ほかでは見られない個性的なオペラを実現! 春秋座オペラ『椿姫』公演

春秋座は2001年、3代目市川猿之助(現市川猿翁)氏が京都造形芸術大学の副学長の時、学園内に建てられた劇場です。歌舞伎とオペラが理想的に上演できる劇場として、設計されています。氏は初代芸術監督も務められ、京都文芸復興に多大な貢献をされました。

キャパは850。回り舞台、迫り、花道、オーケストラ・ピットなどを完備した本格的な劇場は、その後、歌舞伎、オペラはもとよりバレエ、ミュージカル、コンサート、能狂言、落語、ストレイト・プレイほかあらゆるジャンルのパフォーマンスを上演してきました。

劇場を企画運営する舞台芸術研究センターには、社会普及系担当と研究系担当のプロデューサーがいて、質の高いエンターテインメントと大学らしいアカデミックな公演をバランスよく実現しています。オペラについては、オープン当初から「スポレート実験オペラ」を自主公演しておりましたが、2010年からは毎年「春秋座オペラ」として定期的に上演しております。歌舞伎劇場の機構を有効に使い、ほかでは見られない個性的なオペラを実現しようと以下のことをコンセプトとしてきました。

・オペラを声楽の極地を表現する芸術と捉え、素晴らしい歌手を集める。

・豪華な舞台装置や衣装を、出来るだけ簡素化し効果的なものを考える。

・コーラス、オーケストラは原作の良さを損なわない程度に小編成化する。

・指揮、演出、美術、照明などのスタッフを重視する。

・料金を1万円未満に抑える。

・お客様を感動させる質の高い作品に仕上げる。

上記の考え方を実現しつつ、2010年『夕鶴』、2011年『源氏物語―月の影』、2012年『ラ・ボエーム』、2013年『蝶々夫人』と上演して来ましたが、2014年12月20日、21日にはヴェルディ作曲『椿姫』を上演いたしました。指揮:松下京介、演出:三浦安浩、美術:石井みつる、照明:稲葉直人、そして公演監督:松山郁雄といったスタッフは知恵を絞り、春秋座が狙っている作品作りに協力してくれました。松山さんは、川越塔子、江口二美、清原邦仁、松本薫平、片桐直樹、黒田博といった素晴らしいソリスト、そして関西の実力ある歌手による脇役とアンサンブルを集めてくれました。演出の三浦さんは歌舞伎劇場特有の回り舞台を多様に使い、スムーズで劇的な演出効果を実現。美術の石井さんは窓枠のスクリーンに映像を映す斬新なプランを考え、照明の稲葉さんはエリアをうまく設定し簡素な装置をカバーしてくれました。指揮の松下さんは、生の弦6人とエレクトーン2人という編成の室内アンサンブルで大編成のオーケストラを思わせる効果をあげてくれました。

エレクトーンは今回のような名手が演奏してくれれば、生楽器との違和感を感じることはないと思います。

春秋座 顧問プロデューサー/橘市郎

(上から)写真3:リハ風景・エレクトーン演奏/ 塚瀬万起子、佐々木果奈

2014年12月20日、21日 京都芸術劇場 春秋座