公演を終えて 《雅叙園オペラ》「セビリャの理髪師」

オペラを何とか身近に感じ、感動してもらいたい、と始めたオペラハイライトへの取り組み。未だ観たことのないオペラってどんなものだろうと足を運んでくださったお客さまも今やリピーター、雅叙園オペラは今年で第6回を迎えた。

小編成から大きなオーケストラまであらゆるシーンに音楽を、の思いでさまざまなコンサート、イベントを行ってきている中で、やはりオペラハイライトは欠かせない。間近に聴く生の声の力強さ、オペラ歌手の息遣い、その歌をさらに感動へと導く伴奏、音楽の一体感、毎回終演後のお客さまの反応が待ち遠しい。

街の何でも屋フィガロが大活躍するこの物語は、ロッシーニの代表作として知られているコメディ・オペラ。重厚でシリアスなオペラとは異なり、ふつふつと沸き起こる笑いやストレートに笑える仕掛けも多く、やはり楽しい。その楽しさを十分にお客様に伝える歌手の見事な技量と豊かな声は、天井の高いホテル雅叙園東京のチャペルに響き渡り、すべての観客の心を魅了した。そして、その声と一体となり、場面を盛り上げていく伴奏、音楽を一人で引き受けるエレクトーン清水のりこは見事であった。ある時はオーケストラのアレンジャーとなり地道に丁寧に時間をかけて取り組んだ音作りが冴えわたった。それは「序曲」からお客様を惹きつけて止まなかった。ロッシーニ特有と言われる、生き生きとした高揚感やわくわく感を高める長いクレッシェンド(「ロッシーニ・クレッシェンド」)を巧みに表現し、そして全編にわたり工夫が満ち満ちていた。

終演後、このオペラハイライトが絶賛されたのはまさに清水のりこの努力と感性の賜物と言えよう。

そして、お客さまがこの後に続く物語『フィガロの結婚』をぜひ観てみたい、聴いてみたいと思ってくだされば、また、今度はシリアスものをぜひ鑑賞してみたい、と思ってくだされば、私の思いは観客に届いたことになるのではないか、とそんなふうに考えたりもしている。

著・オーケストラプレゼンター(専務取締役)音楽イベントプロデューサー/栗原知里

エレクトーン演奏/清水のりこ

2018年5月30日 ホテル雅叙園東京チャペル