編曲『ピアノコンチェルト・オペレッタ』という着想 オペレッタ【ウィーン気質】

「サルビア21」は、埼玉は和光市を中心にオペレッタの公演を行っているグループ。〝聴衆が心から楽しみ、メロディーを口ずさみながら帰路につかれるような〟そんな公演を目指し、主宰の宮地多美子の下、日本語訳や台本、演出に至るまですべてを団員全員で取り組んでいる。

前回の『白馬亭にて』に続き、今回のヨハン・シュトラウスII 世作曲による『ウィーン気質』編曲の話を正式にいただいたとき、宮地氏から「エレクトーン」と「ピアノ」1台ずつという編成を聞き、真っ先に思いをめぐらせたこと。それは、ここの団体でしか聴けない、サルビア21ならではのオリジナリティ溢れる音楽を目指すためにも『ピアノコンチェルト風のオペレッタ』というものを創ることは可能だろうか?ということであった。

最初の段階ではなかなか形が見えず、先行き不安な日々であったが、ある日、急速にオーケストレーションの形が見えはじめ、次第に『ピアノコンチェルト・オペレッタ』になりつつあるときは、この曲との巡り合わせに大いに興奮して編曲を進めていった。

主要なところではピアノがソロになったり、オーケストラが盛り上げたり、歌はもちろんオーケストラやピアノに至るまで、それぞれが主役になるような編曲。それぞれの持ち味を生かす音楽にしようと、本当に楽しい時間を半年ほど過ごし、終盤に差し掛かる頃には、もはや〝コンチェルト風〟などではない『ピアノコンチェルト・オペレッタ』に仕上がってくれたと感じている。

編曲者として、正指揮者として、今回もたいへん思い出深い演奏会であったが、改めてエレクトーンの機能性を再確認することができた。 リハーサルの最中、エレクトーン奏者の小倉里恵氏とともに、私の耳を頼りに「どれだけオーケストラに近づけられるか?」を考察してきた。

例えば、クラリネットの音域は下のほうは温かく響き、音域が上がればキラキラした音で奏される。フルートはある音域は息の音が聞こえたり、そうかと思えば小鳥がさえずるような可愛らしい音がしたり。私と小倉氏が知る、そういったオーケストラの知識を、ひたすらに再現ができるよう試みた。

「この音はもっと柔らかな響きを……」「この音域では少し息の音を乗せて……」など、たいへん細かく注文を付けたため、結果、小倉氏の楽譜に書き込まれたレジストチェンジの表記が嵐のようだったけれど(笑)。

最終的にソリストや周囲に「楽屋でなにげなく聴いていたら、本物のフルートと勘違いした」など、素晴らしい好評を賜り、エレクトーンは本当に可能性豊かな楽器なのだと改めて再確認できたこと。私自身この上なくうれしいことであり、それを創り上げてくれた小倉氏にこの場を借りて多大なる感謝を申す次第である。

作曲家・編曲・指揮/小林 樹

(上から)写真3:エレクトーン演奏/小倉里恵 ピアノ演奏/飯塚直美・高橋里央

2012年9月23日 和光市民文化センター