オペラをより分かりやすく上演し、妙高市でさらなる普及を目指す アートステージ音楽祭 2016 珠玉のオペラ・合唱の祭典

私と妙高市文化ホールとの関わりは、遡ること2013年、日本の明治~大正時代の偉大な思想家「岡倉天心」が残した英文戯曲『The White Fox(白狐)』の日本語オペラ化のプロジェクトからです。

岡倉天心は当時の美術指導者であり「東京美術学校(現・東京芸術大学)」を創設し初代校長として多くの画家を育て、日本近代美術の父と称され、自ら、作品への目利きを通じ、芸術全般の題材となりうる景勝地を巡り、「赤倉温泉」を「世界一の景勝の地」と称賛し、「赤倉山荘」を建造、「東洋のバルビゾン」にしようと試みました。残念ながら東京にあった「日本美術院」の移転も構想に入れましたが、遠方であることで識者の反対により実現となりませんでした。北陸新幹線が開通し、3時間余りで来訪できる今、移転に反対されることはなかったでしょう。

天心が永眠した「赤倉山荘」は現在妙高市です。文化ホール開館30周年記念事業としてオペラ『白狐』の日本語訳詞上演が実現いたしました。平井秀明氏が戯曲を翻訳、台本、作曲、指揮の全てを務め、満場の観客の中、上演は大成功を収めました。

妙高市が持つ理念「生命地域の創造」(1)エコ(2)グリーン(3)ヘルス(4)アート&カルチャー各事業を施策の柱にし、地方型文化拠点のお手本となる、市民ファーストを謳った企画力、意欲的な催物を展開している妙高市文化ホールでは、オペラ『白狐』の上演を機に、芸術的な財産として総合芸術であるオペラの普及にも力を注ぐようになります。

2014年~15年、オペラ『白狐』をリバイバル上演し、歌う文化を確立し、さらに2018年には開館35周年の記念事業として「鮫ヶ尾城」で自刃した悲劇の武将「上杉景虎」を題材とした市民参加の創作オペラ『景虎(仮題)』の制作・上演を予定しています。

記念事業までの課題としてオペラ、合唱への関心とレベルを今まで以上に向上させ、さらなる事業参加者を募る催しを相談され、今回のプログラミングを司りました。

限られた予算の中、西洋発信の文化をいかにストレートに発信できるかを模索。残念ながら大編成の管弦楽団での演奏は予算的に不可能でした。真っ先に思いついたのは「エレクトーン」です。全国各地でエレクトーン伴奏のオペラ上演は増え、時代のニーズに合致した利便性の高い楽器です。楽器と演奏者の技術の向上により、多彩な音色、臨場感で新たな世界感を提供でき、妙高に所縁のある歌手を起用し、バンダ楽器演奏も地元市民の援助をいただき、冒頭にワーグナー『タンホイザー』の大行進曲、そして、ヴェルディ『椿姫』のハイライト上演。そして『アイーダ』の凱旋行進曲で幕となりました。全て原語での上演となりましたので、ホール初の日本語字幕を投影し、観客への配慮を施し、時折、解説を交え、オペラをより分かりやすく上演でき、お客様の反応は上々、成功となりました。

本年も12月3日にエレクトーン伴奏による『カルメン』のハイライト上演を企画しております。是非、音楽の発信力を体感していただければ幸甚でございます。

東京オペラ・プロデュース/飯坂 純

エレクトーン演奏/西岡奈津子、黒澤有香

2016年12月4日 新潟県・妙高市文化ホール