世界的な歌手陣大いに吠える 東京シティオペラ協会 特別公演

2013年12月3日・4日、銀座ヤマハホールで、「東京シティオペラ協会」特別公演が行われた。演目はマスカーニ作曲の『Cavalleria Rusticana(田舎の騎士道)』と、レオンカヴァッロ作曲の『I Pagliacci(道化師)』という、いわば定番の二作品。この団体の、まさに「おはこ」と言って差しつかえのない演目であった。この団体は、小さなホールでオペラを上演する手法において、最も手馴れた団体であろう。

名声優として聞こえる矢島正明氏の的確なナレーションで物語は進められ、字幕に頼ることなく、聴衆は音楽に集中して聴くことができた。二日目を聴いたが、この日の出演者たちは特筆されるべきであろう。すなわち、かつてウィーン国立歌劇場の舞台も踏み、カラヤンやムーティの指揮でも歌った経験を持ち、まさに日本の歴史上、最高の経歴を誇るソプラノ歌手丸山恵美子と、ドイツ国立ブラウンシュバイク歌劇場の専属歌手であった、バリトン歌手島村武男両氏の声は、聴衆を圧倒し、ホールの空間をすべて我が物にしてしまっていた。この二人の声に接すると、「オペラとは声がすべてなのだ」という感を一層深めてしまうのは、私一人ではないであろう。他にカニオを歌った川村敬一の「衣裳をつけろ!」の熱唱は、多くの聴衆が客席で涙するほどの好演だったことは、付け加える必要があるだろう。また、シルヴィオの太田代将孝も、「日本にこんな美声のバリトンがいたの!」という声が、客席のそこかしこで聞かれたほど、素晴らしい歌唱だったことも、付け加えなければならない

今回はエレクトーン(赤塚博美)に組み合わせて、クラビノーバ(大杉祥子)が用いられた。これは、電子音との組み合わせとして、あえてアコースティックな音(ピアノ)を避けたものであった。エレクトーンの弱点である音の立ち上がりの悪さ(ことにストリング系において)をクラビノーバが補い、聴衆としても、非常に心地よい演奏を楽しめた。これは、おそらく歌手たちも同様に感じていることと思われる。この組み合わせは成功だったといえる。エレクトーンの用い方として、これは優れた方法といえるに違いない。二人の奏者が秀逸だったことをはじめ、指揮の草川正憲氏も、イタリアオペラ、とりわけヴェリズモの熱い音楽を、そのタクトから見事に作り出し、優れた歌手陣、少人数なのに(15人)ソリストたちに負けないほどの演奏を聴かせた合唱団たちとの、まさに一体となった、非常に水準の高いコンサートを作り上げていた。

粕谷博通

(上から)写真3:エレクトーン演奏/赤塚博美

2013年12月3日、4日 ヤマハホール