアリアで存在感をアピールしました。

また、この2作品の音楽様式を的確に捉え、歌手の超絶技巧に秘められた深く甘美な表現を引きたてることに成功したのはエレクトーンの黒澤有香です。これからオペラ公演におけるエレクトーンの市民権は間違いなく確立されることを確信しました。

総評は照明のお陰で何とかまとめあげることができたようですが、演出的効果に課題を残した形となったと感じています。今後同じ形での公演を続けることで本公演コンセプトを提示し続けたいと考えています。またゆくゆくはスポンサーなどを募り、上演困難なベルカントオペラの本公演を企画したいと考えております。ご賛同くださる方がいらっしゃいましたらぜひお声掛けくださいますよう、よろしくお願いいたします。1835年、この2作品の初演に足を運んだ方々がいたのではと羨ましく思い、時を超えてぜひ私も一度にこの2作品に触れたいと興奮しながら企画いたしました。次回企画、ご期待ください!

エスト!エスト!代表/小林秀史

(上から)写真1、2:『ルチア』より|写真3、4:『清教徒』より|写真5:エレクトーン演奏/黒澤有香

2011年12月9日 エレクトーンシティ渋谷