新たなるエレクトーンの第一歩 中国陝西省 オペラ『La Traviata』公演

去る6月27、28日の両日、満員のお客様を迎えて、中国陝西(シャンシー)省にある陝西師範大学に於いて、オペラ『La Traviata』(中国語では『茶花女』)の公演が行われ、大成功と言えるものでした。今回は、陝西師範大学教授、洗足学園音楽大学・大学院客員教授でテノール歌手の田大成先生の招きで、指揮者の河地良智先生、演出の小澤慎吾先生、それにエレクトーンに私、赤塚博美のメンバーで西安(シーアン)を訪れました。

中国では、オペラはまだ一般に浸透しておらず、大学生にとっても馴染みが深いものではないようでした。そこで田先生は、学生たちに本物のオペラを経験させること、そして、それを般にも広めることを目的としてこのプロジェクトを企画されたようです。田先生、河地先生のアイディアで、陝西師範大学の教員、学生とエレクトーンとの日中合同の新しい形のオーケストラでの伴奏が実現しました。

編成は、フルート(2)・オーボエ(1)・クラリネット(1)・弦楽器(10)・ティンパニ、エレクトーン1台。エレクトーンの役目としては、ファゴット・ホルン・トランペットなど金管楽器、ハープ、コントラバスは必須。しかしバランスや、生楽器との音の混じり方などを考え、エレクトーン1台でも演奏可能な、すべての音を網羅するような形での準備をしました。

現地では、オーケストラのリハーサルと演出稽古の二手に分かれ、毎日七時間強にも及ぶ念入りな練習が行われました。師範大学にはEL-900しかないということでしたが、同じ西安にある西安音楽学院よりSTAGEAをお借りすることができ、音色を読み込むスピードや数にも問題がなく演奏ができたことは、リハーサル期間の短さにも対応ができた一つの要因になったと思います。快くお貸しいただいた西安音楽学院の譚芸民先生にも、心より感謝申し上げます。

歌手は、一日目が学生、二日目はプロ歌手(先生も含む)が主に演奏をしました。まだオペラは初めての学生ばかりではありましたが、素晴らしい声を持っている者が多く、リハーサルごとにどんどん良くなって行く様子が私たちの気持ちを奮い立たせてくれることになりました。一方オーケストラは、ピッチのずれなどで音のまとまりなどに悩むことが多くありましたが、準備していた音色のバランスに加え、音色作りを再度検討し、連日この編成でのサウンドを追求した結果、本番では、こんな素晴らしいオーケストラは聴いたことがない…などと大好評を得、私たち自身も自分たちのサウンドに魅了されるという素晴らしい経験ができました。

オペラは、まだ一般的ではないと言いながらも、字幕が準備されているなど、良いものを上演するための努力を最後まで追求するエネルギーには驚きと同時に感動さえ覚えました。

お客様からのエレクトーンへの評価も高く、終演後もたくさんの方々から、感動の声や絶賛の声をいただき、私自身も感激でした。

この世界へのエレクトーンの進出は、中国ではこれからという状態ではありますが、日本と一緒に発展していくのも時間の問題でしょう。田先生をはじめ、お世話になった方々に、深く感謝申し上げたいと思います。

洗足学園音楽大学教授/赤塚博美

(上から)写真2:エレクトーン演奏/赤塚博美

2015年6月27、28日 中国・陝西師範大学